2017年3月22日8:00
出光興産は、2017年3月17日、記者向けに「出光カード事業説明会」を開催した。出光興産では、クレディセゾンとの合弁会社である出光クレジットを通じてカード事業を展開している。出光SSでは、「出光まいどプラス」などのクレジットカード、「出光キャッシュプリカ」などのプリペイドカードによる支払いが可能だ。また、楽天ポイントカードの付与や利用も可能となっている。
出光クレジットはクレディセゾンとの合弁会社
年会費永年無料、ガソリン2円引きの「まいどプラス」
民間最終消費支出に占めるクレジットカードの割合は、2008年に11.4%だったのが、2015年は16.2%までアップしている。また、プリペイドカードは0.3%から1.5%となり、両決済の存在感が高まっている。ただし、クレジットカード比率は米国の25%、韓国の62%(デビットカード含む)に比べると少ない。日本におけるクレジットカードの潜在市場は90兆円と言われており、まだまだ伸びしろは大きいとみている。
出光グループでは、グループ内にクレジットカード会社「出光クレジット」を有している。出光クレジットは、1986年に出光興産の100%出資子会社として設立したが、2003年にクレディセゾンの出資を受け、「出光興産50%:クレディセゾン50%」の合弁会社となる。現在、「出光カード」を40万件、「出光まいどプラス」を270万件発行しており、会員数は計311万件となっている。「まいどプラス」はクレディセゾンと一緒にサービスを提供することで“年会費が永久無料”、出光興産により“ガソリンが2円引き”という2つの強みを実現させた業界唯一のカードとなる。
出光クレジットは年間取扱高1兆550億円。会員一人当たりのショッピングの金額は業界第7位であり、「SS利用がベースのカードであるため、利用頻度が高いことに起因しています。月間利用が2回を超えていますので、利用頻度が高く、お客様一人一人が利用する金額も高いです」と出光クレジット カード事業部長 高田橋昌典氏は特徴を述べる。また、出光SS数が減少する中、クレジットカード純会員数が大幅に増加している。
SSにおける決済手段の推移として、出光グループでは現金が、2010年度の25%から2015年は23%となり、年々比率が下がっている。一方、同期間のクレジットカード決済は44%から49%へとアップした。出光グループでは共通のPOSを利用しているため、全国共通のカード戦略が打ちやすく、カード決済の比率が高まる要因となっている。
元売内共通のプリペイドカード「出光キャッシュプリカ」を発行
アークス、薬王堂、ゲオにもノウハウを提供
一般社団法人日本資金決済業協会のデータによると、2015年のプリペイドカードの市場規模は約21兆円。同市場は今後さらに拡大していく見込みであり、中でもIC型とサーバ型はさらに成長が予想される。出光グループでは、サーバ管理型のプリペイドカードとして2007年から出光クレジットが「出光キャッシュプリカ」を発行している。石油業界唯一の元売内共通カードとなり、会員数250万件を有する。
年間発行額は出光クレジットのプリペイドカードシステムを採用した企業も含めると2,000億円。2012年より北海道・東北のスーパーマーケットであるアークスグループ、東北のドラッグストアの薬王堂、レンタルビデオのゲオホールディングスなどにも採用されている。高田橋氏は、「2,000億円の規模は、リアル店舗を主体としたサーバ型のプリカシステムでは業界トップクラス」であると自信を見せる。また、リースやファクタリングなどのファイナンス事業や、カンボジアでは「出光セゾンマイクロファイナンス有限会社」を設立するなど、前払金(未使用残高)90億円を活用した金融ビジネスを展開している。
楽天の「楽天ポイントカード」を受け入れ
楽天市場を除くと出光のみで55%のポイントを付与
出光興産では、ポイントカードを活用した販促サービスも展開。出光SSでは2014年10月から、楽天の「楽天ポイントカード」を受け入れている。「楽天ポイントカード」の楽天市場を除くリアル店舗での付与の状況として、出光のみで55%のポイントを付与している。出光興産 販売部 販売一課 周藤伸次郎氏は、「出光SSの誘引が如何にできているかが言えると思います」と成果を語る。
また、2017年9月は2015年9月対比で、出光SSでの楽天ポイントの付与が182.3%だったのに対し、貯まったポイントの利用が401.5%となっており、ポイント利用が付与の2倍となっている。
複数ブランド、複数カードのデータ処理を統一化
「au WALLET」や「ソフトバンクカード」を先駆けて受け入れ
同説明会では、出光POSの特徴についても紹介された。月刊ガソリンスタンドのデータによると、出光興産の元売POS導入台数は98.6%と、石油元売り各社においても高い導入率を誇る。さらに、複数ブランド、複数カードのデータ処理を統一化しており、ブランドプリペイドカード等の新決済カードへの対応が迅速に可能だ。
出光SSでは、KDDIの「au WALLET」、ソフトバンクの「ソフトバンクカード」の受け入れを実施。出光興産 販売部 販売一課 販売情報チーム 担当課長 大竹聡史氏は、「ブランドプリペイドカードは最初に利用金額を指定して、金額を引き落とし、給油が確定した段階で最終的な処理を行う仕組みを導入しています」と説明する。
また、出光のPOSシステムはASPタイプであり、一括集中処理をリアルタイムで実施している。SSに設置しているPOS端末に売り上げ情報を有していないため、POS端末盗難による顧客情報漏えいは発生しないそうだ。さらに、出光POS端末はモバイルのバックアップ回線を標準装備。仮に固定回線で障害があっても継続して売り上げ処理を継続できる。
今後の展開として、出光クレジットでは、楽天Edyを皮切りに非接触電子マネーへの対応を行う。また、Apple Pay等のスマートフォン決済についても準備を進める。そのほか、2020年の東京五輪開催までにクレジットカードのICカード化に取り組む予定だ。さらに、POSのEMV対応やPCI DSS準拠なども2020年を目標に行っているという。