2018年4月25日8:08
公立大学法人名古屋市立大学は、2013年4月から、同大学の学生がデザインしたオリジナルデザインの「マナカ(manaca)付学生証」を導入した。「マナカ付学生証」は、マナカ発行会社である名古屋交通開発機構および名古屋市交通局が導入をサポートしている。なお、ICカード乗車券と一体型の学生証で、定期券面のフルカラー印刷は全国初となった。
学生デザインの券面を採用
4つのキャンパスで同時に導入
名古屋市立大学の学生証は、学生証とICカード乗車券「マナカ」を一体化したもので、名古屋市立大学のキャンパス内のさまざまなシステムのIDカードとして利用できるとともに、交通乗車券および電子マネー機能を持つ多機能カードとなっている。以前はICカードであったが、交通乗車券の機能は搭載されていなかった。名古屋市立大学は名古屋市内に位置するため市バス・地下鉄を運営する名古屋市交通局の乗車券機能を搭載したマナカとの連携について話があり、検討を進め、合意に至ったという。
名古屋市立大学は、桜山(川澄)、滝子(山の畑)、田辺通、北千種の4つのキャンパスがあるが、すべてのキャンパスで同時に導入した。「どのキャンパスに通う際も地下鉄もしくはバスでの通学が必要であり、定期券と学生証が一体化していれば、学生もカードを2枚保持する必要はありません」と、公立大学法人名古屋市立大学 事務局 学生課 学生支援係長 三谷幸司氏は話す。
カードデザインは、名古屋市立大学において、芸術工学部の学生を対象にデザインコンペを実施。当時1年生の西山昌汰さんのデザインが採用された。同校は、名古屋交通開発機構にカード1万枚の作成を依頼。新入生に対し、写真付きの学生証を発行している。三谷氏は、「年間1,500枚ほどのカードを発行していますが、数年間の利用を見据えて、1万枚の作成を依頼しました」と説明する。学生証の部分の顔写真や記載は、もう少し大きくできればと考えていたそうだが、マナカの利用案内、学生証の注意事項は必要となっている。なお、定期の印字は、オリジナルデザインの上に載る形となる。
カードの一体化により紛失も減少
学内の自動販売機で決済も可能に
すでに約5年間の運用を行っているが、導入当初は、“カードが2枚になっていたものが1枚になりますので助かります”といった声を中心に、ネガティブな意見はなかったという。さらに、学生証は、通学の定期券としても使われるため、持ち忘れることがなくなる利点もある。
マナカに関しては、名古屋交通開発機構および名古屋市交通局が管理しているが、仮に学生がカードを紛失した場合、名古屋交通開発機構に問い合わせてから、大学の窓口で再発行を依頼する流れとなっている。新入生のカードは大学側で負担しているが、紛失時の再発行に関しては実費分を負担してもらっている。
「導入の成果として、カードが一体化したことで、学生がよりカードを大切に扱い、紛失が減っていると思います」(三谷氏)
現在、マナカなどの交通系電子マネー機能は学内の自動販売機で利用できるようになっている。自販機では「楽天Edy」や「iD」の利用も可能だ。購買などでマナカなどの交通系電子マネーは利用できないが、その理由として、同エリアでは交通系電子マネーとしての利用よりも、交通利用が中心となっている事情もある。マナカのチャージ機の設置も検討したが、まだ学内で利用できるシーンが少ないこと、学内の近くのコンビニエンスストアなどでチャージできることも含め、導入を見送った。
図書館でのPCログインなどでも利用可能
導入から10年をめどに新デザイン検討
学生証は、「IC機能として図書館でのパソコンのログイン、学部施設での入退出管理でも使用可能です」と、学生課学生支援係 主事 田中多聞氏は話す。また、カードには「フェリカポケット」の機能も搭載されている。さらに、一部の施設では、同校後援会の支援により、学生証を提示すると提携の美術館や博物館に無料で入館できる。
今後の展開として、「そこまで要望は強くはありませんが、キャンパスの中で使えるシーンを増やしていければと感じています。購買や食堂、コピー機などの場面で使えれば便利になると思います」と三谷氏は構想を口にする。
同氏は最後に、「向こう5年くらいはこのカードをしっかり運用していきたいです。大学としては学生が手がけた学生証ですので、愛着を持ってもらえると嬉しいです。導入から10年を節目として新しいデザインを考えていければいいですね」と語り、笑顔を見せた。