2018年10月12日8:00
現在それぞれの国で通貨を発行している日本銀行を含めた90以上の国の中央銀行は、仮想通貨のBitcoinで用いられたブロックチェーンに関心を持っているといわれている。その中で、イギリスのイングランド銀行やスウェーデン国立銀行、オランダ中央銀行、カナダ銀行、エストニア銀行などの中央銀行では、ブロックチェーンを用いた中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)に関心を寄せている。「フューチャーペイメント要覧」の2章では、中央銀行が発行するデジタル通貨について紹介している。
政府の規則や法令によって確立したデジタルベースの通貨
中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)は、「通貨」(Currency)、「デジタル」(Digital)、「中央銀行」(Central Bank)の3つの要素からなる通貨である。政府の規則や法令によってお金として確立されたデジタルベースの通貨で、デジタルフィアットキャレンシーとかデジタルベースマネーなどとも呼ばれている。こうした中、南米のウルグアイで、2017年11月に、世界初の中央銀行が発行するデジタル通貨E-Pesoのパイロットテストの実施が発表された。
法定通貨としてのデジタル通貨の発行モデルには、中央銀行がブロックチェーン上でデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)を鋳造(発行)し、民間金融機関を通じて広く一般に普及させる方法がある。個人がこうしたデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)を使用するには、デジタル通貨を保管管理するインターネット上のデジタル財布ないしはデジタル財布を格納するICカードやスマートフォンなどのデバイスを用いて、決済や送金を行うことになる。
Bitcoinなどの暗号化された仮想通貨は、中央銀行や信用機関などによって発行されていないデジタル通貨だ。場合によっては金銭の代わりとして使用できるが、検証プロセスにリーフトグラフ証明を使用する民間デジタル通貨のサブセットである。これに対して、中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)は、中央銀行の負債であり、支払いを行うために使用でき、電子的に保管できる金銭的価値である。中央銀行が発行する通貨は、紙幣を含め中央銀行のB/S(バランスシート)におけるデビットである。
中央銀行マネーには、紙幣(銀行券、Bank Note)や硬貨といった物理的マネーと中央銀行当座預金の電子的マネーがあり、その大半は電子的マネーである中央銀行の当座預金が占めている。
中央銀行マネーにおける電子的マネーに位置付けられる?
中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)は、中央銀行マネーにおける電子的マネーに位置付けられる。中央銀行が発行するデジタル通貨とは、物理的マネーである紙幣(銀行券、Bank Note)と電子的マネーの中央銀行当座預金のどちらか、あるいは両方の機能をブロックチェーンのテクノロジーを用いてデジタル化することである。
キャッシュレス化が進み通貨発行益が減少する中、中央銀行がデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)を発行すれば、キャッシュレス化や仮想通貨の台頭による中央銀行の利子所得収支である通貨発行益の減少を回避できる。また、中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)によって、銀行の貸出行動をより強くコントロールすることができるほか、中央銀行のマイナス金利政策の実効性が高まるといわれている。
中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)には、Bitcoinなどの転々流通する仮想通貨のように、ブロックチェーンを用い、支払人から受取人へ直接価値が移転されるデジタルトークンモデルがある。
中央銀行が発行するデジタル通貨の種類
中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)には、大きく分けて2種類がある。1つは間接アクセスといわれる方法で、個人や法人が商業銀行の口座と中央銀行のデジタル通貨口座(Digital Cash Account)を持ち、商業銀行の預金口座を介して中央銀行のデジタル通貨口座からデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)を引き出して決済や送金に充て、得たデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)を商業銀行の預金口座を介して中央銀行のデジタル通貨口座(Digital Cash Account)に預け入れる方法である。もう1つはダイレクトアクセスといわれる方法で、個人や法人が商業銀行を介することなく直接中央銀行にデジタル通貨口座(Digital Cash Account)を開設し、デジタル通貨口座の資金をもって、デジタル通貨口座間などの決済や送金を行う。
こうした中央銀行が発行するデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)は、国民に無料もしくは低コストの基本的な銀行口座サービスを提供し、支払人から受取人へのダイレクトかつリアルタイムの送金や決済を可能にし、決済システムの信頼性や安全性を高めるほか、キャッシュレス化が進む中、紙幣や硬貨の代替手段の提供を可能にする。