2019年5月7日9:00
クレジットカード連動で顧客の購買・行動データを蓄積へ
パルコは2018年11月に公式スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」のリニューアルを行い、グループの情報を発信する「オウンドメディア機能」と情報コラムから買い物できる「コマース機能」を導入した。新たな店舗を期間限定でオンラインに誘致する仕組みも搭載し、実店舗への出店にもつなげたい考えだ。また、クレディセゾンと提携するクレジットカード「PARCO CARD(パルコ・カード)」などとの連動によりアプリで獲得した顧客の購買データや行動データを元に顧客がより使ってもらえる情報を提供できるよう進めているそうだ。
リニューアル前から「PARCO CARD」と連動
日常的に触れてもらうアプリにリニューアル
2015年にPARCO全店舗へと広げた「POCKET PARCO」の主要コンテンツは、約2,300テナントの店舗スタッフによるコマース機能も備えたショップブログと、買い物や投稿、チェックイン機能などによってコインが貯まるサービスの2つだった。「PARCO CARD」や、2016年に開始した自社プリペイドカード「PARCOプリカ」をアプリに事前登録すると、コインがお得に貯まるサービスなどを提供。これによって、ダウンロード数は105万件を超え、クレジットカードの総登録件数は50万件にも達した。
パルコ 都心型店舗グループ本部 CRM担当 業務部長 北山隆造氏は、「マンスリーアクティブユーザー数は約15万人、滞在時間も3分前後と短く課題もあった」と振り返る。アプリにはコマース機能もあるため売り上げへのかかわりも大きいが、まずは利用してもらう回数や時間を増やしたいという狙いでリニューアルに着手した。
オウンドメディアとしての情報発信強化
顧客とダイレクトにつながるアプリに
リニューアルで大きく変わったのは、まずオウンドメディアとしての発信の部分だ。これまではスタッフブログなどテナント発信の情報が中心だったが、グループには劇場や映画館、クラウドファンディングなど多種多様の事業があるため、PARCOとグループ全体の情報発信を強化。独自編集の「PARCOジャーナル」を立ち上げ、コラムを通じてPARCOやグループのエンタメ情報などを発信していくことにした。リニューアルに合わせてWeb広告やSNS広告を出稿し、そこでコラムを読んでもらい続きはアプリへ誘導するなどの手法で告知を図った。
もう1つの変更点であるコマースについては、今までもスタッフブログにカートが付いていてそのまま購入できたが、各ショップごとだったため使いにくい部分もあった。リニューアル後は「カエルパルコ」の名称を「パルコオンラインショッピング」に変更し、「PARCOジャーナル」のコラム経由でも購入できるなど顧客とダイレクトにつながるアプリへの転身を図った。
また、これまでPARCOに出店していないブランドやショップを期間限定でオンラインストアに誘致し、魅力やこだわり、商品をコラムで紹介。そのままアプリ経由で購入に誘導できる仕組みも整えており、実店舗に出店してもらうことも視野に入れる。北山氏は、「現在は7店舗程度だが、月に4~5店舗のペースで取り組んでいます」と話す。
アプリの滞在時間とスクリーンビューが増加
店舗ではさまざまな決済手法を模索へ
こうした中で、「POCKET PARCO」立ち上げ時からの主要目的である購買データや行動データの蓄積・分析を進めている。クレジットカード決済による購買データに加え、チェックイン機能や館内でのWi-Fi接続など位置情報機能を活用した行動データを取得。館内での歩数に合わせてコインが貯まる「ウォーキングコイン」機能もリニューアル前に導入し、館内回遊を促しながらデータを蓄積できるようにした。
現状のハウスカードの売上比率は、全体の約20%。パルコでは、「POCKET PARCO」を中心として、中期的にはデータ捕捉売上を40%まで拡大することを目指す。なお、「PARCO CARD」の新規会員開拓の際にアプリの登録を誘導していることもあり、地域によって異なるものの、プッシュ通知が可能な顧客はPARCO全体で7~8割にのぼる。
リニューアル後の効果を集計したところ、アプリの滞在時間は従来よりも1分増え、「初動として悪くはないです」と北山氏は成果を口にする。スクリーンビューも平均8ページだったのが倍の16ページに増加。アクティブユーザーも初動期間で2倍、その後も昨年に比べ約1.4倍と増えた。今後は、アプリへのクレジットカード登録率をさらに高めることを重要課題として掲げる。
なお、店舗での決済手段については、2018年12月からは「PARCO_ya上野」で「LINE Pay」を導入するなど、さまざまな可能性を模索中だ。「POCKET PARCO」とスマホ決済との連動は、現状では予定がないものの、今後顧客ニーズが高まれば検討したいとしている。