2019年11月27日9:23
アクセンチュア、TIS、ARISE analytics、アスコエパートナーズの4社は、2019年11月26日に、ICTオフィスビル「スマートシティAiCT」(福島県会津若松市)で、会津若松を舞台に行うスマートシティの実証研究に関する記者説明会を開催した。
ICT活用で持続可能で魅力的な街を目指す
記者説明会ではまず、スマートシティを推進する福島県会津若松市長の室井照平氏が同市の取り組みを紹介した。会津若松市では近年、毎年約1,000人の人口が減少しており、特に生産年齢人口の減少率が高いという。また、会津大学の入学者数の6割が県外からの流入だが、卒業後は県外に流出するケースが多い。その中で、2013年2月に「スマートシティ会津若松」の推進を掲げた。その目的は、健康や福祉、教育、防災、エネルギー、交通、環境など、さまざまな分野で情報通信技術や環境技術を活用した取り組みを推進することだ。また、オフィス環境の整備も進めており、500人規模の入居が可能なオフィスビル「AiCT」を4月22日に開設している。
会津若松市では、レコメンド型の情報提供プラットフォーム「会津若松+(プラス)」で、年齢、性別、家族構成、趣味・嗜好に応じて、各人にとって必要な情報をピックアップして配信している。また、268台の除雪車情報、母子健康情報サービス、学校情報などを基盤として提供している。会津若松市では、地域からの情報提供の共通基盤を整備し、さまざまな分野でICTを活用することで、持続可能で魅力的な街を目指す方針だ。
会津若松で構築した都市OSのプラットフォームを全国に広める
続いて、アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター 海老原城一氏がこれまでの会津若松市での都市OS開発および実証研究について紹介した。アクセンチュアでは、スマートシティ運用にあたってデジタルをどう活用していくべきかという、「都市OS」に求められる機能や要件を定義してきた。都市OSは、 データ連携基盤や認証・決済・センサーなど各種サービスの共通機能を備え、横展開が可能なシステム基盤だ。すでに8分野のサービスが展開される「会津若松+」のサイト利用率は20%と、高い数字を誇る。海老原氏は、「このモデルをプラットフォーム化して、会津若松にとどまらず日本全国に広めていきたい」と意気込みを見せる。また、市役所のデジタル化、オープンデータにも取り組んでいく方針だ。
最終的には、時代に合ったデジタルを活用して、コスト下げながら密度の低いコミュニケーションを実現させていきたいとしている。アクセンチュア アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター長 中村彰二朗氏は、市民主導のデジタルガバメントを目指していきたいとした。
今回、「会津若松+」の強化として、ヘルスケア、デジタル行政、決済分野で先端実証研究を行う。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術におけるアーキテクチャ構築及び実証研究」(管理法人:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))の「スマートシティ分野の実証研究」として採択された実証実験となる。
ARISE analyticsはブロックチェーンを活用したヘルスケアのデータ管理方式を検証
ARISE analyticsは、会津若松市の協力と名古屋大学医学部発医療ベンチャーのPREVENT協力の協力を得て、ヘルスケア領域の実験を行う。行政の保有するヘルスケアデータ(特定健診データ等)やウェアラブルデバイスから取得する活動量データを用いて、「健康診断結果や活動量の見える化サービスの検証」「健診データ等から生活習慣病発症リスクの傾向を導出できるかを検証」する。また、ヘルスケアデータの連携、本人確認、オプトイン取得に関する都市OSとの連携方式の検証を行う。また、ブロックチェーン技術を活用したセキュアなデータ管理方式の検証では、AmazonのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を用いて、ヘルスケア領域において日本国内初となるAmazon Quantum Ledger Databaseを活用したセキュアなプラットフォームを構築した初の事例となると、ARISE analytics 代表取締役社長 家中仁氏は説明した。
最適な行政手続きをアスコエパートナーズが検証
また、アスコエパートナーズでは、都市OSに「妊娠・出産」「子育て」といった行政手続きナビゲーションサービスツールを実装し、利用者に最適な行政サービスの提案ができるレコメ ンドエンジン(AI)を提供する。これにより、いつでも、どこでも便利に行政手続きができるようにしたいという。アスコエパートナーズ 代表取締役社長 安井秀行氏によると、重なっているデータを精査して一度で複数の手続きができ、レコメンデーション機能により、入力の補助につながる。また、窓口での問い合わせ対応不可の減少など、市役所の負担軽減にもつなげていきたいとしている。
TISは「会津財布」を開発、住民IDの認証から決済完了までを実現
そして、TISでは、住民IDを起点にさまざまな決済が可能となる決済プラットーフォームの実現に向けた実証研究を、福島県会津若松市の一般財団法人竹田健康財団竹田綜合病院で実施する(実験は関係者のみに限定)。TISでは、モバイルウォレット「会津財布」を開発。今回は、竹田綜合病院の協力を得て、診療費の支払いをOrigami Payで行い、その決済情報を利用者の地域ポータルである「会津若松プラス」のデータ基盤に還元する。サービスの構築には、決済事業者専用のアプリが不要なプラットフォーム「Origami Network」を使用してTISのスマートフォン用のウォレットアプリ上で、 住民IDの認証から決済完了までを実現した。Origami Networkを活用した背景として、地域の金融機関である会津信用金庫が地域での店舗開拓を進めていることもあったという。
住民IDを起点に決済が可能な「ID決済プラットフォーム」を目指す
住民IDを起点に決済が可能な「ID決済プラットフォーム」を活用することで、支払いに関する行政手続きをワンストップで可能にし、複数の決済手段を利用者が一元的に管理できるサービスを目指す。 TIS 執行役員 ジェネラルマネージャー 音喜多功氏は、「将来的には事前決済を含めて展開していきたいです」と構想を語る。地域の中で決済はインフラとなるため、多様なサービスとの連携を可能とする住民のための決済プラットフォームを目指していきたいとした。