2020年1月29日8:00
ペイメントカードの国際ブランドであり、国際ペイメントネットワークであるVisaやMastercardは、コンタクトレスペイメント、モバイル財布、Push Funds to Card Payments(以下“Push Payments”という)、送金サービス、IoTペイメント、QRコード決済などのいくつかのイノベーションの分野でマーケットを牽引している。日本や中国などでQRコード決済が話題となっているが、早期にQRへの取り組みも行っていた。また、ペイメントイノベーションとして、Push Paymentsにも取り組んでいる。(レポート「世界の決済イノベーション市場要覧」より)
mVisa QR とMasterpass QR
VisaとMastercardは近接型のモバイルペイメントとして、モバイルデバイスのコンタクトレスペイメントのNFC(Near Field Communication)/HCE(Host-based Card Emulation)やQRコード決済を導入している。Visa Contactless (Visa payWave)やMastercarのMastercard Contactless(旧PayPass)は、Apple PayやGoogle Payなどのモバイル財布のNFC/HCEのコンタクトレスペイメントが可能である。QRコード決済に関しても、アメリカの流通企業大手の共通モバイルペイメント・ソリューションのMCX(Merchant Customer Exchange)のモバイル財布が2012年にQRコード決済を導入していたほか、MastercardのQRコード決済の取り組みも2013年と意外に早かった。
・mVisaQR
VISAはモバイル財布アプリmVisaをインストールしたスマートフォンを用い、mVisaにクレジットカードやデビットカード、プリペイドカードの紐づけを行い、友人や知人などとの口座間の資金移動による送金やQRコードによるショップでの近接型のモバイルペイメントmVisaQRをアジアのインド、インドネシア、パキスタン、ベトナム、カザフスタンのほか、アフリカのケニア、ガーナ、ルワンダ、エジプトなどの新興国や発展途上国で導入している。mVisaは、口座をモバイル財布としてデジタル化を行い、QRコードをスキャンすることで、ユーザーが資金を自身の口座(モバイル財布)から小売店の口座へ送金できるPush Paymentsの一種である。
初めてmVisaを導入する小規模の加盟店は、高価なPOSカード決済端末機などPOSインフラに資金を投入することなく、代金の受領を素早くかつセキュアな決済により行える。モバイル財布mVisaは顧客への即時デジタル決済を可能にする他、カード加盟店に対しては、QRコードの柔軟性やPOSインフラへの投資の必要性がないソリューションであるとしている。
・Masterpass QR
Mastercardはモバイル財布アプリMasterpassをインストールしたスマートフォンを用い、Masterpassにクレジットカードやデビットカード、プリペイドカードの紐づけを行い、友人や知人などとの口座間の資金移動による送金やQRコードによるショップでの近接型のモバイルペイメントMasterpass QRを2013年からアジアやアフリカ、中東などの新興国や発展途上国を中心に展開している。モバイル財布のMasterpassは、Mastercardブランドに限らずVisaなどの他ブランドを含め、クレジットカードやデビットカード、プリペイドカードの紐づけを行うことができる他、カスタマー・ロイヤリティ・プログラムの登録、ID、スマートロックキーなどをデジタル化してMasterpass内に収めることができる。モバイル財布のMasterpassはMコマースでモバイルペイメントのほか、P2Pの個人間の資金の送金やQRコード決済によるリアルの店舗での決済も可能である。
Masterpass QRはインドやタイ、ベトナムなどアジア諸国でも導入が行われ、2017年12月にベトナムのmPOSベトナムとタイアップし、mPOSベトナムの加盟店7,000店以上でQRコード決済が可能となり、導入時に決済金額の10%(最大50万ドン約2,400円)をキャッシュバックするキャンペーンを行っていた。
新たなイノベーションのPush Funds to Card Payments
そんなVisaやMastercardが推し進めるペイメントイノベーションにPush Funds to Card Payments(以下“Push Payments”という)がある。Push Paymentsのプラットフォームには、Fund Disbursement(資金の支払い)、デビットカードなどのペイメントカードによる送金サービスソリューションであるP2Pペイメント、請求書支払い、IoT(Internet of Things)ペイメント、QRコード決済など多様なリアルタイムペイメントサービスがある。“Push”(押し出す) Funds to Paymentsとは、支払う側(Payer)が受取人(Payee)やカード加盟店のアカウントを指定し、資金を送るという決済方法で、従来のクレジットカードやデビットカードの決済方法の“Pull”(引き出す) Funds from Paymentsと逆の決済電文の流れである。Push Paymentsにより、各種Fund Disbursement(資金の支払い)や加盟店提示型のQRコード決済、カード口座間のP2Pの資金移動(送金サービス)などが可能となる。