2020年4月13日8:00
クレジットカードなどのキャッシュレス決済のテストソリューションを提供しているフランスFIME(フィム)の日本法人であるFIME JAPAN(フィム・ジャパン)は、かざすだけで決済処理が可能な「コンタクトレスクレジットカード」 等の普及へ向けた事業展開を本格化させている。コンタクトレス(非接触)のクレジットカード等でさまざまなサービスに関するキャッシュレス決済を実現する仕組みが構築されれば、「ガラパゴス」と揶揄された日本市場におけるキャッシュレス決済が世界標準へと開かれることになる。
欧米を中心に「非接触」のインバウンドユーザーは拡大
FIME JAPAN代表取締役の門山隆英氏は、コンタクトレスの技術開発の分野に長くかかわり、造詣が深い。門山氏はソニー出身で、26年間にわたり、NFC(近距離無線通信)向けや、FeliCaのRFチップを含むアナログ半導体の設計に携わってきたからだ。また、標準化団体であるNFCForumでも要職を務めたほか、国際ブランドで構成するカード決済の安全と普及促進団体であるEMVCoに、ソニーの代表のテクニカルアソシエイトとして、また、国際標準化団体のISOにも日本代表として参加した経験を持つ。
門山氏はコンタクトレスカードの将来性について、「カードのタッチ決済が可能になれば、インバウンド(訪日外国人観光客)向けのサービスが飛躍的に向上します。また、決済のモバイル化も加速していくので、日本の消費者にとっても利便性が高まることは間違いありません」と話す。
決済ターミナルの非接触化を実現するには、Level 1の非接触リーダー部の他に、ブランド毎にLevel 2 カーネルを実装する必要がある。「Level2 kernel(レベル2 カーネル)」は、決済ターミナル端末の基幹ソフトウェアを指す。FIME JAPANはこのカーネルのソースコードの提供で事業成長の礎を築いた。門山氏は「2年間で国内の8社とのソースコードの販売実績を獲得しました」と話す。
磁気ではなく、接触のICチップで決済するクレジットカードが主流になっているが、このICチップには、各クレジット会社のクレジットアプリケーションが組み込まれている。決済ターミナルからこのアプリケーションを起動させ、決済ターミナルと通信を行ってクレジット取引を行うためのそれぞれの処理内容や処理方法を規定した基本となるソフトウェア(カーネル)のソースコードをカーネルソースコードという。
決済ターミナルを手掛ける大手メーカーは自前の開発力があり、カーネルも自前で開発することが可能だ。しかし、キャッシュレス業界に新規参入を目指す会社や中小ベンダーにとって特に非接触用のカーネルを各ブランド毎に一から開発することやアップデートに追従することは非常に厳しく、結果としてFIME JAPANが提供するカーネルソースコードが役立っている。
QUADRACと連携、EMVCo・オープンループの普及でMaaS後押し
さらに、交通系EMVCo・オープンループの分野では、決済ITベンチャー、QUADRAC株式会社と連携し、コンタクトレスクレジットカードのシステムの普及に取り組んでいる。門山氏は「日本でも、SuicaやPASMOなどのFeliCaテクノロジーだけでなく、グローバルなEMV技術が活用できる世界を広げたいです」と意欲を示している。
パートナーであるQUADRACは、交通向け決済用サーバー・通信機器の開発・製造・販売を目的に2009年に設立され、次世代のさまざまな決済手段の利用を可能にすることで、訪日外国人を含む利用者の利便性を向上させるとともに、キャッシュレス社会の実現への貢献を目指している。
同社が開発したシンクライアント型超高速サーバー「Q-CORE」の特徴について、商品開発部長の坂上知見氏は「従来のシステムでは駅改札機や決済端末で行っている料金計算、決済、セキュリティーなどの重要機能を中央のサーバーへ集約することにより、高速多重処理を実現します」と説明する。
QUADRACはさらに、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の分野でのキャッシュレス化にも力を入れている。「Q-CORE」はQRコードなどの複数の決済方式への対応を容易にするとともに、暗号方式やビジネスロジックなどの更新・改定業務をサーバー側で集中管理することにより、高度な安全性の実現と総合コスト低減の両立を可能としているのも特徴だ。坂上氏は「FIME JAPANと力を合わせて、コンタクトレスクレジットカードを含む手持ちの決済で公共交通機関のシームレスな利用を可能にする仕組みを構築していきたいです」と話す。
公共交通機関の運賃収受については、日本国内では、Suicaに代表されるFeliCaを使用したインフラがほぼ完成している。しかし、世界を見ると、シンガポールや英国のロンドンなどのように、クレジットやデビットなど非接触の国際ブランドカードを改札口にかざすだけで、電車やバスに乗れる国が増えているのだ。
「日本も外国人旅行者の増加や非接触対応のクレジットカードの増加に伴い、このオープンループでの運賃収受の需要が少しずつ芽生えているのです」(門山氏)といい、コンタクトレスクレジットカード市場の将来性は膨らむ。門山氏は「FIMEが今まで培ってきた決済関連テストの経験と知識を生かし、公共交通機関におけるオープンループでの運賃収受の実現に寄与していきたい」と意欲を示した。
また、「Tap-on-phone(タップ・オン・フォン)」と呼ばれる市販のスマホをmPOSに活用する取り組みも欧州で進んでおり、FIME JAPANも将来の成長分野と位置付けている。タップ・オン・フォンは、加盟店にとっては専用ハードウェアが不要になり、スマートフォンを利用して支払いを受け入れることができるメリットが大きい。
一方、消費者は、コンタクトレスクレジットカードや、デジタルウォレットを使用した支払いが可能になり、決済手段が増えて利便性が高まる。支払い後のレシートの管理もスムーズになる。しかも、小規模事業者はデジタル決済を容易に受け入れることが可能となり、日本のキャッシュレス決済のすそ野が広がることが期待されている。
FIMEはタップ・オン・フォンを実現する専用カーネルも手掛けており、市場拡大を見据えたビジネスの本格的な盛り上がりに向けて照準を合わせている。
■お問い合わせ先
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