2020年9月9日8:00
千葉銀行は、地域におけるキャッシュレス決済の促進に向け、「TSUBASA キャッシュレス決済プラットフォーム」を構築し、 2019年10月から、地域の事業者に「TSUBASA ちばぎんキャッシュレス加盟店サービス」の提供を開始。2020年10月には、ビザ・ワールドワイド(Visa)と提携し、Visaデビットカード「TSUBASA ちばぎんVisaデビットカード」を発行する予定だ。
加盟店サービスではVisa/Mastercardのライセンスを取得
Visaデビット提供に向けてプロセッシングシステムを内製化
千葉銀行が「TSUBASA キャッシュレス決済プラットフォーム」構築に至った背景として、キャッシュレス決済市場は政府の後押しもあり、従来のクレジット、デビットカードに加えて、QR決済、インバウンド向けの決済など、足元も増加しており、今後も成長が見込めると考えた。また、「TSUBASA ちばぎんキャッシュレス加盟店サービス」の提供開始の前からキャッシュレス決済に関する相談が増えており、その際も多様な決済手段に対して一台で対応可能なマルチ決済端末を求める声があった。また、通常カード会社は月2回の精算が主体だが、それを短くできないかという要望も受けていた。さらに、銀行本体でサービスを展開できるシステムベンダーが存在したことも大きい。
加盟店サービスでは、VisaとMastercardのプリンシパルのライセンスを同行が自ら取得している。インバウンド決済では、AlipayとWeChat Payとも直接契約。また、主要な電子マネー、「Visaのタッチ決済」や「Mastercardコンタクトレス」にも対応している。国内企業が提供するQR決済の導入も検討中だ。
「TSUBASA ちばぎんVisaデビットカード」の提供に向けては、プロセッシングシステムを内製化できたことも大きかった。
千葉銀行 カード事業部 企画グループ 副部長 葛城康喜氏は「銀行としてサービスを提供する価値はあると考えました。加盟店のお客様は普段から取引があるケースも多く、日頃のリレーションを生かすことができます」と説明する。また、Visaデビットを発行することで、利用者のキャッシュレス化のニーズに対応することもできる。
自治体との連携や法人間取引等も進める
2024年3月末までには2万店舗の契約を目指す
単純にお店に端末を設置するだけではなく、従来できなかったサービスを提供できる点も大きい。葛城氏は「例えば、自治体とキャッシュレス決済で提携する、券売機や自動精算機との連携、法人間取引などを進めています」と話す。同行では、すでに地域に根差した展開を進めており、顧客の顔が見えているため、きめ細かいニーズに対応できるとした。
これまでの実績として、約半年のアクワイアリング(加盟店開拓)で2020 年3月末には約3,000店舗と契約した。2024年3月末までには2万店舗の契約を目指している。現状は中小規模の加盟店との契約が中心だが、POS接続先も含めて開拓の余地はあると考えている。千葉銀行と取引がなかった加盟店も契約しており、地域加盟店との関係強化につながっている。
現在、決済端末は加盟店に原則無償で提供している。加盟店手数料は、キャッシュレス・消費者還元事業の終了後は、加盟店の規模・業種に応じて設定している。また、電子マネーを取り扱う場合、月550円の手数料が必要だ。
2023年度までに1兆円の取り扱いを目指す
他行とシステムの共同利用も検討
パートナーとの連携として、決済センターはアイティフォーの「iRITSpay(アイ・リッツペイ)センター」、加盟店管理はインテリジェント ウェイブの「IOASIS(アイオアシス)」、電子マネー決済はTFペイメントサービスのクラウド型電子マネー決済プラットフォーム「Thincacloud(シンカクラウド)」を採用している。
加盟店事業では、昨年度グループで3,000億円だったが、2023年度までに1兆円規模の取り扱いを目指している。さらに、TSUBASAアライアンスにおいて「TSUBASAキャッシュレス決済プラットフォーム」を活用できれば、サービス導入行のコストを抑制できると期待する。「今後もサービスを進化させるうえで投資は必要となりますが、システムや業務も類似しており、共通化できる部分は一緒にやりたいですね」と葛城氏は語った。
Visaデビットにはタッチ決済機能も搭載
年間12万枚の発行を目指す
千葉銀行では、2014年10月からJCBデビット「 ちばぎんスーパーカード〈デビット〉」を発行していたが、今後は年会費無料のVisaデビット「TSUBASA ちばぎんVisaデビットカード」を発行する。同カードは、世界中の Visa 加盟店やインターネットでの買い物に利用できる。支払いは口座から即引落しとなるため、使いすぎの心配がないほか、利用の都度明細をメールで通知する「メール通知機能」や、利用金額に応じてさまざまな特典が得られる「TSUBASA ポイント」などを搭載予定だ。
同カードには、「Visaのタッチ決済」機能を付帯する予定であり、「Visaのタッチ決済に対応した端末は普及し始めたばかりですので、これから県内でも利用できるところを増やしていきたいですね」と葛城氏は意気込む。
まずは、年間12万枚の発行を目指しているが、今後の展開として「Google Pay等との接続など、世の中のニーズを見て提供していきたいです」と構想を口にする。
カード発行と加盟店開拓を両輪で展開
データを活用したサービスも視野に
千葉銀行ではこれからも、加盟店、およびカード利用者のニーズにきめ細かく応えていく方針だ。例えば、加盟店はWebで取引状況を閲覧できるが、口座情報の提供も検討している。また、融資、AI(人工知能)など、データを活用したサービスも進めていきたいとした。カード会員に対してはアプリと連携したサービスで、クーポンの配信を受けられたり、チラシ機能など、加盟店の情報をカード会員が閲覧できる仕掛けにしていけると地域で利用が増えると相乗効果が生まれると考える。
葛城氏は最後に、「サービスを充実させてご利用いただけるお客様の数を増やしていきたいですね」と語り、笑顔を見せた。