2020年9月17日8:00
Zフィナンシャルやヤフーを擁するZホールディングスは、2020年7月31日の決算発表会で、傘下にある金融6社の社名とサービスブランドを“PayPay”に統一することを発表した。これにともない、ジャパンネット銀行は、2021年4月5日に“PayPay銀行”に商号変更することを9月15日に発表。同行は同日、オンラインで、「PayPayブランド統一による金融戦略説明会」を開催。ジャパンネット銀行 代表取締役社長 田鎖智人氏と、Zフィナンシャル 執行役員経営企画部長 小笠原真吾氏が登壇し、ブランド統一の狙いと、その先にある“シナリオ金融構想”について説明した。
3,000万人のPayPayユーザーが身近に感じ
スマホネイティブ層にも支持される銀行へと脱皮を図る
ジャパンネット銀行は2000年10月、日本初のネット専業銀行として誕生した。2008年のiPhone発売以降は、PCに加えてスマホベースのサービス開発・提供にも注力。2018年11月からはPayPayとの決済提携を開始し、サービス開発にもともに取り組み、実績を上げてきた。
例えばUIUXを追求し続けてきた結果として、口座登録のドロップ率を最も低く抑えることに成功。個人ローンの借り入れは最短30秒で可能にしている。お得感の提供としては、個人ユーザー向けにはPayPay残高のジャパンネット銀行口座への出金手数料を無料とし、ローン初回借入は30日間無利息に設定。PayPay加盟店向けには、PayPay売上金をジャパンネット銀行受取で入金手数料を永年無料とし、翌日入金を可能にしている。
PayPayとの提携の効果は、口座獲得数にも顕著に表れている。提携開始後、個人・法人ともに獲得口座数は大きく増加しているが、特に法人口座では、2019年度に獲得した口座の約半数がPayPay加盟店。これら加盟店での精算が増え、決済件数も大きく伸びている。
社名をPayPay銀行に変更することで、マーケティング効率はさらに向上すると同行は見ている。ジャパンネット銀行とPayPayがグループ企業だと認識されていないケースもあり、「PayPayユーザーにとって、ジャパンネット銀行のサービスは“自分ごと”になっていない」(ジャパンネット銀行 代表取締役社長 田鎖智人氏)。例えばPayPayアプリから「お金を借りる」をクリックすると、現在はジャパンネット銀行のブランド名が表示されるが、これに違和感を感じて離脱するユーザーが少なくないという。ブランドを統一することで、PayPayユーザーに同行のサービスをより身近に感じてもらって、新規口座開設や稼働率の向上、利用サービスの拡大につなげたい考えだ。
PayPayアプリは決済のみならず、生活の多様なシーンで多様な機能を発揮する“スーパーアプリ”を標榜している。その中の金融サービスの部分で主要な役割を担いながら、「最も優れたUIUXを提供できる銀行として、PayPayとともに成長していきたい」と田鎖氏は抱負を語る。まず個人向けローンから始め、加盟店向けのビジネスローンを提供する体制も整えていくという。
2008年以降に生まれた“スマホネイティブ層”の経済活動が、間もなく本格始動する。田鎖氏は、「スマホベースで多くのユーザーに使われているPayPayの名前を掲げることで、スマホネイティブ層にも支持される銀行へと脱皮いたします」と宣言。ジャパンネット銀行は創業21年目となる2021年4月5日、PayPay銀行として生まれ変わる。
シーンごとに最適なサービスを提供する“シナリオ金融構想”
金融をグループの第三の収益の柱に
全体で100を超えるサービスを提供しているZホールディングスグループには、銀行のほかにも保険、クレジットカード、FX、投資顧問などさまざまな金融業がある。今後、証券、資産運用なども準備ができ次第、順次スタートさせていく予定で、これら多彩な金融サービスを、PayPayブランドとして展開・提供していく計画だ。
事業展開の方向性として、Zフィナンシャル 執行役員経営企画部長 小笠原真吾氏は、同社が推進しているシナリオ金融構想について説明した。検索、EC、旅行、決済など多種多様なサービスを提供しているグループの強みを生かし、グループ各社のサービス提供シーンごとに、シナリオに沿った最適な金融商品を提供しようというもので、すでに具体的な取り組みが開始されている。
例えば「ヤフオク!」では、中古品を落札した際、支払い画面の直前に修理保険の案内を表示。商品の購入と同時にワンストップで保険の申込・決済手続きが行える仕組みを提供している。保証期間が選択でき、商品や保証期間によっては300円といった手軽な金額で加入が可能。対象者の1割程度が申込を行っており、契約数は好調に推移している。
また「YAHOO!トラベル」では、対象商品の宿泊予約を完了したユーザーに対して宿泊キャンセル保険の案内を表示。幅広いキャンセル理由をカバーし、キャンセル料の30~100%を保証するもので、こちらも契約数は順調に推移しているという。
同グループでは、金融を、メディア、コマースに続くグループの第三の収益の柱と位置付けており、グループを挙げて事業育成に力を入れる。