2010年10月21日8:10
(14)NFCフォーラムチェアマン 田川晃一氏インタビュー(上)
NFCフォーラムの公式認定プログラムまもなくリリース
「NFCの普及によりFeliCaを国際的な産業に育てたい」
NFCの技術仕様とテスト仕様の策定、普及啓蒙活動を行う業界団体「NFCフォーラム」。携帯電話、チップ、カード、リーダライタなどのメーカーに加えて、通信キャリアやクレジットカードブランドなど、さまざまな業種から約130社が参加している。同フォーラムのチェアマン(議長)を務めるソニー コンスーマ・プロフェッショナル&デバイスグループ プロフェッショナル・ソリューション事業本部 FeliCa事業部 グローバル標準化渉外部 統括部長の田川晃一氏にその活動内容とFeliCaビジネスとの接点について、話を聞いた。
NFCフォーラムの仕様による国際互換の達成
仕様書はwebサイトから無償でダウンロード可能
――まずはNFCフォーラムの活動についてご説明ください。
田川: NFCフォーラムは2004年末にソニー、フィリップス(現:NXPセミコンダクターズ)、ノキアにより設立されました。
そもそも非接触IC技術の世界には、ISO(国際標準化機構)の規格でいうとISO/IEC 14443とISO/IEC 18092があり、通信方式はISO/IEC 14443がTypeAとTypeB、ISO/IEC 18092がTypeAとTypeF(FeliCaの通信プロトコル)を包含しています。携帯電話は基本的に1台でグローバルマーケットをカバーしなくてはなりませんから、非接触IC技術の仕様もグローバルモデルにならないと大きな問題が発生します。これがNFCの発想の原点です。
つまり、NFCフォーラムでいうNFCとは、もともとハードウェアの中に非接触IC技術を実装すること、もう一つは、異なる3つの非接触IC技術のグローバル・インターオペラビリティーを確保すること、の2つをコンセプトにしています。約130社がNFCフォーラムの会員として、この活動に賛同してくれています。
6年間で一番大変だったのは、技術仕様を策定する「テクニカルコミッティ」の活動です。おかげさまで第一世代の規格は16本ありますが、ほぼ完成しています。基本的にNFCフォーラムの技術仕様は、Webサイトでクリックライセンスに同意いただければ、会員・非会員にかかわらず無料でお使いいただくことが可能です。
NFCフォーラムの認定プログラムがまもなくローンチ
ユースケースの充実と技術仕様の拡充
――そのほかの活動状況についてお答えください。
田川:NFCフォーラムではテクニカルコミッティ以外にも、「マーケティングコミッティ」、「コンプライアンスコミッティ」が活動しています。
前述の技術仕様をうけて、テスト仕様の策定およびNFCデバイスのための認定プログラムの立上げが控えています。これを担当しているのがコンプライアンスコミッティです。年末までには概要をアナウンスして、認定プログラムの応募受付開始ができるように準備を整えておりますので、これからは認定を受けた携帯端末やデバイスが世の中に出回ると思います。
なお、認定プログラムの制度を受けるためにはNFCフォーラムのメンバーであることが必須条件になります。そのために、技術仕様・テスト仕様の策定には参加できないのですが、認定プログラムを受けることができる「インプリメンタ」という新しいクラスを新設しました。また、上位のクラスの「スポンサー」と「プリンシパル」には特約があり、NFCデバイス評価のためのテストラボをインハウスで持つことができます。
マーケティングコミッティでは、流通や交通などのホワイトペーパーを各分野の専門家と作成しています。例えば流通の場合ですと、米国のナショナル・リテイル・フェデレーション(全米小売協会)という業界団体によるモバイル・ブループリントというレポートのNFCのパートを担当しています。
――来年以降のNFCフォーラムの課題につきましてはいかがでしょうか。
田川:第一世代の認定プログラムのローンチのあと、引き続き第二世代にむけて技術仕様とテスト仕様のアップグレードが必要になります。また、マーケティングの部分では引き続きホワイトペーパーを発表するなど、商用化サポートを行っていきたいと考えています。
ユースケースの充実も重要です。例えばリモートヘルスケア。日本でもNFC/FeliCa対応の健康機器がリリースされていますが、コンティニュア・ヘルス・アライアンスが健康機器のコネクティビティのガイドラインを策定していますので、プロトコルやフォーマットの整合性を確保する必要があります。ほかにも、NFCのアプリケーションが数多く登場すると予想されるため、それらの標準規格と整合性を図っていく予定です。
また、ISO/IEC 14443 やISO/IEC 18092も進化していきますので、その進化に合わせてフォーラムの規格もアップデートしていく必要があります。