2015年11月4日8:00
決済などさまざまな分野でのNFCの利用シーンが加速
~NFCフォーラムチェアマン 田川晃一氏インタビュー
NFCの技術仕様とテスト仕様の策定、普及啓蒙活動を行う業界団体「NFCフォーラム(NFC Forum)」。同フォーラムのチェアマン(議長)を務めるソニーの田川晃一氏に、最新の活動について話を伺った。
決済や鉄道との共同作業に力を入れる
航空のIATAとの取り組みは規格が完成
――NFCフォーラム様からみた、現状でのNFCの浸透状況からお聞かせください。
田川:NFCにおいて、2014年10月は意味が深く、9月にApple様から「Apple Pay」が発表されました。それまでは調査機関やメディアの報道などをみてもBluetooth系のBeaconの話題で盛り上がっており、NFCに対する懐疑的な論調がありましたが、Apple Payがローンチされたことにより、特に米国では、決済や流通の方々のNFCに対する認識が高まりました。決済については、さまざまな方式が提案されていたなかで、既存のカード方式と互換を保ったApple Payの発表はインパクトが大きく、他の決済スキームも活性化されました。また、主要なクレジットカードブランドはクラウドベースのペイメントである「Host Card Emulation(HCE)」を提唱されていますが、「EMV(国際ブランドが策定した決済カードのためのICカード仕様)」のペイメントはNFCがメインストリームだと確立されました。現在、世界的にNFCペイメントが広がりを見せているのは、心強いところですが、一方でEMV Coとの技術スペックのアライアンスにおいて課題があるので、頻繁に議論を重ねています。
決済以外では、鉄道関係の動きがあり、NFCフォーラム、 GSMA(GSM Association)などと、鉄道におけるNFCシステムの早期立ち上げについて、共同で作業を開始しています。すでに頻繁に会議を重ねており、欧州、米国、そして日本も対象に入っています。
決済と鉄道は地に足をついて、議論を進めていますが、生活を便利にできるのがNFCの特徴でもあります。現在、家電などで利用されているBluetoothのハンドオーバーは世界中でさまざまな商品が出ていますので、消費者の認識が高まっています。また、活用の広がりとして、自動車メーカーがNFC搭載をスタートしており、さらに、モノのインターネット化であるIoT(Internet of Things )でNFCが活用される場面が増えると考えます。IoTの中には、電源を持てない物もあるため、NFCタグを貼っておけば、通信が可能で、活用の声が広がっています。
そのほかの分野では、航空分野でのIATA(International Air Transport Association)との取り組みについても規格は完成し、現在は航空会社がプロモートの検討をしている段階です。ヘルスケアについては、コンティニュア・ヘルス・アライアンス(Continua Health. Alliance)と策定した規格が「International Telecommunication Union(ITU)」に正式採用されました。また、コンティニュア・ヘルス・アライアンスでは、NFCを使った規格の公式テストツールをリリースされました。
Apple が最上位のボードメンバーとして加盟
NFC フォーラムの認定の位置づけをさらに高める
――NFCフォーラム様にAppleが加盟されましたが、その点についてお聞かせください。
田川:Apple様は、8月11日にNFCフォーラムに加盟されましたが、最上位のボードメンバー(SPONSOR MEMBERS)として参加されました。ボードメンバーに加盟するためには、単純に費用を支払うだけではなく、その申請書を見てボードメンバーの承認投票があり、それを通過する必要があります。つまり、NFCフォーラムが作っているスペックに基づいた世界があるため、それをプロモートする必要があります。今回、Apple様もそれを受け入れて申請書を出していただきました。ただ、NFCフォーラムのような標準化団体では、自分の規格を使った商品をメンバー企業に課していません。加盟した企業はこの規格に準拠した商品を出さなければならないという規則を入れると、他の規格をボイコットしていることになり、独占禁止法に触れてしまいます。そのため、加盟企業がどのような商品を展開されるのかは自由ですが、NFCフォーラムではNFCに対応した商品をプロモートしていただけると期待しています。
――さまざまな規格策定を行われていますが、規格のアップデートについてお聞かせください。
田川:着実にアップデートは進んでいて、2014年12月31日まではデジタルの通信プロトコルしか認定がありませんでしたが、2015年1月1日からはRFアナログ仕様の認定がスタートしましたので、NFCフォーラムのフルスペックの規格が運用されました。2015年7月や8月の認定アプリケーションを見ると数も伸びているので、成果も表れています。中でも、NFCのCLF(Contact-Less Frontend)については、ほぼすべてのチップベンダーが認定を取られています。今後は、スマートフォンやタブレットで認定を取得していただくデバイスが増えると期待しています。なお、規格については、随時アップデートしていく予定です。
一方で、NFCフォーラムの認定をマストで取得することを求める団体などはまだございませんので、GSMAなどと会話をしてNFCフォーラムの認定の位置づけをさらに高めていきたいと考えています。
「Nマーク」のライセンス数は約4,000
2016年2月に総会を東京で開催
――現状のNFCのシンボルマークである「Nマーク(N-Mark)」の利用状況はいかがでしょか?
田川:ダウンロードのライセンス数は4,000あり、その数は伸びています。ただ、サービス事業者は自身のマークを付けたいと考えること、スマートフォンメーカーと携帯事業者は、マークを付けていただけないケースも多いです。コンシューマーにアンケートしたところ、NFCのスイートスポットがマークを付けないとわからないという声もあります。Nマークは全世界でトレードマークとなっており、利用料は徴収していないため、ぜひ共通マークとしてお使いいただきたいですね。
――日本においての取り組みについてお聞かせください。
田川:日本においては、NFC Forum ジャパンタスク フォースを継続しており、当初は60名ほどの参加からスタートしましたが、100名以上の参加になってきました。また、2016年2月にNFCフォーラムの総会を開催する予定であり、業界の方々と活性化に向けた取り組みを行っていきたいです。今後もメンバー企業の数を増やすとともに、活動を広げていきたいです。