2020年11月2日8:00

ラクーンフィナンシャルは、2020年10月19日、ACSiON(アクシオン)、東京商工リサーチと共同で「コロナ禍で増える詐欺犯罪」についてオンラインでの勉強会を行った。当日は、各社の担当者が企業の与信管理や不正対策、最新事例や傾向、身近な犯罪に巻き込まれないための対策について紹介した。今回紹介するアクシオンでは、不正検知プラットフォームや本人確認プラットフォームを提供しており、決済業界での活用も行われている。

オンライン本人認証の「proost」と不正検知「Detecker」を展開
共同利用型のため低コストが売りに

アクシオンの講演では、CSO 事業開発グループマネージャー 竹内進氏が同社の事業概要、詐欺犯罪への対策について紹介した。アクシオンは、セブン銀行と電通国際情報サービス(ISID)の合弁会社だ。金融業界をはじめ、同じ業界の会社でも非競争領域として協力し合える、社会課題を解決する不正検知プラットフォームや本人確認プラットフォームの提供を事業として展開している。また、サービスで培った知見をもとにコンサルティング事業も行っている。

ACSiON CSO 事業開発グループマネージャー 竹内進氏

昨今、本人認証や確認が不十分でインシデントが発生している。現状、オンラインの本人確認と認証は生活者と事業者が1対1の関係になっているため、コストがネックとなり導入に踏み切れない事業者も多いとした。また、犯罪者の手口は緻密化、高度化しているため、本人確認のレギュレーションは厳しくなり、コスト負担は高まっている。

アクシオンでは、オンライン本人認証「proost(プルースト)」を展開。利用者本人の同意によって、本人確認情報をproostに蓄積し、あらかじめ本人が許可した企業(銀行やカード会社等)を対象に、本人情報が共有、本人確認取引発生時に本人の情報と登録済本人確認情報を照合することで、安全性の高い本人確認が行われるとした。また、後方では、不正検知プラットフォーム「Detecker(ディテッカー)」との連携も行われており、金融犯罪対策に関わる不正検知も可能だ。竹内氏は「事業者にとっては共同利用型のため、低コストで使用できます」と話す。

個人事業主やフリーランスのトラブル増加
フリーランス受発注のマッチングサービスで来年から活用へ

最近では、個人事業主やフリーランスのトラブルが多くなっているという。コロナ禍により面談せずに仕事に発展するケースもあり、不正が発生しやすい状況が増えている。また、偽造された本人確認書類を使った口座開設なども課題となっているが、セブン銀行では未然防止策に以前から積極的に取り組んでおり、怪しい口座の開設数は減少している。申込内容の検証、アクセス情報のモニタリング、取引内容のモニタリングをシステム化しており、犯罪者がアタックしにくい金融機関となっているそうだ。不正検知の取り組みでは、コンプライアンスチェックも実施し、フリーランスが受発注するマッチングサービス等に提案しており、2021年には市場での活用が行われる見込みだ。

Withコロナ時代の不正対策のポイントとアクシオンのサービスの展開

セブン銀行とJCBがプリカの入会申込受付の実証実験を実施
他社との差別化、導入状況は?

proostは、オンラインの認証はスマホチャネルとセブン銀行ATMで実施。新型のセブン-イレブンATMでは、スキャナや顔認証を利用した本人確認が可能だ。例えば、セブン銀行とジェーシービー(JCB)は、 2020年8月~9月まで、新型ATMを使った顔認証による「ANA JCBプリペイドカード」入会申込受付の実証実験を実施した。利用者は本人確認の同意を行い、運転免許証の表、裏それぞれをスキャン、正面に立った人「顔」を撮影して本人確認手続きを行った。「(ATMの)台に本人確認書類を置くだけで利便性が高いです」(竹内氏)。今回の実証実験では、犯罪収益移転防止法施行規則により、本人確認書類を斜めに傾けて本人確認を行ったが、商用化の際はICチップ情報を認識する方法が必要と考えており、開発を進める。

顔認証とATMによる本人確認書類の読み取り(セブン銀行/JCBのプレスリリース)

また、金融機関では、静岡銀行がproostとDeteckerを導入。静岡銀行では、インターネット支店を中心とした非対面での口座開設および取引が増加。人的監査のみに依存しない高度な不正対策を実施すべきと判断して導入に至った。またCUICINとは、同社が展開するスマートチェックインサービス「aiPass」と、proostとの連携を推進することで、チェックイン時のなりすましなど不正利用の防止が可能になるとともに、旅行者にとっても諸手続きの簡素化を目指している。

竹内氏は他社サービスとの差別化のポイントとして、共同利用型であること、不正検知の仕組みが付いていること、ATMチャネルがあることを挙げた。proostは共同利用型のためスコープも広く、ロットにもよるが他社の半額程度の値段で提供が可能であるとした。proostもDeteckerも業界横断で利用でき、6つの内定企業のうち金融機関が3社で、それ以外がホテル業界のCUICINも含めた3社となるそうだ。

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