2021年7月1日8:00
三井住友カード、三菱UFJ銀行、みんなの銀行、PayPayなどが続々外国語対応に着手
少子高齢化が進行する日本において、経済活性化のために外国人対応が必須の課題となっている。その第一歩ともいえるのがWebサイト、スマホアプリの多言語化だ。海外市場に打って出たい小売業はもちろん、在留外国人を顧客として取り込みたい国内金融機関にとっても同様である。大手日本企業の1万8,000以上のWebサイトに多言語化ソリューションを提供しているWovn Technologies の取締役COO上森久之氏、取締役CSOの寺西哲平氏に、多言語化の現状や成果について聞いた。
記事のポイント!
①Mastercardなどグローバルサイトのサポート言語増加
②日本では英語、中国語、韓国語、ベトナム語などへの翻訳ニーズが多い
③金融機関の取り組みも進む
④外国人にとってカナ入力がハードルに
⑤外国人ユーザーの立場に立った改善を
⑥三菱UFJ銀行、みんなの銀行、三井住友カード、PayPayなどが取り組む
グローバル事業展開に向けてWebサイトの多言語化は有効に
Mastercard等も多言語対応を拡大
インターネットユーザー数は今もなお増加しており、2019年には40億人を突破。一方、インターネットユーザーの利用言語は、英語が25.2%、中国語が19.3%、スペイン語が7.9%などに対し、日本語はわずか2.7%にすぎない。日本語で一生懸命発信しても、リーチできるユーザー数は限られている。リーチを拡大する方策としては、Webサイトの多言語化が有効だ。
実際、グローバルサイトのサポート言語は年々増加。世界の主要150サイトは平均33言語をサポートしている。例えば2018年から2019年にかけて、Mastercardは34言語から43言語に、アディダスは26言語から32言語に、サポート言語を拡大させている。とりわけ少子高齢化が進み、国内在住の外国人が増える環境下にある日本企業にとって、Webサイトの多言語化は急務といえる。
2014年設立のWovn Technologies(以下、WOVN)では、Webサイト用のWOVN.ioと、スマホアプリ用のWOVN.appという2つの多言語化ソリューションを提供している。これまでに、東京メトロ、東急電鉄、日本航空などの運輸業、資生堂、アシックス、ノーリツなどの製造業、ほかに小売業、サービス業、金融業など幅広い業種の日本企業のWebサイト、1万8,000以上にソリューションを導入済み。翻訳したページは500万を超える。対応言語は43。英語、中国語、韓国語に続き、ベトナム語などへの翻訳ニーズが多いという。
通常、WebサイトのコンテンツはHTMLで言語ごとに作成する必要があるが、WOVNのソリューションではどの言語とも共通化できるようなHTMLの書き方を用いている。これにより言語の追加、運用、メンテナンスが容易になり、時間とコストを抑制しながら多言語対応を実現することを可能にしている。
金融機関も多言語化に意欲
翻訳方法を大きく3つ設定
これまで海外進出を図るECサイトなどで特に関心が高かった多言語対応であるが、製造業に加え、「金融機関の取り組みも進んでいます」と寺西氏は話す。在留外国人が増加する中で、銀行やカード会社においても、外国人の顧客、会員に対し、英語などでサービスを案内したり、問い合わせに応対したりする場面が珍しくなくなってきた。このような状況に対応して、Webサイトの多言語化に動く金融機関が増えているのだ。
WOVNでは、翻訳の方法を大きく3つ設定している。1つは、企業独自の商品名、用語などをあらかじめ登録した上で、機械によって翻訳を行う方法。2つ目は、1つ目の方法を行った上で、人が修正を加える方法。3つ目は、すべてを人が翻訳する方法だ。金融機関ではごくデリケートな情報も取り扱っており、例えば約款などについてはリーガルチェックも含め、人手を介して1字1句正確さを追求する必要がある。一方で、人が一部に手を加えることによってかえって誤解を生じるケースもあり得るため、Webサイト上に「機械によって翻訳しています」とディスクレーマーを明記した上で、あえて機械翻訳したものをそのまま掲載することもある。
口座開設など、ユーザーがアクセスしてきた目的が明確なページにおいては、いかにその場でストレスなく、目的を完結させられるかに神経を注ぐ。また、既存顧客へのサービス提供を目的としたページなどでは、「翻訳が完璧なら顧客満足度が最大になるかといえば、それはまた別の問題。外国人ユーザーの体験価値の最大化を念頭に置いてサービスを提供しています」(寺西氏)。その結果として、ソリューションを導入している金融機関では、ユーザーからの問い合わせ件数が減り、顧客満足度が向上する効果が上がっている。
外国人にとっての日本サイトのハードルは?
複数のカード会社、銀行で導入が進む
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