2023年3月20日8:00
一般社団法人三重広域DXプラットフォーム
地域住民向けサイト、観光ポータルサイトと連携し地域活性化目指す
一般社団法人三重広域DXプラットフォームは、三重県中南勢に位置する多気町、大台町、明和町、度会町、紀北町の5町のエリアを仮想自治体「美村(びそん)」と位置づけ、デジタル技術を活用した広域連携の地域づくりを進めている。2023年1月27日からは、紀北町を除く4町で使えるデジタル地域通貨「美村PAY」のサービスを開始。2月6日にリリースした住民向けの地域共通ポータルサイト、広域観光ポータルサイトと連携し、魅力的な地域づくりを進める。
広域連携や地域活性化にデジタル技術を活用
4町で使える美村PAYはMPM方式で決済
過疎化や少子高齢化に悩む5町では、多気町が中心となり2020年に三重広域連携スーパーシティ構想推進協議会を設立。官民連携でのデジタル技術や先端技術を活用した地域活性化策を検討してきた。協議会は地域活性化の土台として、各町の共用を想定した「三重広域連携DXプラットフォーム」の構築を計画。2021年に多気町にオープンした大型商業リゾート施設「VISON」(ヴィソン)が事業の拠点施設となった。
さらに2022年7月、この事業が内閣府の「デジタル田園都市国家構想・三重広域連携モデル事業」に採択された。一般社団法人三重広域DXプラットフォームは、この事業の運営を担う法人として同年8月、三十三銀行、ヴィソン多気、大日本印刷、MRT、オリエンタルコンサルタンツによって設立。決済系の事業なら三十三銀行、ヘルスケア事業ならMRTというように、各社の得意とする分野で事業を推進していくこととなった。
美村PAYは、三重広域連携DXプラットフォームの中心的なサービスとしてスタート。1つの自治体だけでなく、VISONの64店舗や4町のスーパー、飲食店など広域で利用できるのが特徴だ。利用者はまず、専用サイトでユーザー登録を行う。スマートフォンでサイトを開き、加盟店に設置されたQRコードを読み取れば決済できる仕組みだ。チャージは1,000円単位で、限度額は10万円。加盟店のうち、チャージ対応が可能な店舗に置かれたQRコードを利用者のスマホで読み取る。アプリのダウンロードは不要だ。
当面は、多気町が通貨の発行を担うが、体制が整い次第、三十三銀行に移行する。2023年1月末現在、加盟店にはVISONの64店舗や4町のスーパーや飲食店など計約130店舗が登録しているが、今後も順次拡大していく。2023年3月26日までは、決済額の20%(最大2,000円)をポイントとして還元するキャンペーンを実施している。
地域・観光サイトのデジタルマップと連動
「美村」ブランド確立を目指す
美村PAYの最大の特徴は、自治体の枠を超えて、広域で利用できることだ。デジタル田園都市国家構想事業でアーキテクトを務める大日本印刷モビリティ事業部新事業開発部長の椎名隆之氏は「自治体をまたいで利用できるということは、利用者側にも事業者側にもメリットがあります。明和町に住んで多気町で働くなど、居住地と勤務地の自治体が異なる住民にとって、生活圏の中で使えるのは大きなメリットだと思いますね」と話す。スーパーなど複数の町に店舗がある事業者にとっては利用してもらえる機会が増えるし、広域で行うイベントに美村PAYを活用することもできる。
もう1つの大きな特徴としては、住民向けの地域共通ポータルサイト「美村」、観光客向けの広域観光ポータルサイト「美村 Travel」との連携が挙げられる。両サイトのデジタルマップでも加盟店を紹介。加盟店のSNSアカウントと連携すれば、リアルタイムの投稿情報をマップ上に表示することができるのだ。椎名氏は「インスタグラムやツイッターで発信された情報が、デジタルマップ上でアップデートされていきます」と説明する。
地域共通ポータルサイトには、紀北町以外の4町が参画。会員登録をすると、サイトでイベントなどの情報発信や、申し込みフォームを利用した参加受付などができる。地域の農産物や海産物の販売情報などのほか、庭の手入れや粗大ごみの搬送、子育てといった地域の困りごとの情報を掲載して、手助けできる人とのマッチングを図るなど、地域住民が生活の中で便利に使える仕様にした。広域観光ポータルサイトは度会町以外の4町が参画。各町や広域にまたがる観光情報を発信するだけでなく、旅行会社の予約エンジンを活用し、各施設のアクティビティなどを予約できるシステムも準備している。
2023年度以降は、これらのポータルサイトや美村PAYを活用して、広域での情報連携や住民や観光客にとって使いやすいサービスの構築を進めていく。例えば、行政が行うヘルスケア事業に参加する、地域共通ポータルサイトからイベントに参加すると美村PAYが付与されるなどの仕組みを想定している。
「デジタル地域通貨を含めたデジタルサービスを広めることで、地域の活性化や新しい雇用の創出・拡大につなげたい。地方の事業や活動が伸びていかないと、日本の成長は頭打ちになってしまうでしょう。地方が活性化するための方策として、1つの成功事例を示せたらいいと思っています」と椎名氏。自治体の枠を超えた「美村」ブランドの確立を目指す。