2023年4月18日9:33
江ノ島電鉄では、2023年4月15日から、全駅でのタッチ決済による乗車を導入した。江ノ島電鉄では、4月14日に体験会を開催し、同社のようなローカル鉄道が首都圏でいち早くタッチ決済の導入に至った経緯について説明した。
2019年度は400本の列車が運休する課題も
インバウンド等の観光客増に対応
神奈川県の鎌倉~藤澤を結ぶ江ノ島鉄道は15の駅があるが、同社では無人駅も含めてすべての駅にタッチ決済用の専用改札機を設置した。スタート時はVisa、JCB、American Express、Diners Club、Discoverの5ブランドの対応だが、今後は銀聯、Mastercardにも対応したい考えだ。江ノ島電鉄は沿線住民の交通手段になるとともに、コロナ禍以前は年間数千万の観光客が利用していた。そのため、特定の曜日や時間に観光客が集中して訪れ、窓口の混雑、乗降時間の増加、沿線での自動車増などにより2019年度には400本が運休する課題もあった。
江ノ島電鉄では、ソフト面での観光客分散化や沿線住民の公共交通利用促進の方策を模索していたが、新たな決済手段導入による利便性向上に加え、これまでの課題解決に向けてタッチ決済を導入した。
江ノ島電鉄 代表取締役社長 楢井進氏によると、タッチ決済を導入する意義は主に4点あるとした。1つ目はクレジットカードの場合、事前登録不要でチャージが不要なため、残額を気にすることなく利用が可能だ(デビットやプリペイドは残額が必要)。2つ目は、インバウンド顧客を中心に有人窓口が混雑していたが、インバウンド観光客が自国で利用しているクレジットカード等で乗車が可能だ。また、係員にとっても空いた時間で他の業務を行うことにつながる。3つ目は、地域店舗など、クレジットカード加盟店と連携した取り組みが可能な点だ。4つ目は、タッチ決済の仕組みを活用した運賃割引やキャンペーンの実施により、時間帯混雑の平準化や、沿線住民の外出の動機づけとともに、自家用車から公共交通に誘引することで、地域の課題であった深刻な道路渋滞を解消できると期待している。
楢井氏は「現在の交通系ICではできなかったタッチ決済のメリットを生かして、オーバーツーリズム対策や沿線住民の皆様の生活改善の一助になればと思います」と語った。
Visaは2024~26年に3億枚がタッチ決済対応に
JCB等のブランドの導入事業者も増加
タッチ決済は、VisaやJCBなどのクレジットカードで支払いや鉄道乗車が可能だ。例えば、Visaブランドに関しては世界200カ国で導入され、対面での支払いの半数以上がタッチ決済で行われている。国内では2019年からカードへの搭載を標準化しており、9,300万枚のカードが発行されている。また、Visaは国内でタッチ決済搭載を推進しており、2024年~2026年には国内発行のカード約3億枚のほとんどがタッチ決済搭載となる予定だ。
三井住友カードの「stera transit」は、「stera」の決済プラットフォームと国際ブランドの非接触決済「タッチ決済」、クラウド型の仕組みを活用した公共交通機関向けソリューションだ。世界では615都市でタッチ決済の交通乗車が実用化されており、「現在800のプロジェクトが進んでいると聞いています。国際標準の決済手段です」と三井住友カード Transit事業推進部長 石塚雅敏氏は説明する。日本国内では、28都道府県、67プロジェクトでサービスの導入が発表されている。三井住友カードではタッチ決済の推進により、カード会員の移動の幅が広がり、沿線での消費が活性化すると期待している。今後もクラウド型システムと後払い機能を生かした新たな乗車体験を開発していきたいとした。
ジェーシービー(JCB)でも発行カードをタッチ決済対応カードに順次切り替えており、「今後数年でVisaに追いつく形で切り替えが進んでいきます」と同社 加盟店営業統括部長 関祐二氏は話す。
なお、JCBでは非接触決済として「QUICPay」も提供しているが、交通のタッチ決済に関してはTypeA/Bで進め、QUICPayは店舗決済などで継続して推進していくという。今回の江ノ島電鉄での導入は、JCBとして14事業者めの交通対応となった。JCBでは、JCBブランドに加え、American Express、Diners Club、Discoverブランドのタッチ決済に関するアクワイアリング(加盟店開拓)も進めている。
ポール型改札機で通行の妨げを防止
決済の処理スピード、導入期間などで成果
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