2023年6月20日9:38
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Incは、2023年6月15日、「バックオフィスから見る2024年問題 建設・建築業界における実態と課題」についての記者説明会を開催した。同発表会では、「建設・建築業界における企業間決済調査」の結果を発表すると共に、建設DXを手掛けるスパイダープラス 代表取締役社長 兼 CEO伊藤 謙自 氏 、スマートガバナンス 代表取締役共同創業者 弁護士 / 一般社団法人Fintech協会 常務理事 落合 孝文氏、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. カード事業部門 セールス&マーケティング 副社長 谷川美紀氏によるパネルセッションを行った。
建設・建築業界は人材不足や高齢化が顕著
手形や現金決済が負担に
アメリカン・エキスプレスでは、2023年4月21日~ 2023年4月24日まで、建設・建築業界における企業間決済調査を実施。キャッシュレス化が進む中で、アメリカン・エキスプレスのBtoBとBtoCの売上は半々となっている。日本では、過去6年で法人事業が6倍に成長。アメリカン・エキスプレスでは、イシュイング(カード発行)とともにアクワイアリング(加盟店開拓)も行っているが、建設・建築業界の商慣習に合わせた支払いの効率化支援を行っているそうだ。
同調査では、人材不足に直面する建設・建築業界において、決済業務の実態と課題を把握するために実施した。支払いを受ける工務店などの「請求側」とゼネコンや商社などの「支払い側」の2つの観点から調査を行った。
調査結果から、2024年4月までに建設・建築業界が是正する必要がある「2024年問題」として人材不足や高齢化に直面していることがわかった。また、請求業務に多くの時間が割かれており、人材不足で高齢化が進む中で専門の経理を採用できない課題がある。さらに、手間がかかっている決済方法として、請求方法、支払い方法共に、銀行振込、手形・小切手、現金という順となった。
決済業務を効率化したい理由として、銀行振込は「ミスを減らしたいから」「面倒だから」、手形・小切手は「面倒だから」「別の業務に専念できるようになるから」、現金は「面倒だから」「ミスを減らしたいから」といったような点が挙がった。
1カ月あたりに行っている小口決済の回数では、21回以上が12.9%と最も多かった。
クレジットカード決済の請求への利用は14.9%
取引先への支払いは30.7%に
取引先への請求に利用している決済方法として、クレジットカード決済は14.9%となった。最も多いのが銀行振り込みで85.1%、現金が43%、手形・小切手が26.5%、口座振替が23.3%となっている。一方取引先への支払いに利用している決済方法として、クレジットカードは30.7%の利用があり、請求の2倍となった。また、銀行振込が86.1%と最も多く、現金が62.5%、口座振替が47.6%、手形・小切手が41.4%と続いた。
銀行振込、現金、手形・小切手を選択する理由として、「いつもこの方法だから」「取引先に求められているから」が各支払い手段のトップ2の回答だった。口座振替やクレジットカードを選択する理由のトップは「手間が少ないから」だった。
各種経費の支払い方法に関しては、手形・小切手は、仕入れ代(商品・原料など)、機材・設備費、システム利用料といった高額な取引が上位となった。
経理業務では、キャッシュフローへの影響が課題となっているが、支払いタイミングや出費が重なった時の資金不足、また、同業界ではつけ払いが行われていることも不満の要因となっている。請求時に関わる課題として、長期的な支払い期間によるキャッシュフローへの影響(39.5%)や、不透明なコミュニケーションによる支払い遅延(ツケ払い)(30.4%)といった入金までの期間に関する不満が挙げられた。支払い時においても、資金不足に対する不安(47.2%)が2番目に多い回答として寄せられた。
建設業界での請求から代金回収にかかる日数の最短は18.3日、最長は43.6日だが、クレジットカードを導入した場合は最短10.1日、最長19.1日と短縮化できる。松本氏は「支払方法を何にするかでキャッシュフローの課題感は変わってきている」とした。
クレジットカードの支払い利用希望は6割
受け入れ側の拡大が課題に
クレジットカード決済の受け入れ希望は約4割となり、利用者は決済業務以外のメリットを実感しているという。支払い時の利用意向は現状の58.3%と高いが、請求時の利用意向は44.3%と若干比率が低くなった。
クレジットカード決済のメリットとして、振込手数料やポイントが貯まることに加え、利用者のなかでは業務の効率化、与信確認に関する利便性を実感していることがデータから把握できた。また、支払いを受け入れる側のメリットとして、「新規の取引先獲得」「与信確認が不要」「コンプライアス対策」などが支払業務以上のメリットにつながるとした。
同調査のまとめとして、建設・建築業界は50%以上が人材不足に直面しているが、月平均107時間の決済業務に人員確保が必要だ。決済業務を効率化したい理由は、ミスやリスク、業務効率化が要因となる。現状、支払いでは、銀行振込のほか、口座振替、現金・手形・小切手が主な決済方法となっており、決済方法はこれまでの慣習や取引先の指定によって決まっている。支払い、請求にかかわらずキャッシュフローが負担となっている。建設・建築業界の支払い意欲は6割と高いが、受け入れ側の拡大が課題となるということだ。
2040年は2000年から従事者が56%減に
依然として残る手形文化も課題に
同調査を受けて、有識者によるパネルセッションを実施。スパイダープラスは、2011年から建設DXサービス「SPIDERPLUS」の開発・販売を行い、2021年には建設DX銘柄では初めて東証マザーズに上場した。伊藤氏は「長時間労働が来年の法改正が迫る中で、建設業界では100時間超の残業がある。来年は週休2日で月の残業45時間以内。2040年は2000年から従事者が56%減ると言われています。こうした中で、我々のようなIT、アメリカン・エキスプレスのようなFinTechなどで生産性や業務の削減をしないと建設業界は破綻してしまうというくらいの危機感を持って仕事をしています」と述べた。また、現状のままでは2024年問題を守れる会社は少ないとした。さらに、建設業は不況に弱く、手形により支払いサイクルが90日、120日後になってしまう点も課題だとした。
落合氏は、「2024年問題は建設・建築業界だけではなく、物流や人流、介護や医療も含めて同様の問題があります。人口減少社会が進んでいくのは、20~30年は確定しています。地域のなかでの産業は人員の維持できなくなる中で、どうやって人手を確保するかは難しい課題」だとした。今後は、デジタルネイティブな人が若者が増える中、受け入れられる環境整備が重要になる。また、支払いも含めた業務の効率化が求められるそうだ。
その課題解決に向けて、クレジットカード決済では、支払い側はクレジットカードを使ったり、会計ソフトに取り込むことができ、請求側もカード会社に任せることで業務をアウトソースでき、効率化できるとした。谷川氏は「2024年は手形の期限を60日にするガイダンスが出ていますが、これがどれだけ実現できるかが鍵になります。120日や90日で資金繰りをしているのを60日にするのは大きな変化」だとした。
支払いや請求業務のデジタル化が鍵に
与信やコンサルティングも重要に
それでは、建設・築業は、キャッシュレス化にどう対応していくべきか? また、バックオフィスから見る、建設・築業の今後についても登壇者がそれぞれ意見を述べた。
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