BtoB決済・請求代行サービス「セゾンインボイス」や法人カード「UPSIDER」、請求書後払い「支払い. com」の不正対策は?

2023年10月11日8:10

UPSIDER、クレディセゾン、コンカーは、インボイス制度開始により加速するDX化に伴い、企業の不正経費にどのような課題が生まれるかについて、各社の取り組みも含めて紹介する勉強会を開催した。クレディセゾンは、エキサイトと展開するBtoB向け後払い決済・請求代行サービス「セゾンインボイス」、UPSIDERは法人カード「UPSIDER」の不正対策を紹介。また、コンカーからはSAP Concurで実現する「承認レス」の取り組みについて説明した。なお、UPSIDERとクレディセゾンは請求書カード払い「支払い. com」を提供しているが、個人事業主宛の振り込みが業界として課題となる中、その対策についても質疑応答で説明してもらった。

2023年9月20日の勉強会で話すビズサプリ代表取締役 公認会計士・公認不正検査士 辻さちえ 氏(左上)、クレディセゾン セゾンAMEX事業部 法人営業部 栗原宏輔氏(右上)、UPSIDER 代表取締役 水野智規氏(左下)、コンカー ソリューション統括本部 ソリューションマーケティング部 マネージャー 舟本憲政氏(右下)

企業で起こる不正の手口はシンプル?
データを活用して経費精算チェック

セミナーはまず、ビズサプリ代表取締役 公認会計士・公認不正検査士 辻さちえ氏がなぜ不正は起きるのか、経費精算不正の予防と早期発見に必要なことについて紹介した。不正のメカニズムには、動機、機会、姿勢正当化といったトライアングルがあるという。また、経費精算不正は、使い道を偽る、金額の水増し、架空経費、多重精算などがある。手口は複雑ではなくシンプルだ。

同氏によると、経費不正の33%は出張費となり、次いで接待交際費が24%、物品購入費が19%と続く。また、不正金額は3万円以内が多いが、5万円以上も23%と目立つ。「不正を見聞きしたことがありますか?」という質問については、7割程度が見聞きしたことがあると回答している。

経費精算不正は問題だが、所詮「細かい」不正であり、社員には“ネチネチ細かいことを言って嫌われたくない”という思いも働く。不正行為がエスカレートすると、会社の雰囲気が悪くなり、コンプライアンス意識の醸成ができず、規律がない組織となるなど、すべてが非効率になるとした。

経費精算の一般的なプロセスとして、経費精算のための申請書を出し、管理者に承認をもらう。また、経理部門で支払処理が行われる。経理部門では、領収書などの証憑を1件ずつ見るのは大変であり、ペーパーレスとなるため複製されても気づかない可能性もある。また、インボイス対応のチェック、上司がOKしているものを経理が却下できるのかという意識が働く。企業は経費不正のチェック業務にかなりの手間をかけているが、チェック自体が形骸化してしまい、不正の機会が増しているとした。実際、経理担当者の54%がやや負担、26%が大きな負担であると回答しており、中でも46%が日付や内容などの整合性チェックが特に負担であると回答した。

辻氏は、1件1件をチェックするのではなく、システムを利用したデータ化によって効率化できるとした。データを見て異常値を探知し、リスクに応じて再確認のチェックを実施。また、データ分析をすることで、経理部門で実質的な牽制が可能だ。

代表的な経費不正リスクシナリオとデータ分析として、二重申請の際にはシステムによる入力時・申請時のアラートによって経費のチェックはより効率化できる。また、勘定科目ごとのレポート、個人別精算額推移、個人別使用経費比較、同席者リストなどにより、データを活用して経費精算のチェックを行うことで、経理の負担を軽くしながら精度を高められる。

さらに、異常値・特徴のある数値の要因分析を行うことは不正の発見のみならず、効果的なコスト管理・ベストプラクティスの横展開につながるとした。

「セゾンインボイス」で請求業務を代行
架空請求や二重譲渡の被害が顕在化

クレディセゾン セゾンAMEX事業部 法人営業部 栗原宏輔氏は、BtoB向け後払い決済・請求代行サービス「セゾンインボイス」について紹介した。

クレディセゾンは、会員数3,500万(単体で2,500万)を有し、カード取扱高8.3兆円、15万先と取引をしている。クレジットカードビジネスに加え、ファイナンスやローンビジネスも展開している。

2023年10月から開始したインボイス制度により、請求業務の体制見直しが進められている。課税事業者は、インボイスを発行するために、適格請求書発行事業者に登録する必要がある。また、請求書のフォーマットはインボイス制度に合わせて変更が求められる。さらに、税額の計算方法が一部変わる。請求書に記載の項目が増え、例えば建設業界、従業員5名ほどの零細企業、個人事業主は日常の業務と並行しながら対応が求められる。

経済産業省 令和4年度 電子商取引に関する市場調査によると、BtoC-ECの市場規模は順調に成長している。2016年から6年間を見ても年平均6.3%成長しており、さらに伸びる見込みだ。

国内のファクタリング市場規模も増加傾向だ。クラウドファクタリングの登場や手形取引の減少により、2017年を境に復調しており、同年から2022年までは年平均9%成長している。今後も年平均7%成長する見込みだ。

「セゾンインボイス」は、クレディセゾンが与信審査、請求書発行、請求書送付、入金消込/督促等の請求・回収業務など付随業務をすべて代行する。導入企業の手間を軽減できることに加え、登録された請求については100%全額を保証し、最短翌日入金も可能としている。また、発行される請求書はインボイス制度に対応しているので、利用企業は適格請求書番号を取得すればセゾンに丸投げができる。

同サービスは成長しているが、その一方で架空請求、二重譲渡といった不正が発生している。犯罪者は、実際は取引先にも発生していない情報をオンライン上のセゾンインボイスのシステムに入力する。最短翌日に代金の立替払いが行われるため、回収するのは代金を支払った後となり、架空の取引を登録する企業がいる。また、同債権を別のファクタリング会社へ譲渡することで2重に代金を受け取るケースも出てきている。

クレディセゾンでは、それらの対応に向けて、取引企業の与信に加え、サービスの利用企業の審査も行っている。また、不正リスクを防ぐために決算書類、登記簿の提出、登記情報の確認も実施。それらを契約時と契約後も定期的に行うことで、ほかの会社に抵当権が抑えられていないかなどを調査する。両方に共通する項目は代表者情報、不芳情報サイト、インターネット上の口コミ、過去の同社との取引情報などから把握する。

クレディセゾンでは今後、インボイス制度の導入や法整備、2026年予定の手形の廃止などによってファクタリングはさらに使いやすくなり、需要も高まるとみている。2020年に譲渡禁止特約等が付いた債権もファクタリングに利用できるようになり、立場的に弱い企業もファクタリングができるようになるなど債権譲渡の自由度が高まった。また、AIを用いた審査や完全オンラインでの契約化により、エリアを問わずネット利用が可能になる。クレディセゾンでは、法律が整備されることで、悪徳業者が排除され、よりファクタリングを利用しやすくなるとした。同社では、提供事業者はAIをはじめとするデジタル審査・不正検知システム等を用いて不正対策を進化させていく方針だ。

法人カード「UPSIDER」の不正は業界の100分の1以下
決済前、決済時、決済後の3フェーズで対策へ

UPSIDERの取り組みは、代表取締役 水野智規氏が紹介した。UPSIDERでは、累計2万5,000社にBtoB決済サービスを提供しており、利用継続99%、累計決済額1,000億円となっている。国内の法人カードの市場規模は1%程とも言われるが、26%ある米国などの海外と比べても成長のポテンシャルが高いという。

国内では個人をはじめクレジットカードの利用が拡大しているが、クレジットカードの不正利用は毎年増加しており、2022年は436.7億円の被害があった。2016年から不正利用は約3倍に伸びている。また、クレジットカード不正使用の内訳は94.2%が番号盗用の被害だ。法人カードは与信枠、決済額が大きいため、個人カードに比べて被害額、発生率が大きくなりやすい構造にある。

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