2024年4月11日8:00
イラストや漫画、小説などの投稿コミュニケーションプラットフォーム「pixiv(ピクシブ)」を運営するピクシブでは、同社が運営する創作物の総合マーケットプレイス「BOOTH」のサービスにおいて、支払い方法の選択肢に「ピクシブかんたん決済 Powered by みんなの銀行」を追加した。pixivアカウントと、みんなの銀行の口座情報を連携させることにより、暗証番号などの入力の手間なく、限りなくフリクションレスで決済を完了することが可能だ。さらに、みんなの銀行「ピクシブ支店」の口座と連携した場合は、利用金額の1.0%をキャッシュバックする。「ピクシブかんたん決済」スタート以来、「ピクシブ支店」の口座数は順調に拡大。特に10代や3Dやメタバースに関心を持っている層から好反応を得ているという。
更新系API活用で銀行口座から直接決済
手数料抑制や安全面でメリット
ピクシブは、イラストや漫画、小説などの投稿コミュニケーションプラットフォーム「pixiv(ピクシブ)」を運営しており、国内外合わせて累計登録ユーザーは1億を超える。2023年5月時点の会員の地域別の分布は、日本を含むアジアが84%、ヨーロッパが4%、北米・中南米が11%となっている。
「pixiv」に付随して、同社ではクリエイターが作品や各種グッズを販売する創作物の総合マーケットプレイス「BOOTH」を運営している。コンシューマーが「BOOTH」で商品を購入する際に選べる支払い手段は、クレジットカード、コンビニ払い、銀行決済、PayPal、楽天ペイ。これに2023年7月から、「ピクシブかんたん決済 Powered by みんなの銀行 」(以下、「かんたん決済」)が追加された。
ピクシブでは2021年9月に、みんなの銀行のパートナー支店第1号として「ピクシブ支店」を開設した経緯がある。みんなの銀行は、2021年5月開業の、ふくおかフィナンシャルグループ傘下のデジタルバンク。個人向け、特にデジタルネイティブを意識したサービス開発を進めており、「口座開設も決済もスマホ1つで完結できるという点にわれわれのサービスとの親和性を感じました」と同社 ファイナンシャルサービス本部 ビジネス開発部 シニアマネージャーの山縣佳菜氏は振り返る。
「かんたん決済」は、更新系(口座振替)APIの活用により、「pixiv」会員がみんなの銀行の口座から直接決済を行う仕組み。あらかじめ、みんなの銀行に口座を開設し、pixivのアカウントと連携しておけば、支払い方法に「かんたん決済」を選択し、みんなの銀行アプリからの通知に「許可する」だけで決済が完了する。ファイナンシャルサービス本部 ビジネス開発部 決済サービスチーム プロダクトマネージャー 太田美紗子氏は「情報を入力する必要がないということは、漏えいのリスクを回避できることを意味し、セキュリティ面からも望ましいことです」と述べる。
また、「ピクシブ支店」の口座と連携している場合には、利用金額の1.0%が口座にキャッシュバックされる。ちなみに、みんなの銀行に口座を開設できるのは、日本国籍、国内居住の15歳以上の個人である。
更新系APIによって可能になるA2A(Acount to Acount)決済では、間に外部のネットワークや収納代行企業が入らないため、ピクシブにとっては決済手数料を抑制でき、リスクのコントロールがしやすいメリットもある。同社は「かんたん決済」の利用比率を高めたい意向で、その基盤づくりとしてまず、「ピクシブ支店」の新規口座の獲得が第一義と考えている。
「かんたん決済」の利用率が拡大
購入層・購買行動にも影響
「BOOTH」で使われている決済手段は、クレジットカードが最も多く、次いでコンビニ払いで、この2つで全体の半数以上を占める。それらの決済手段を利用していた人たちの一部も「かんたん決済」を利用し始めている。
「かんたん決済」では、クレジットカードを保有していない若年層も、セブン銀行ATMから口座に入金しておけば支障なく決済を行える。「かんたん決済」のスタート以降、「ピクシブ支店」の新規口座開設数は顕著に増加。年代別では20代前半が最も多いものの、15~18歳の新規開設も少なくない。3Dモデルやメタバースに関心が高い層からの反応も良い。また「BOOTH」で決済を行っている中心層は性別を問わず20代から30代前半であるが、「かんたん決済」に限れば10代後半、20代、30代前半の比率も高く、男性が多い。「『かんたん決済』の利用者は、ほかの決済手段を選択した人に比べてリピート購入率が高いこともわかっています」(太田氏)。「かんたん決済」の導入が、購入層の拡大・変容を促しているようだ。
意外に難航しているのが、クリエイター側の新規口座開設だ。個々のクリエイターによって状況はさまざまだが、作品制作で生計を立てているような人たちは、個人事業主としてほかに口座を持っているケースも少なくないからだ。将来的にはピクシブが運営するプラットフォームからの定期的収入を担保に各種金融サービスを提供するなど、クリエイターにとって魅力的なサービスの開発にも力を注いでいく方針だ。