さいたま市のデジタル地域通貨「さいコイン」「たまポン」、公共と民間を“つなぐ”経済圏をさいたま市で構築へ

2024年7月23日8:00

埼玉県さいたま市では、スマートフォンアプリ「さいたま市みんなのアプリ」による地域通貨サービス「さいコイン」、ポイントサービス「たまポン」を2024年7月31日から開始する。「さいたま市みんなのアプリ」は地域通貨以外にも図書館カード、シルバーカードなどの機能を搭載するが、同アプリはさいたまの地域商社として設立された「株式会社つなぐ」がサービス運営を行う。「さいコイン」「たまポン」の特徴やアプリの目指す世界について、つなぐに説明してもらった。

池谷貴

左からつなぐ 管理部 部長 林尚郎氏、代表取締役 佐々木彰氏、常務取締役 大楠泰司氏

政令指定都市初、市内全域で地域通貨開始
官民連携で展開する強みを生かす

さいたま市は約135万人が暮らす政令指定都市だ。今回、政令指定都市として初めてデジタル地域通貨を市内全域で開始する。さいたま市では過去にも汎用のコード決済アプリを利用したキャンペーンを実施したが、市内で通貨が循環する“地産地消”の仕組みが必要と考えた。また、汎用コード決済アプリは購買データを自治体に還元することが難しい。

「さいたま市みんなのアプリ」。デジタル地域通貨「さいコイン」は支払い時に“まるさ”という決済音が流れる

つなぐ 代表取締役 佐々木彰氏は「経済的な側面に加え、市民のコミュニティを活性化させていくことが重要です。さいたま市は人口が増えているがゆえにコミュニティの課題があるため、市民アプリ、地域通貨、地域ポイントを主眼として使ってもらうことで、地域の課題を解決していきます」と話す。

さいたま市では、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案)の推進による行政の効率化・高度化を目指している。また、さいたま市は人口の流入や流出が激しく、自治会のつながりが弱くなる課題があるため、地域アプリによるコミュニティの強化につなげる狙いだ。さらに、2035年をピークに市内の人口が減る可能性もあるため、早期に手を打つことが重要だと考えた。

つなぐは、さいたま市に加え、ジェイコム埼玉・東日本、JTB、イオンフィナンシャルサービス、エコ計画、埼玉りそな銀行、フェリカポケットマーケティング、武蔵野銀行、埼玉縣信用金庫、さいたま商工会議所、いわつきポイントカード事業協同組合により設立された。これまで地域通貨は官、民が主導するさまざまなサービスが存在したが、「官民が連携することで、地域通貨を地域全体で取り組む姿勢と、各参画者のコミットが成功の要因になると考えています。当社は行政、市内の有力企業に加えて、市外のノウハウを持った企業が参画しており、どちらに偏ることなく推進できるのが強みです」と管理部 部長 林尚郎氏は語る。例えば、金融機関は、埼玉に密着した3つの金融機関に加え、小売業のイオングループ傘下で金融事業を展開するイオンフィナンシャルグループを金融団として形成している。

つなぐでは、当初から官民連携で展開している強みを生かし、公共サービス・準公共サービスと民間の柔軟なサービスをつなぎ、市民アプリを核にしてサービスを広げていく方針だ。まずは地域通貨からスタートするが、物販に加え、コトのサービス消費も含めることで域内消費を活性化させていく。

アプリには行政サービスも実装
200以上の金融機関、クレカチャージが可能に

また、行政サービスも同時に実装。アプリには20万人が利用する図書館カード、65歳以上の市民を対象としたシルバーカード(4万人)、20万のダウンロードがある「さいたま市ごみ分別アプリ」などの機能を搭載する予定だ。林氏は「まずは図書館カード、防災アプリからですが、年度内に数十の行政サービスと連携したいと考えています」と構想を述べる。

「さいコイン」は、銀行口座・クレジットカードでチャージできるさいたま市限定の電子マネーとなり、バリューイシュアはイオンフィナンシャルサービスが担う。店舗での支払いは、利用者のスマートフォンアプリで店舗のQRコードを読み取る「MPM(Merchant Presented Mode)方式」を採用した。銀行チャージは日本電子決済推進機構の「Bank Pay」との連携により、200以上の金融機関に対応する。また、クレジットカードチャージは開始時点ではイオンクレジットサービス/イオン銀行のクレジットカードチャージが可能だ。なお、地域のデジタル化に向けたサービスのため、現金チャージは現状考えていないという。

市民アプリはマイナンバーなしでも利用できるが、地域通貨のチャージを行う際はマイナンバー認証を必須としている。さいたま市はマイナンバーの普及率が80%弱だが、操作面の支援は市役所など約10カ所の拠点で行う。

利用者はチャージ額に応じて3%のポイントが付与される。また、開始に合わせ、総額4億円分(1人2,000円相当分まで)のポイント付与キャンペーンを行う。これにより、先着20万人に2,000ポイントが付与されることになる。

チャージ時のポイントで貯まった「たまポン」は原則、地元企業のみで利用できるようにした。これにより、地域でお金が循環するとともに、地域活性化に役立てることが可能だ。「たまポン」は地域貢献活動などでもポイントが貯まる特徴がある。

つなぐでは、今年度20万人まで利用者を拡大する狙いだ。決して低い目標ではないが、「私たちはできると考えています」(林氏)。市内の利用者を含め、市外からの通勤者などにも「さいコイン」を利用してもらい、市内での消費喚起を促す。

今年度中に5,000店での利用を目指す
決済手数料は手数料は1.8%

利用できる店舗は今年度中に5,000店を目指す。市内全域で偏りなく利用できるように努めているが、サービスの浸透とともに店舗数は増えていくとみている。加盟店開拓は、地域通貨の店舗開拓で実績があるJTBをはじめ、商工会議所や株主からも提案を行う。また、「がんばろう さいたま!商品券」などで接点があった店舗もターゲットとしている。今後は商品券事業なども吸収し、市の各種事業における給付などで「さいコイン」「たまポン」を付与する予定だ。

加盟店が負担する手数料は1.8%となる。主要なコード決済サービスよりも低い料率を意識しており、「長期的に継続できるサービスとして、低廉な価格に抑えつつ、受け入れていただけるパーセンテージを設定しました」(林氏)。また、MPMを使用するため、端末のコストや月額固定費などがかからない強みもある。

加盟店への資金の振り込みは、決済手数料を差し引いた月2回を予定している。また、加盟店への入金は前述の株主でもある4金融機関との契約が必要となるが、加盟店への振込手数料は無料で対応する。

集まったデータ活用も視野に
アプリ機能の開発、退蔵益は考えず?

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