2011年11月1日8:00
ソーシャルマーケティングで双翼を獲得
☆☆☆ 利用者と加盟店の双翼をスピーディに拡大し飛躍 ☆☆☆
Get 2 Wings with 1 Social Network
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
Amexのスマートフォン決済ソリューションServeは、高性能レーダーに探知できないステルス戦闘機かもしれない。ある日気がつけばスマートフォン決済シェアの大半を奪取していた、ということもじゅうぶん考えられる。
Googleや世界の通信キャリアは、これぞ次世代決済の世界標準とばかり、華々しくデモンストレーションを繰広げている。たしかにスマートフォン特有の直感的な操作性はアピールする。
しかし、決済は利用者と利用できる場所の双翼がそろってはじめてビジネスとして成立する、ということを忘れてはいないだろうか。決済市場の新規参入者は、スマートフォンの技術的側面にばかり目を向けているようにみえる。
いっぽう、Amexは決済ネットワークの雄である。Amexが戦略商品と位置づけているスマートフォン決済の成功の鍵は、利用者と加盟店の双翼を拡大することにある、という認識をしっかりともっている。
スマートフォンNFC決済が世間一般に浸透するには時間がかかる。かといって、普及するまで待っていたのでは負けてしまう。積極的に新技術を導入しながらも、着実にその技術を活用できる決済インフラを先行して構築したい。
スマートフォン決済の利用者と加盟店をスピーディに拡大する施策はないだろうか。Amexが狙いを定めたのは、ソーシャルネットワークであった。
Web上に大小さまざまなコミュニティが集まったコミュニケーションネットワーク。それが、ソーシャルネットワークである。そこには消費者としての個人、ビジネスパーソンとしての個人、あるいは個人事業者や法人がゆるやかな絆ネットワークでつながっている。
ソーシャルネットワークはスマートフォンによってさらに発展する。常備携帯することによって、リアルタイムの情報発信や、位置情報と連動したコミュニケーションが可能になる。パソコン上のソーシャルネットワーク利用とは次元の違う使われ方をするようになるのだ。コミュニケーションの方法は劇的に変わるだろう。
Amexはソーシャルネットワークを活用し、スマートフォン決済のための新たな双翼づくりに着手した。利用者と加盟店の双翼を効率的に拡大。さらに、従来の決済にはない新たな価値を付加しようとしている。
●位置情報モバイルネットワークfoursquareの魅力
Amexは2011年3月、foursquare(フォースクエア)と提携し、位置情報特典サービスの実証実験を開始した。6月には全米に位置情報特典サービスを拡大。わずか3カ月のテストで全米展開というのは異例のスピードである。それだけ効果があるとみたからに相違ない。
foursquareはスマートフォンの位置情報(GPS)を使ったソーシャルネットワークである。特徴は、自分の行動を現在地やお気に入りの場所を登録(チェックイン)することによって記録したり、友だちとシェアしたりできること。
メニューには「友人」「検索」「チェックイン」「To-Do-List」「利用履歴」がある。友人メニューでは、スマートフォンのGPSで利用者の位置を特定し、近くの友人をリスティングする。チェックイン画面では利用者の位置を特定し、その場所で友人がコメントした内容や写真をみることができる。自分でコメントをすることも可能だ。