2011年12月19日8:00
Android搭載NFCスマートフォンを利用したexpresspayの読み取り実験を実施
イシュアとアクワイアラの役割を分離し、発行から加盟店での利用までスムーズに
クレディセゾンとアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. (American Express)は、ソフトバンクモバイル、大日本印刷、ジェムアルトと共同で、NFC技術を用い、Android搭載スマートフォンによる、American Expressの非接触IC決済サービス「expresspay」の実証実験を国内の加盟店で実施した。イシュア部分はクレディセゾン、アクワイアラ部分はAmerican Expressがそれぞれ担当し、実験はスムーズに進んだという。
クレディセゾン/American Express
NFC対応USIMカードにクレディセゾンのカード情報と
expresspay決済アプリケーションをダウンロード
実証実験は2011年11月~2012年2月まで行われ、American Expressの非接触IC決済サービス「expresspay」のネットワークを利用した国内初の試みとなる。expresspayは米国でもかなり普及が進んでおり、コンビニエンスストアやガソリンスタンド、フランチャイズチェーンなどで導入されている。また、expresspay搭載カードも8種類がリリースされている。現時点での日本での展開は未定だが、NFCが注目される中、「プラットフォームを研究して、将来的なオプションとして検討するため、今回の実験に参加しました」とアメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. 広報部 課長 津釜宜祥氏は説明する。
クレディセゾンは、2010年にKDDI、ソフトバンクモバイルがそれぞれ実施した実証実験に参加し、MasterCardの非接触IC決済サービスである「PayPass」の検証を行っている。同社では、戦略商品としてAmerican Expressブランドが付いたカードを発行しており、会員数も増加していることから、今後NFC搭載スマートフォンが普及した際のモバイル決済サービス展開も想定して、American Expressに実験の実施を呼びかけ、実現に至った。
同実験では、ソフトバンクモバイルのスマートフォンにジェムアルトの外付けアンテナ「N-Flex」を装着。実験参加者は、スマートフォンにインストールされた専用ウォレットアプリを操作し、NFC対応USIMカードにexpresspayアプリケーションとSaison American Expressカードの情報をダウンロードする。さらに、同端末をAmerican Express加盟店のPOSに接続されたリーダーライターにかざすことで、通常のクレジットカードと同様の利用ができることの検証を行った。
「今回の実験は、技術的には昨年までに実施したものを踏襲した形になりますが、expresspayの発行だけでなく、アクワイアラであるAmericanExpressに参加いただき、実際の運用に即した体制で実施できたことは、今後の商用化を展望した場合、意味があったと考えています」(クレディセゾン カード事業部 営業企画部 商品・サービス開発グループ 課長 吉中 慎氏)
今回の検証項目は、大きく分けて4つ。まず、カード入会申込者のカード情報を、ダウンロードサーバー(TSM)にアップロードすることだ。次に、TSMからスマートフォンにOTA(Over The Air)でカード情報をダウンロードできるかを検証している。3つめは、カード情報をダウンロードしたスマートフォンが、店頭の端末できちんと読み取れるかどうかである。そして、最後に、加盟店とアクワイアラを介しカード利用承認(オーソリ)情報及び売上が正常に処理されるかの確認である。
expresspayアプリ及びカード情報をダウンロードする時間は「一般的なスマートフォンのアプリのダウンロードと同様に、違和感なく行うことが可能です」と吉中氏は説明する。カード会員は、スマートフォン上でカード番号や有効期限、利用履歴などを閲覧できる。
カード番号とスマートフォンの保有者の紐付や
商用化に向けたスキーム構築などが課題
すでに実験は行われているが、「これまでの経験もあり、大きなトラブルもなく、非常にスムーズに進めることができたと考えています」と吉中氏は成果を語る。実験を行った加盟店名に関しては非公表だが、「クレディセゾン、American Expressの会員がよく利用する店舗で実施した」(津釜氏)という。
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.グローバル・ネットワーク・サービス 日本/アジア・太平洋 第一グループ マネージャー 前田和孝氏も「弊社としては、今回expresspayを利用した国内で初の実験となりましたが、読み取り処理やイシュアパートナーとの役割も含め、上手くいったのは実績として貴重なものとなりました」と成果を語る。
とはいえ、クレディセゾンによると、実際の商用化に向けては課題も残るという。たとえば、ダウンロード時の認証方法については、今回は参加者が限定されているためカード番号とスマートフォン情報をあらかじめ紐付けする方法をとったが、商用化にあたってはセキュリティも考慮した運用方法を構築する必要がある。
また、オーソリ・売上処理についても、今回は磁気カード情報をベースとしたが、国際ブランドのルール上はEMV対応が必須となっており、ホストシステムの対応も必要になるだろう。吉中氏は、「カード情報のダウンロードや、店頭での利用においては、セキュリティの確保とともに、消費者の理解も得られる方法を考えていかなくてはなりません」と話す。
さらに、TSMの運営方法についても課題が残る。現在、携帯電話会社や国際ブランドを中心に議論が進められてはいるが、各社がばらばらに規定・構築するとコストがかさみビジネスとして成り立ちにくくなることを吉中氏は懸念している。
「その意味からも、今回American Expressに参加いただけたことは、今後の展開において大きな意味がある」と吉中氏は言う。
クレディセゾンはTypeA/B決済の互換性の高さに期待
加盟店や消費者のニーズを踏まえサービスを検討
クレディセゾンとして、NFCによるTypeA/Bベースの決済に一番期待することは、国内外を含めた互換性の高さだという。NFCは国際仕様として、全世界で採用が見込まれており、カード会員は全世界でモバイル決済が利用できることになる。また、やりとりされる情報は既存のクレジットカードと同一の仕様となるため、カード会社はもちろん、加盟店側のインフラ構築も、比較的容易に行えるのではないか、と期待している。
来年にはTypeA/BをベースとしたNFC搭載スマートフォンが市場に投入される可能性が高い。クレディセゾンでは、大手流通企業の提携カードを数多く発行しており、「今後は加盟店や消費者のニーズを踏まえ、サービスの展開を検討していきたい」(吉中氏)としている。また、American Expressも今回の実験の成果を踏まえ、NFCを利用したサービスを研究していく方針だ。