マクドナルド店舗でITSスポットを利用したキャッシュレス決済を検証(HIDO)

2012年5月7日8:00

マクドナルド店舗でITSスポットを利用したキャッシュレス決済を検証
店舗外での注文から接触ICカードを利用したEMV決済までスムーズに実施

財団法人道路新産業開発機構(HIDO)は、2012年3月5日~3月16日まで、日本マクドナルドの協力のもと民間企業27社との共同によるITS(高速道路交通システム)スポットを利用したドライブスルー実証実験を茨城県のつくば研究学園店で実施した。店舗外での事前注文登録、店舗内での注文確認・確定、接触ICクレジットカードを利用したEMV決済までスムーズに行われ、今後は商用化に向けたフェーズに進みつつあるという。

財団法人道路新産業開発機構

店舗外での事前注文登録、店舗内での注文確認・確定、

動画・音声配信、クーポン配信などのPRサービスも検証

ITSスポットを利用したドライブスルー実証実験は、5.8G帯を利用してキャッシュレスな環境を整備する目的がある。すでに高速道路については、ITSスポットが1,600機設置され、安心・安全なルートガイダンス、前方障害物を検知するシステムなどを提供しているが、「われわれが狙いとしているのは、暮らしの中で生活者の利便性を享受することです。これまでの自動車は、移動するための情報提供が主体でしたが、今後はITSを利用して自動車の特徴を生かした生活形態をつくることが狙いとなります」と財団法人道路新産業開発機構 ITS・新道路創生本部 プロジェクトマネージャー(担当部長) 浜田誠也氏は説明する。

ドライブスルー・サービス ナビ画面イメージ「事前注文登録」

同実験では、自動車、カーナビ、車載器などのメーカーや、SIer、カード会社などの民間企業27社が参加。マクドナルド「つくば研究学園店」において実験を行った。

ドライブスルーサービスでの検証項目としては、店舗外での事前注文登録、店舗内での注文確認・確定、車利用型のEMV決済や動画・音声配信、クーポン配信などのPRサービスとなった。

ドライブスルーサービスのコンセプトは、「Super convenience」となり、顧客にとって一番身近な存在になることが第一点。これは、サービス時間の短縮や利便性の提供が挙げられる。

例えば、従来、マクドナルドにドライブスルーで訪れる顧客は、車の中から店舗外に設置したマイクを利用して注文を行っている。通常、店舗外にメニューは設置されているため、画面のサイズが限られる。また、雨の日や外部環境が悪い地域、自動車内で子供などがいる際はクルーの間違いが発生するケースも考えられる。今回の仕組みを利用すれば、そういった課題を解決することが可能となる。

また、「Fun place to go」として、新たな広告宣伝機会を創出することで、顧客に“Fun”を提供する楽しい存在であることも目標となった。

マクドナルドは昼の11時30分から13時までの回転率をいかに高めるかを重視しています。例えば、その時間に回転率を2倍短縮することができれば、収益構造自体の改善が見込めます。これは、かねてからのマクドナルドの課題であり、生活者の中で利便性の高い環境をつくるのがわれわれの狙いと合致しました」(浜田氏)

今回のITSの仕組みをベースに利便性の高いシステムを構築できれば、リピーターの囲い込みが実現できる。また、特に女性は“買いやすい”、“行きやすい”店舗を求める傾向があるため、ドライブスルーで混雑しない環境を整備すれば来店者は増えることが予想される。

カーナビの画面を利用して注文確認を実施

決済処理速度はカード会社からも高い評価を得る

実験では店舗の敷地内にITSスポット(アンテナコントローラ)を4機設置し、カーナビを利用して注文を受け付けた。ITS車載器はETC機能に加え、道路交通情報の受信、プロープ情報の送信に加え、既存のICクレジットカードによる接触IC決済(EMV決済)が可能である。車載器には、「YES/NO」、「はい/いいえ」などのボタンを実装。DSRC通信区間は、SPF(Security Platform)を用いて、セキュアな通信環境を確立している。

ドライブスルー・サービス ナビ画面イメージ「決済」 ※当該画面は、ナビメーカによって異なるため、画像はイメージ

今回は、クレジットカード会社が発行するテストカードを利用して決済処理を実施したが、「将来的には、ETC機能も載せたカードが発行されると思います」と浜田氏は期待する。

店舗には実験用のPOS端末を設置。統合サーバはPOSと連動し、ICクレジットカードのネガチェックおよびカード会社へのオンラインオーソリなどのインターフェース機能を有している。また、販売承認機能を実装し、結果を領収書として発行している。

利用の流れとしては、まず道路を走行する自動車に向け、最初のスポットからメニューを車載器へ配信。利用者は自動車内でメニューを選択し、仮注文としてITSスポットから情報を登録する。次にドライブスルーレーンに進入後、ITSスポットから広告を配信する。注文エリアでは、情報登録した仮注文をオーダーボード、店舗POSに表示し、注文確認・確定を行う。利用者は注文確定後、決済ブースに移動し、最後にITSスポットから、車載器へ利用金額を提示することで、クレジット決済の意思確認と決済処理を行う流れだ。

浜田氏は、「決済については、9秒前後で処理が行われており、実験に参加したカード会社や国際ブランドからも早いという評価をいただきました」と自信を見せる。また、決済処理の後には、ITSスポットからクーポンの発行も行った。

技術的な課題はほとんどない

街中でのITSスポット設置を目指す

結果的に、今回の実験も成功裏に終わり、「技術的にはほぼ問題ありませんので、今後はITSスポットの拡充や事業形態の整理のフェーズに入ると思います」と浜田氏は話す。また、実験を行ったマクドナルド側の評価も高かったそうだ。

財団法人道路新産業開発機構 ITS・新道路創生本部 プロジェクトマネージャー(担当部長) 浜田誠也氏

実用化に向けての課題としては、本人確認の仕組みの整理などが挙げられるが、「自動車は本人性が高く、また小額決済などで利用されることが多くなるため、カードの有効性の確認ができれば、解決できると考えています」と浜田氏は説明する。

現状、ITSスポットは高速道路やサービスエリア・パーキングエリアに設置されているが、将来的には、街の中に設置し、ファストフードドラッグストア、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなどの商品・サービスを社内で予約・注文できるような環境を整備していきたいとしている。

HIDOでは、4月まで検証結果の取りまとめを実施。6月からは実サービスに向けての仕組みづくりを行うという。実用化について浜田氏は、「生活者が、普段の生活の中で移動している自動車を利用して、来年中には何らかの形にしていきたい」と意気込みを語った。

国内では毎年、約400万台の新車が販売されているが、HIDOでは早期のITS車載器・ナビゲーションシステム搭載を目指す。

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