ソフトバンクとPayPalが合弁会社「PayPal Japan」を設立し、リアル決済に進出

2012年5月10日0:09

ソフトバンクとPayPalは、2012年5月9日、日本でデジタル決済を推進する合弁会社「PayPal Japan」(仮称)を設立する計画を発表した。また、PayPalが米国、カナダ、香港、オーストラリアで展開している「PayPal Here」も国内で展開する。ソフトバンク 代表取締役社長 孫正義氏は、「オンラインとオフラインの両方で№1を取りたい」と意気込みを語る。

「安価な導入コスト」「即時の回収期間」、「安価な決済手数料」を実現するPayPal Here

新会社は、ペイパルとソフトバンクが、それぞれ10億円(12.5百万米ドル)ずつ出資。役員は両社3名ずつ、計6名となり、ソフトバンク側からCEOとして、ソフトバンクモバイル取締役常務執行役員 喜多埜 裕明氏が就任予定だ。

PayPalは、2011年の世界の総取扱額が1,180億ドルあり、アクティブアカウント数は1億1,000万に及ぶ。また、190の国と地域でビジネスを展開している。PayPalのアカウントを1つ持てばあらゆるシーンで支払いを行うことができ、何度もクレジットカードの情報を入力する必要はない。その半数以上のトランザクションは米国以外であり、「世界でナンバー1の決済サービスをオンライン/モバイルで提供している。今後はオフラインの世界でも№1を目指していきたい」と米国eBay Inc.(イーベイ)の社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジョン・ドナホー氏は説明する。また、PayPal 代表デイヴィッド・マーカス氏は、「取扱額はここ4年で50倍伸び、昨年は70億ドルとなり、この勢いはさらに加速する」と自信を見せる。

加盟店のPayPay Hereの決済画面の選択イメージ(左)、利用者は加盟店の店員に名前を伝え、店員はチェックインリストから利用者を選択して決済が可能になる。利用者への決済の確認はメールで届く(右)(出典:ソフトバンクモバイルとPayPalの説明画像)

孫氏は、60%近くのオフラインの取引がカード決済で行われている米国、英国、韓国に比べ、「日本は、クレジットカード決済においては後進国である」と説明する。また、国内のクレジットカードの導入店舗は95万店舗程度であり、335万店舗が未導入の状態となっている。特に中小の加盟店がクレジットカードの導入に二の足を踏む理由として孫氏は、「10万円前後かかる導入費用」、「15~30日の回収期間」、「5~8%かかる決済手数料」を挙げた。その点、今回提供するPayPal Hereは、「安価な導入コスト」「即時の回収期間」、「安価な決済手数料」となるため、中小の店舗も導入の障壁がなくなると同社では自信を見せる。

PayPal Hereは、スマートフォンのイヤフォンジャックに挿す親指大のカードリーダと無料のモバイル・アプリケーションを使用し、クレジットカードやデビットカード、PayPalによる支払いを行うことが可能だ。

ソフトバンクモバイル取締役常務執行役員 喜多埜 裕明氏は、「ソフトバンク、ヤフーの経験を新会社に生かしたい」とコメントした(出典:ソフトバンクとPayPalの説明会資料)

すでに国内にもスマートフォンを使ったクレジットカード決済ソリューションが登場しているが、PayPal Hereは、自動チェックイン機能があり、利用者が登録した店舗であれば、店員の確認により、カードやスマートフォンを出さずに「顔パス」で決済が完了するのが特徴となる。また、暗号化など、セキュリティ面でも強固な対策が施されているという。今後は、国内向けにポイントなどさまざまな機能を搭載できるウォレットサービスも提供する予定だ。

カードリーダおよびiPhone向けの事業者用アプリケーションは、9日から、一部の加盟店に限定的に提供を開始。テスト店舗への導入を経て、一般への提供は今後1~2カ月程度で開始する予定だ。またAndroid 向けの事業者用アプリケーションも用意するという。カードリーダの価格は1,200円程度であり、それ以外の導入費用や月額費用は一切不要だ。取引手数料は5%で、1回の取引ごとに発生する。

なお、当面はJCBブランドのカードは利用できないが、引き続きジェーシービーとも協議を行っているそうだ。

ソフトバンクグループは、全国数千店舗の流通・販売網や強力な営業体制、約2,900万件の携帯電話契約件数を誇り、これらのチャネルや顧客基盤を生かした展開が可能である。孫氏も「ソフトバンクの法人営業がこの三角形のアダプタを配って、店舗の数を100万件、200万件まで増やしていきたい」と力を込める。また、ソフトバンクのショップで販売することも考えているという。

同社では今後、利用者がオンラインで商品やサービスを発見し、オフラインで購入や決済を行うシーンが増加するとみている。すでに米国ではコマースチャネルの割合として、全体の5割が「O2O(Online to Offline)」となっているが、国内はわずか2割程度にとどまっている。今後はPayPal Hereの投入により、O2Oの展開においても「圧倒的な№1」を目指す。

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