2013年1月21日8:00
モバイル・トランザクション・プラットフォーム(MTP)で複数のサービスを一元管理
ISIS、Discover、MasterCard、DNPなど、世界の主要な企業が採用
国際ブランドが提供する決済(クレジット、プレリペイド、デビット)をはじめ、銀行口座、ポイント、クーポンなどをモバイル内に一元管理できる「Walletサービス」が注目を集めている。そんな中C-SAMのMTPは、米携帯キャリア3社のジョイントベンチャーであるISIS、国際ペイメントブランドのDiscover、MasterCard Worldwide、メキシコやインドの銀行、シンガポールのキャリアや決済ネットワーク会社など、世界各国で採用実績を築いている。国内でも大日本印刷がC-SAMの提供するMTPのライセンス契約を締結している。
ISISやStarhubではNFCを活用したモバイルWalletを展開
MasterCardとはワールドワイド地域で戦略的提携
C-SAMは、1998年に設立されたベンチャー企業で、本社は米国・シカゴに、研究・開発拠点はインドに有している。従業員は約300人(2012年12月現在)で、そのほとんどはエンジニアだ。創業者で会長のサム・ピトローダ氏は、創業当時からWalletのコンセプトを掲げ、数多くの特許を保有している。
提供サービスとしては、MTP のWalletサーバー開発用SDKやクライアントアプリ開発用SDKのライセンス提供、またクライアントアプリ開発の技術支援、Walletサーバーシステム構築の支援、モバイルサービスに関する技術・ビジネスコンサルティングなどを行っている。エンドユーザーは、決済をはじめ、クーポン、ポイント、ヘルスケア、メディア、地域サービスなど、さまざまなモバイルサービスを1つのプラットフォーム上で利用することが可能だ。
C-SAMではすでに、NFC技術を活用したモバイルWalletサービスをサポートしている。2012年10月には、オースチン、ソルトレイクシティの2都市で商用化トライアルを開始したISISがC-SAMのプラットフォームを採用。同サービスには、Visa、MasterCard、American Express、Discoverの4つの国際ブランドに対応し、4つのカードイシュアが参加して、非接触クレジット決済、非接触プリペイド、クーポン、ロイヤリティプログラムが提供されている。今後、新たな付加価値サービスの追加や新規サービス事業者のサービス参加が可能で、サービス拡張・サービス連携に優れたプラットフォームである。
シンガポールでもキャリアの StarhubがDBS、MasterCard、EZ-LinkとともにNFC技術を活用した「Smart Wallet」サービス(一部、クーポンはバーコード対応)を2012年9月21日からスタートしたが、C-SAMのMTPを採用している。同サービスはシンガポールの政府も支援しており、短期間でシステムを構築することに成功したという。
2012年5月には、マスターカード・ワールドワイド(MasterCard)と提携し、アジア太平洋地域・中東・アフリカでモバイルWalletソリューションを提供すると発表した。シンガポールのSmartWallet以外にも現在アジア地域でいくつかのプロジェクトが動いているそうだ。また、2012年12月には、MasterCardとワールドワイド地域にて戦略的提携およびMaster Cardが資本参加を行うことを発表している。
「MasterCardが提供するPaypassプロダクトに興味のあるカード事業者や短期間でWalletソリューションを立ち上げたいサービス事業者に対しては、同社の『Master Card Wallet」サービスを提案しています。それ以外の国際ペイメントブランドを対応したい場合、弊社のプラットフォームをご活用いただき、自社ブランドで自社のサービスを展開することが可能です」(C-SAMジャパン ビジネスデベロップメント ディレクター 山下昌宏氏)
国内およびアジア太平洋地域への展開ではDNPと提携
国内では、最大手の印刷会社である大日本印刷(DNP)に対し、MTPライセンス締結およびモバイル上の決済やクーポン、ポイントなどの多様なアプリを一元管理し、これらにかかわる業務を支援するプラットフォームサービスを2012年7月から提供している。2012年11月にはアジア太平洋約30カ国を対象とした再販売(リセール)契約を締結。アジア太平洋地域に進出する日本企業を中心にサービスを提供する予定だ。
DNPとの提携の第一弾として、2013年1月から、表参道周辺の対象店舗などでジェシービーが「JCB モバイルWalletサービス」の実証実験を実施する予定である。
また、ヘルスケア分野では、Quest Diagnosticsのモバイルヘルスケアアプリ「Gazelle」が2012年の「CIO100アワード」を受賞。CIO 100アワードは、企業に競争上の優位性を提供し、成長を可能にする革新的な方法でITを活用している企業に与えられるソフトウェアのアワードで、同アプリは、健康診断や臨床検査結果の閲覧や家族との情報シェア、投薬の薬剤情報や投薬アラーム機能、ヘルスケア機器との連携等のサービスを搭載している電子健康手帳である。
国内では、C-SAMプラットフォーム上でヘルスケア向け付加価値サービスが展開できるように、ヘルスケア分野の取り組みを強化するソニーの「NFCヘルスケアライブラリー」にも対応している。
NFC・ヘルスケア以外にもQRコード、ジオフェンシングなどをサポート
FeliCaサービスもサポート
「弊社のプラットフォームは、さまざまなサービス事業者に利用されているため、いわゆる『Wallet』ではなく、『LIFESTYLE CONTAINER』と呼ばれています。決済だけではなく、送金サービス、政府関連や地域サービス、ヘルスケア、メディア、チケッティングなど、さまざまな分野で利用されています。サービス事業者が自社のサービスをユーザーのライフスタイル、利用シーンやシナリオに沿った形で展開できるようにNFC/FeliCa、QRコード、位置情報(ジオフェンシング等)、AR、バーチャルPOSなどのさまざまなテクノロジをプラットフォームに取り入れています」(山下氏)
例えば、米国のDiscoverは、C-SAMプラットフォームを活用したオファーサービスをNational Restaurant Associationに提供しているが、加盟店のインフラ対応がQRコード、バーコード、クーポンコードベースのため、加盟店のインフラ状況に合わせたコードがユーザーアプリ内で表示される仕組みになっている。今後、インフラ状況に合わせてNFCにも対応されていくという。
C-SAMのプラットフォームでは、「Walletサーバー」がサービス事業者のコンテンツサーバーに接続してWallet内で提供する各サービスアプリケーションを一元的に管理し、セキュリティ機能、通信、Wallet及び各種サービスのプロダクトライフサイクル管理などの基本機能をSDKにて提供している。クライアントアプリ開発用SDKは、マルチプラットフォームに対応している。
また、複数のサービスをセキュアに提供・配信し、段階的なサービス拡張や、国内外のC-SAMエコシステムプレイヤーとWallet内でサービス連携を行うことも可能だ。
「日本の市場は、ユーザーがFeliCaサービスやその他モバイルアプリでモバイルサービスの使い方をある程度経験しており、またサービス事業者のモバイル戦略もよく練られているため、ローンチしてからサービスとして成立するまでの期間が海外に比べて早いと考えています。今後は、日本のサービス事業者が構築したサービスを利用するユーザーが、海外の別のエコシステムのサービスを利用するといったサービス連携の仕組みを検討しています」(山下氏)
同社では引き続きサービス事業者がユーザーに対して利用価値の高いサービスを展開できるよう、新たなテクノロジに対応していき、ビジネスをサポートしていきたいとしている。