2014年1月7日8:00
世界各地で採用が進むジェムアルトのNFCサービス
ジェムアルト(Gemalto)は、NFC SIMやセキュアエレメント、TSM(Trusted Service Manager)のサービスをグローバルに展開している。国内でも3キャリアにMNO-TSMのサービスを提供しており、SP-TSMでは大手印刷会社と提携した。同社のサービスについて、ジェムアルト マーケティングディレクター モバイル・ファイナンス・サービス Dominique Brulé氏に話を聞いた。
NFCのSIMカード、MNO-TSM、SP-TSMで多くの実績を築く
日本のモバイル3キャリアにMNO-TSMサービスを提供
--まずはジェムアルト様のNFCサービス、金融ビジネスとの関わりについてお聞かせ下さい。
Dominique Brulé:NFCについては、NFC SIMの提供、MNO(モバイル・ネットワーク・オペレーター)およびSP(サービス・プロバイダ)の両TSMを提供しています。また、金融ビジネスについては、VisaやMasterCardに対し、セキュアなアプリケーションを提供しています。マーケットシェアについては定まっていませんが、NFCのSIMカード、MNO-TSM、SP-TSMのいずれもトップであると思います。
――TSMの海外での実績についてはいかがでしょうか?
Dominique Brulé:アメリカではジョイントベンチャーのISISのTSMで利用されています。また、銀行のChase、カードブランドのAmerican Express、欧州ではキャリアのVodafone、T-Mobileグループ、Orange、Telecom Italia などにサービスを提供しています。さらに、南米ではブラジルで採用されました。アジアではシンガポールのIDA(Infocomm Development Authority)が推進する国家プロジェクトで採用されており、SIMカードとTSM(SP/MNO)で大きなマーケットシェアを獲得しています。日本では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルにサービスを提供しています。
――香港ではFeliCaアプリケーション対応のNFC SIMを現地のオペレーターに提供しましたね。
Dominique Brulé:ICカードの規格としては、フランス等ではCALYPSO、米国ではMIFARE、日本や香港ではFeliCaを利用しています。我々としてはすでに存在している各チップに付加価値を与えるシステムを作りました。既存のシステムを生かし、アプリケーションをSIMカードにエミュレーションする形を採っています。香港で行われている実証実験ではFeliCaアプリケーションを搭載したSIMカードを現地のモバイル・ネットワーク・オペレータ(PCCW-HKT)に提供しています。
欧州では非接触リーダの設置台数が徐々に増える
日本はFeliCaをベースにNFCのSIMカードを開放する動きが加速?
――NFCの本格的な普及に向けては課題が多いと言われています。
Dominique Brulé:NFCについては、非常に大きな進歩がみられると思います。例えば、決済の読取端末の課題があるといわれていましたが、コンタクトレス(非接触)のインターフェースが増えており、ヨーロッパでは20~25%がNFCをサポートしています。この数が増えてくればさらに普及すると思います。すでに、ポーランドやイギリスでは端末の設置が進んでいます。
――例えば、「Smart Wallet」を提供するシンガポールではNFCを搭載したSIMカードのコストが課題になっていると言われていますが?
Dominique Brulé:NFCの展開については初期の段階であり、ボリュームが出てくればSIMカードのコストも下がると考えています。
――海外の場合は、SP-TSMとMNO-TSMなども含めたエコシステムの構築が難しいと言われています。
Dominique Brulé:TSMについては色々な構成があると言われています。一般的な構成としてはMNOが一カ所にあり、そこがセキュリティドメインの管理をしています。また、SP-TSMが別にあり、PINコードの入力など、ライフサイクルのマネジメントを行っています。
――今後のNFCビジネスについての目標は?
Dominique Brulé:NFCについては希望があると感じており、お客様によりよいサービスが提供できると考えています。これは支払いのサービスに関して必要なものであると理解しています。市場としては、エコシステムを構築してスムーズに物事が進んでいくようにしなければならないと思います。
――日本のマーケットについてはいかがでしょうか?
Dominique Brulé:日本は、FeliCaをベースとしたうえでNFCのSIMカードを開放していく動きが進むと思います。日本は非接触の技術として成熟しており、普及がさらに加速するでしょう。ジェムアルトとしても日本でエコシステムを構築していく方向で動いています。
※取材は「CARTES 2013」会場にて
香港「Octopus」で「モバイルFeliCa」をSIM上で実現
ソニーは、CARTES 2013において、香港のOctopus Cards Limited(八達通/Octopus)が、キャリアのPCCW-HKTと協力して実験を行っているモバイルを活用したNFC SIMによるチケットシステムのデモを行った。
Octopusカードは、日本のSuicaよりも早い1997年9月にスタートした乗車券/電子マネーサービスとなり、2,300万枚を超えるカードが発行されている。同実験では、PCCW-HKTのXperia6機種を利用して、希望者5,000名を対象に実施。スマートフォンにはジェムアルトの「NFC SIM」を搭載し、ソニーはFeliCaアプレットのライセンスをオクトパスに提供している。
これまで、国内のキャリアが提供するモバイルFeliCa ICチップは、携帯電話やスマートフォンに内蔵されるケースが多かったが、「今回はJavaの上にアプレットで載せているため、FeliCaとTypeA/Bを共存することもできます。また、GSMAで策定したSIMカードとNFCの接続の仕方を定めたSWP(Single Wire Protocol) の方式に則っています」と、ソニー プロフェッショナル・ソリューション事業本部 FeliCa事業部営業部 担当部長 竹澤正行氏は説明する。
日本のキャリアもグローバル標準であるSIMで提供するという話もあるため、今後はFeliCaチップを搭載したサービスの選択肢が大きく広がりそうだ。