2014年4月18日10:30
NFC対応SIMカードとアンテナを付けた「SIMPass」「SIMpass-SC」を提供
ソニーの「FeliCa」にも対応を予定
WatchData Technologiesは、セキュアなSIMカードに付属のアンテナを追加することでNFCサービスを提供可能な「SIMPass」「SIMpass-SC」を提供している。すでに中国やタイなどで実績があり、ソニーのFeliCaへの対応も発表されている。同社の取り組みについて、プロダクツ&ソリューションズ デパートメント テレコムビジネス ディレクター David Renno氏に話を聞いた。
新製品の「SIMpass-SC」は、アンテナがSIMカードの中に搭載
タイでは12万5,000人、中国では800万人が利用
――まずは、御社と決済ビジネスとの関わりからお願いします。David Renno:
弊社はスマートカード(ICカード)カンパニーです。ペイメントのアプリケーションをスマートカード、SIMカードに載せて提供しています。デュアル・インターフェースのSIMカードについては、「SIMpass」と「SIMpass-SC」を販売しています。新しいバージョンの「SIMpass-SC」については、アンテナがSIMカードの中に搭載されています。価格については、搭載されているアプリケーションなどにより異なります。
――SIMカードを提供する企業はほかにもありますが、他社との差別化についてお聞かせください。
David Renno:競合と違うところは、このSIMカードはセキュアエレメントおよびアンテナを搭載しています。インターフェースは、ETSIで標準化されたSWP(Single Wire Protocol)を採用しています。インフィニオンのチップを使っており、非接触のアプリをJavaの上に載せています。弊社ではOS(オペレーティングシステム)を開発してカードを製造しますが、アンテナの設計は自ら行い、製造は第三者に依頼しています。
――現在の実績はいかがでしょうか?
David Renno:すでに、タイと中国で実績があります。タイでは12万5,000人、中国では800万人が利用した実績があります。タイではバンコクなどのリテール、中国では地下鉄で利用されています。TSMのサーバを構築してダウンロードすることも可能ですが、中国の場合はほとんどインストールされています。
SIMについては、MNO(モバイル・ネットワーク・オペレーター)が購入してカスタマーに売るのが1つのビジネスとなります。
――ソニーのFeliCaへの対応も発表されていますね。
David Renno:FeliCaと契約を行っています。現状、SIMPass はFeliCaには対応していませんが、将来的には可能です。China Telecom(チャイナテレコム)にSIMカードを販売する際に、オクトパスと中国の交通機関で使えるようにするために、2つのアプリが必要となります。
年間100万個の販売を目指す
FeliCa対応も2015年までには実施予定
――NFCスマートフォンでサービスを提供する国では、SIMカードのコストも普及の妨げになっているという声もあります。David Renno:
SIMカードのコストだけが妨げの理由ではありません。10倍といっても0.3ドルのものが3ドルになっただけです。それよりも技術的な課題があります。端末の中にSIMを入れるとすぐに利用できると思う方もいるかもしれませんが、固定になっているのでチューニングできません。ユーザーは、SIMを装着した後に何回も決済して失敗するとフラストレーションがたまります。
また、MNO(モバイル・ネットワーク・オペレーター)と銀行、交通機関との利害関係です。銀行や交通機関が毎月支払う金額面なども課題となっています。
そして何より、エンドユーザー自体がそんなメリットを感じないことも挙げられます。本当にカードと一緒だったらNFCサービスを提供する必要はありません。
NFCの普及のために必要なことは、まずは面白いアプリケーションが挙げられます。例えば、銀行、決済、交通等のアプリケーションを、セキュリティを担保したうえで提供することが重要です。SIMカードの中のオペレーションはセキュアですが、端末とSIMカードの更新がセキュアではありません。エンドユーザーがセキュリティの問題がないと実感していないと普及しません。そして簡単にスマートフォンのアプリをダウンロードするように、SIMカードにアクセスできる必要もあると思います。
――NFCの世界ではHost Card Emulation(HCE)が注目されています。
David Renno:HCEは魅力的で革新を起こす可能性はあると思いますが、セキュリティ面の問題が解決されていません。HCEはソリューションではなくただのチャネルです。Googleはクラウド上でプラットフォームを提供しますが、ダウンロードした後に暗号化をどうするかがポイントです。
――今後の販売目標についてお聞かせください。
David Renno:年間100万個以上は発売したいですね。FeliCaへの対応も2015年までには行う予定です。
※取材は「モバイル・ワールド・コングレス」にて