2014年7月1日8:40
英国民の生活はカードでガード
Cash Less UK
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
英国紳士淑女のサイフから年々現金が少なくなっている。2012年の調査では、サイフにまったく現金をもっていない人の比率は20人に1人。5ポンド(約1,000円)以下の現金しか携帯していない人は3人に1人という驚くべき数字になっている。
日本人でサイフに1,000円以下の現金しかもっていない人は、いったいどのくらいの比率になるのだろうか。セミナーでたびたびきくのだが、全員が1,000円以上サイフに入れているという。大半の日本人は、サイフに現金がそこそこないと不安なのだ。
現金にかわって、英国人のサイフのメインとなっているのはカードである。デビットカードは10人に9人。クレジットカードは10人に6人が保有している。
両方をあわせた2013年取扱高は5,356億ポンド(約91兆円)で、英国GDPの35%を占めている。ちなみに日本のカード取扱高(クレジット、デビット、プリペイドのショッピング合計)は45兆円で、GDP比わずか9%である。
スーパーやガソリンスタンド、百貨店、専門店などの小売セクターにしぼると、カードの存在価値はさらに高くなる。小売セクター総売上に占めるデビットカードの比率は50%、クレジットカードは25%で、残り25%が現金や小切手となっている。
カードが生活の主役になっているのは、現金よりも便利で安全、しかもクリーンだからだ。
英国オックスフォード大学とMasterCardの調査によると、大半の紙幣には細菌がついていることがわかった。欧州の銀行が発行する紙幣には、平均で26,000個の細菌が付着している。これだけの細菌に触れると、健康を害すおそれがあるという。人の手から手へ転々流布するあいだに現金は汚れていく。いっぽうカードは自分の持物。店員の手に一瞬わたることがあるが、汚い手から手へわたることはない。
現金は知らない間に消えていく。これを英語でミステリースペンディング(Mystery Spending)という。欧州Visaの調査によると、英国人のミステリースペンディングは毎週33ポンド。ひとりあたり年間30万円弱にもなる。18歳から24歳の若年層では特にその傾向が強い。カードなら、いつ、どこで、いくら使ったかという利用履歴を残せ、あとでトレースできるという利点がある。
現金は盗難や紛失に弱い。まず自分の元に返ってこない。サイフやバッグにいつもたくさんの現金を入れて、持ち歩いていると狙われやすい。犯罪を呼込んでいるようなものだ。しかしカードなら安全。盗難にあってもカード利用をすぐ停止できる。
英国民には、カードが自分達の日常生活をガードしてくれているという意識はないかもしれない。が、デビットカードやクレジットカードが生活に根づいていることをみると、無意識にそういうメリットを感じているにちがいない。カードは生活をガードしてくれる心強い存在なのだ。