2014年8月20日8:22韓国の大手通信事業者KTのNFCへの取り組みは?モバイルウォレットサービス「MOCA」などさまざまなサービスを展開
韓国の通信事業者KT Corporation(KT)は、1981年に設立。現在、移動通信は約30%、ケーブルテレビは約27%のシェアとなっており、グローバルで№1の通信事業者になるというビジョンを掲げている。NFCについては、モバイルウォレットサービスとして「MOCA(モカ)」やスマートポスターのサービスを展開。また、日本のNTTドコモとアライアンスも行っている。
日本のNTTドコモや中国のチャイナモバイルと事業協力
「MOCA」は財布、決済、コマースの3つに分類
韓国の通信事業は、大手3キャリアが中心となっているが、「KTは3キャリアの中では最も歴史がある企業で、なかでも有線に強い」と KT マーケティンググループ データサービスビジネスユニット Kwang-Ryun Jeoung氏は話す。また、100人当たりの携帯の加入率は、「OECDアベレージ」よりも高く103%となっている。さらに、4G LTEの加入率も52%と高い数字を示している。
日本と比べると韓国の通信事業は競争が激しく、10年以上の回線契約者は5%以下となっている。また、韓国のモバイルマーケットは2011年を機に3Gが減り、4Gが増えているそうだ。
KTでは、子会社としては、BCカード、KTレンタル、KTスタイル、KTテレコップなど54の会社を抱えている。
NFCビジネスについても力を入れて展開。海外のキャリアとして、日本のNTTドコモや中国のChina Mobile Communications Corporation(以下チャイナモバイル)とアライアンスを行っている。
韓国では、MNO(モバイル・ネットワーク・オペレーター)だけではなく、流通、カード会社等、数多くの企業がウォレットサービスを展開しており、競争も激しい。KTでは、モバイルウォレットサービスとして「MOCA(モカ)」を展開している。KTのモバイルコマースは大きく分けて、電子財布の「MOCA Mobile Wallet(財布)」、決済に特化した「MOCA PAY」、eコマースの「MOCA Shop」の3つに分けられる。モカは「Money」と「Card」から付けられた名称だ。「MOCA PAY」は、USIM上にNFCアプリを書き込む方式で行っている。また、NFCのアプリケーションについてはプリリロードでスマートフォンに搭載している。
NFCで提供しているアプリケーションとしては、無料のクーポンが一番多いが、決済機能以外の付加価値サービスの提供は課題となっている。NFCスマートフォンは、交通利用が多いため、そこに合わせたマーケティングを行っているそうだ。
「MOCA Shop」では商品の紹介を行っているが、将来的にはスマートショッピング、スマートペイメントを目指すという。そのほか、NFC技術とは異なるが「Zoo Money」という送金サービスを提供している。
済州島でNFCスマートポスターを展開
ドアロックが可能な「Mobile Campus」サービスを提供
NFCスマートポスターの取り組みも行っている。韓国の観光スポットとして有名な済州島(チェジュド)では、NFCタグを設置し、利用者はスマートフォンをタッチして情報を得ることができるサービスを実施している。Kwang-Ryun Jeoung氏は、「単純に情報を見せるだけではなく、SNS機能と連携して旅行の足跡が残る機能も提供しています」と説明する。
また、カード券面にアーティストの情報を入れて販売。購入者は、NFCスマートフォンをカードにかざすと情報が閲覧可能だ。さらに、NFCスマートフォンをかざすとドアロックが可能な「Mobile Campus」サービスを提供している。
NFCスマートポスターではハブプラットフォームとしての展開も行っており、場所や時間帯に応じて情報の出し分けができるという。
「MWC 2014」に「NFC Media Pole」を導入
HCEはセキュリティ面での課題を指摘
そのほか、携帯通信事業者の業界団体となるGSMAの世界的なイベント「モバイル・ワールド・コングレス2014」に「NFC Media Pole」を導入した。NFC Media Poleは、NFCスマートフォンをタッチした来場者が情報を取得可能なサービスとなった。
なお、NTTドコモ、eBCardとは、eBCardが提供する電子マネー「Cashbee(キャッシュビー)」を、NTTドコモのスマートフォンで利用できるサービスを展開しており、すでに韓国市中の店舗やタクシーなどで利用可能だ。今後は、電車やバスでも2014年夏に発売されるNFC端末から対応予定となっている。KTでは、韓国人が日本に旅行などで訪れた際に、鉄道等で利用できるサービス等も検討していきたいとしている。
なお、KTでは、USIMを中心にNFCサービスを提供しているが、昨今ではHCE(Host Card Emulation)方式が注目されている。KT テレコム&コンバージェンス・ビジネス・グループ デバイスビジネスユニット Cho,YoungBin Ph.D.氏は、「HCE方式の場合、USIMよりもセキュリティ面での課題があります。また、取り扱えるカードの数も少なく、100以上利用できるUSIMよりも限定的です。ただ、モバイルペイメントの市場から考えると、セキュリティ面の課題が解決されれば、活性化させるために有効なツールになると考えています」と説明する。韓国は数年前からUSIMベースで発行しているカードが多いため、今後もそれは変わらないと見ているが、欧州など、他国に進出する際は可能性があるそうだ。
KTでは、決済を含めたNFCサービスを古くから展開してきたが、現在は再検討している最中であるそうだ。NFCはビジネスモデルとして成り立つには時間がかかるが、マーケティングツールとしてどのように活用するのかを見極めている段階であるという。
※本取材は2014年5月に行われました。