2015年6月15日7:00モバイルを活用した決済サービスに注力するVisaのアジアでの戦略は?「Visa payWave」のHCE対応、「Visa Checkout」、「Visa Direct」などを展開
国際ブランドのビザ・ワールドワイド(Visa)は、「Visa payWave」の「ホスト・カード・エミュレーション(HCE)」への対応、「Apple Pay」や「Samsung Pay」に対しての「Visaトークン・サービス」の提供、モバイルで便利に利用できる「Visa Checkout」の展開、送金サービス「Visa Direct」など、モバイルを活用した新たな決済サービスに力を入れている。Visaのアジアでのモバイルサービスの展開について、アジア・パシフィック エマージング・プロダクト・ソリューションズ ヘッドのVikram Modi氏に話を聞いた。
「Apple Pay」や「Samsung Pay」にトークンサービスを提供
オーストラリアや中国の金融機関でHCE採用
――まずは、Visa様にとって、現在のモバイルペイメント市場をどう捉えていますか?Vikram Modi:
ペイメント業界はエキサイティングな時代を迎えていますが、モバイルが消費者の行動を大きく変えると考えています。近年は、eコマース、ウェアラブルの技術革新が起こっています。また、モバイル市場は大きな革新を迎えていますが、2014年にバルセロナで開催された「モバイル・ワールド・コングレス2014」で、非接触決済サービス「Visa payWave」の「ホスト・カード・エミュレーション(HCE)」への対応を発表しました。HCEについては、その後も随時アップデートしており、モバイル決済サービスでは「Apple Pay」に加え、「Samsung Pay」等もリリースされました。キーテクノロジーの1つとして、「Apple Pay」や「Samsung Pay」では、トークナイゼーションが採用されています。最近では、時計型の「Apple Watch」も発売され、モバイルコマースやモバイルアプリケーションもどんどん進化しています。
加えて、Peer to Peerの支払いも挙げられます。まるで電話をかけるかのように、人から人への送金が行えます。モバイルでは、あらゆるデバイスでさまざまな技術がつながる“Connect”がキーになるでしょう。
――HCEを発表されてから1年以上が経過されましたが、クラウドベースの決済のアジアでの状況についてお聞かせください。
Vikram Modi:HCEを発表して以降、イシュア(カード発行会社)からの引き合いが多く、たとえば、オーストラリアのCuscal、中国のICBC(中国工商銀行)といった金融機関から関心を寄せていただいています。HCEは、トークナイゼーションとともに広がっていくと考えています。
――「Samsung Pay」は、米国に加え、韓国でもリリースされるそうですが、アジアのイシュアでトークナイゼーションに興味を抱く金融機関は増えているのでしょうか。また、HCEとトークナイゼーションの組み合わせは行われていますか?
Vikram Modi:Samsungは米国ではVisaと提携していますが、韓国では直接イシュアと提携しています。ただ、アジアの市場でこれからトークン化は重要なキーとなり、すでにさまざまな銀行が関心を示しています。また、「Visaトークン・サービス」はイシュアをサポートするサービスとなり、米国ではHCEとの連携が始まっています。
――たとえば、シンガポールや韓国ではSIMベースでのモバイルペイメントが展開されていますが、それに比べてHCEの魅力を金融機関はどのように捉えられていますか?
Vikram Modi:まずシンガポールでは、SIMカードを活用したモバイルペイメントにおいて、できることが限られています(※現状、シンガポール政府のIDAが主導するモバイルプロジェクトでは鉄道乗車はできない)。また、HCEに関心を抱く金融機関は多いですが、たとえば韓国では非接触決済が利用できる加盟店が少ないという課題もあります。
ただ、HCEであれ、SIMベースであれ、いろいろなアプリケーションが網羅されていますので、マーケットによって求められる需要は異なるでしょう。
ライアビリティシフトによりEMVコンタクトレス化が加速
オーストラリアでは対面取引の60%が非接触決済
――日本は「FeliCa」ベースのモバイルペイメントが展開されていますが、今後は「Visa payWave」などの非接触IC決済の普及も期待されています。また、NFCのモバイルペイメントが世界中で展開されていますが、すそ野が広がっている感触はございますか?Vikram Modi:
モバイルペイメントの世界では、今年の10月のライアビリティシフトを機に、EMV化が進むため、より多くのイシュア(カード発行者)がEMVコンタクトレスを利用したNFCモバイルペイメントに興味を抱くと思います。日本でもEMVコンタクトレス決済が進むでしょう。2020年の東京五輪に向けて、日本にも多くの外国人が訪れると思いますので、大きなビジネスチャンスがあります。ただ、ツーリストだけではなく、日本の生活者にも知っていただきたいですね。
――現状、アジア・パシフィックエリアで「Visa payWave」はどの程度広がっていますか? また、やはり一番利用されている国はオーストラリアでしょうか?
Vikram Modi:現在は、モバイルよりもカードで利用される比率のほうが多いです。ただ、これからはモバイル化が進むため、モバイル決済比率は伸びると思います。また、オーストラリアが最も利用率が高く、対面取引の60%で利用されています(カードも含む)。
「Visa Checkout」はオーストラリアでローンチ
「Visa Direct」も東南アジア等で展開
――eコマースでの支払いを簡易に、便利に行えるオンライン決済ソリューション「Visa Checkout」についてご説明ください。Vikram Modi:
「Visa Checkout」は、さまざまなeコマースサイトで利用することができ、モバイルデバイスでも利用しやすい仕組みとなっており、アジアではオーストラリアでのスタートが発表されています。
――Peer to Peerの支払いについては、展開はスタートされていますか?
Vikram Modi:「Visa Direct」という名称で展開しており、東ヨーロッパ、東南アジア等でローンチしています。アジアでは、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インドなどでスタートしています。利用者は、Visaブランドのカードさえ持っていれば、送金を受け入れることができる特徴があります。「Visa Direct」は、プラットフォームを通しての送金となり、Visaのアカウントに送られます。また、送金だけではなく、保険の支払いなどにも利用可能で、アプリケーションは多彩です。現在は、もう少し広い意味でのプラットフォームの構築を進めています。
――今後の取り組みについてお聞かせください。また、日本市場への期待についてはいかがでしょうか?
Vikram Modi:Visaは、デジタルプラットフォームがより簡単に利用できるというシンプルな戦略を立てています。言葉では簡単ですが、それを実現させるためには、プラットフォームの構築など、多くのことが求められます。また、デジタル化といっても「Visa payWave」、「Visa Checkout」、「Visa Direct」など、多くの要素を含んでいます。
日本については、マーケットも大きく、ビジネスとして可能性があると感じています。ただ、まだまだ現金が多く利用されており、世界のデジタル化が進む中で、日本もその波に乗れればいいと考えています。