2025年7月15日8:00
和田 文明
連載の第4回目は、インドネシアの中央銀行であるインドネシア銀行(Bank Indonesia)が主導する統一QRコード決済である“QRIS”について紹介してみたい。また、シンガポールやタイ、マレーシアなどアセアン諸国における統一QRコード決済についても併せて紹介してみたい。
インドネシアの金融包摂 <Index>
(1)インドネシアの金融包摂
(2)インドネシアのオープンAPI
(3)インドネシアのQRコード決済
(4)インドネシアの統一QRコード“QRIS”
(5)インドネシアのオルタナティブ(代替)信用スコアリング
インドネシアの中央銀行であるインドネシア銀行(Bank Indonesia)が主導して2019年に導入した統一QRコードの規格であるQRIS(Quick Response Code Indonesian Standard)は、異なる決済アプリ間での相互利用が可能で、中小規模の事業者に広く普及し、インドネシアにおける金融包摂やキャッシュレス化の推進に大いに役立っている。EMV QRコード規格に基づいたインドネシアの統一QRコードのQRISにより、マーチャント(加盟店)は1つのQRコードで複数の電子財布アプリに対応できるようになり、消費者の利便性も大いに向上している。
インドネシアでは、スマートフォンの急速な普及や、EC市場の成長に伴い、デジタルペイメントの需要が急速に高まり、その一方で、QRコード決済サービスが乱立し、加盟店は複数のQRコードを掲示する必要があるなど、非効率な状況であった。インドネシアの統一QRコードの規格であるQRISは、こうした状況を改善し、キャッシュレス決済の普及を促進するために導入されたものである。 |
(表)は、インドネシアの統一QRコードであるQRIS(Quick Response Code Indonesian Standard)の規格の概要を示したものである。
(表) 統一QRコードQRIS(Quick Response Code Indonesian Standard)の規格の概要
QRISの相互運用性 |
・QRISは、異なる決済アプリ間での相互運用を可能にし、消費者は自身の利用するアプリでさまざまな店舗やサービスへの支払いが可能となる |
QRISの利便性 |
・加盟店は1つのQRコードを掲示するだけで、複数の決済アプリに対応が可能 |
QRISの安全性 |
・QRISは、インドネシアの中央銀行であるインドネシア銀行の監督のもとで運用されており、一定の安全性が確保されている |
QRISと金融包摂 |
・銀行口座を持たない人々も、スマートフォンがあればペイメントサービスを利用できる |
各種資料より作成
インドネシアの統一QRコードであるQRIS(Quick Response Code Indonesian Standard)は、2019年の導入以降急速に普及しており、インドネシア国内の露店などを含む多くの店舗やサービスで利用可能である。また、中小規模の事業者を中心に導入が進んでおり、インドネシアにおける金融包摂の推進やキャッシュレス化に貢献している。近年、越境QRコード決済の取り組みも進められており、インドネシアを訪れる外国人観光客の利用も期待されている。2024年3月には、インドネシア中央銀行であるインドネシア銀行(Bank Indonesia)は、同国のQRコード統一規格であるQRISを活用した新たな非接触型決済(コンタクトレスペイメント)方式のQRIS Tapの導入を2024年から開始している。
インドネシアの統一QRコードであるQRISは順調に普及しているものの、一部地域では利用できる店舗やサービスが限られるなど、地域的な偏りがあるのも否めない。QRISを利用した詐欺などの犯罪も発生しており、セキュリティ対策の強化が求められるところである。今後は、より多くの人々がQRISを利用できるよう、普及の拡大とセキュリティ対策の強化が望まれるとこである。さらに、QRISは越境QRコード決済の取り組みを推進し、日本など国際的な利用の拡大を図ることが望まれるところである。
QRIS Tap
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