2015年7月3日7:38■東武百貨店10年間の運用から販売員やお客様がより使いやすい端末に刷新
東武百貨店では2004年にICクレジットカード対応を開始、携帯型のPOS端末も導入しました。また、2013年にはPOSのリプレイスを行い、販売員やお客様がより使いやすい端末やアプリケーションを実現しています。
2013年2月から端末を順次切り替え
東武百貨店は東武鉄道グループに属しており、東武百貨店の池袋店、船橋店、東京ソラマチ店、東武宇都宮百貨店の宇都宮店、大田原店、栃木市役所店と、2社6店舗を展開しております。製品やアプリケーションは、運用を通してお客様、販売員から、教えていただいたことをお返しすることを意識して第二世代の端末に切り替えました。他の百貨店の情報システム部門は、売り場から離れた場所に位置するケースも多いですが、東武百貨店の池袋店は、情報システム部と売り場からの距離が非常に近いです。たとえば、機械が故障したり、問題が発生した際は、情報システム部のスタッフが売り場に出向いて対応できます。この売り場との距離の近さは、利用現場を直接知ることができることであり情報システム部は、これをとても大切にしています。
ICクレジットカードの割合は、開始した10年前は2割でしたが、2015年は7割に近づくと思われます。またPIN入力の比率もここ数年6割弱で推移していましたが、今はこの6割を超えました。
5~6年運用しても問題ない端末に作りこむ
ICクレジットカード化は時代の趨勢
クレジットカード上のICチップとやりとりして、お客様に暗証番号を入力していただく端末は、携帯POSとして使用している無線タイプと、POSにつないで使う有線タイプがあります。無線タイプのアプリは東芝テック、ハードはキヤノン製となっており、有線タイプはハード・アプリともに東芝テック製となっています。いずれもEMVやPCI PTSといった規格や基準に基づいたセキュリティ対応を実現しています。今回の切り替えを行うにあたり、10年間ICクレジットカードに向き合ってきて、お客様や販売員のためには「こうあるべきだ、こうして欲しい」内容を少なからず製品に入れてほしいという思いがありました。
たとえばハード面では、暗証番号入力時のお手元隠しとなる「フタ」を取り付けました。そのフタは開けやすいようにスリットを入れ、開けた時の角度の調整も行いました。また保守性を考えて、フタが壊れても、本体が影響を受けないように着脱方式にして――といった要望を出しました。また、アプリケーション面では、お客様の面前で端末を操作することが多いので、アラーム音といえども優しい音色を選びました。販売員が分かり易く、操作しやすい表示にしていただき、各種の機器的制約をソフトでカバーできるようなアプリケーションを意識して、5~6年後でも満足してもらえることを目指しました。
2013年の切り替え前に、2004年当時と同様に、改めて全てのカード会社と「総合確認試験」を実施しました。約10年ぶりとなる新しい端末とのテスト依頼に、各社濃淡がありました。中にはICカードでの処理に対しシステム的な設備投資を継続して行っていて、今回の試験の時に、多くのテストパターンを持ち込んで、試験をしていただいたカード会社もありました。
2004年の導入当初は、“なぜ食料品売り場で暗証番号を入力しなければならないのか?”というご意見をいただいたこともありましたが、今後ともICクレジットカード化に向かうと考えており、この流れは間違いではなかったと思います。
東武百貨店の情報システム部としては、売り場の支援力やサポート力を向上しつつ、売り場やお客様からいただくICクレジットカードの運用状況を、メーカーやパートナーの皆様にお伝えし、よりよい形になっていくことを希望しています。また、世の中的にもICクレジットカード化を促進させる発表が出始めており、今後ともその流れが進んでいくと考えています。
※本記事は2015年3月12日に開催された「ペイメントカード・セキュリティフォーラム2015」の東武百貨店 情報システム部 部長 井上直樹氏の講演をベースに加筆を加え、紹介しています。