2015年8月3日9:08
電子チケットサービス「PassMe!」の展開でPayPalと提携
情報収集、チケット購入、施設でのチケット提示と入場までをスムーズに
ジェイティービーとPayPal Pte. Ltd.(ペイパル)は、7月23日から、日帰りレジャーや週末のおでかけ時の情報収集、チケット購入、施設でのチケット提示と入場(認証)までを、すべてスマートフォン上で完結させることができる電子チケットサービス「PassMe!」の提供を開始した(池谷貴、Toshie Asakura)。
レジャー市場初の電子スタンプ活用の電子チケットサービス
2019年度までに取扱額80億円を目指す
「PassMe!」では、遊園地・テーマパークなどのレジャー施設や、水族館・美術館・動物園などの文化施設、 飲食店など約500種類のチケットを用意(2015年7月23日時点)。
「PassMe!」は、利用者の週末や休日のお出かけを新鮮な情報やお得な前売りチケットで応援するサービスで、JTBにとっては旅行以外のレジャー市場に向けた新たな挑戦、新規事業となる。同サービスは、PayPalとの提携により実現した。
これまでJTBは、旅行前の交通の切符や宿泊の手配を中心に顧客接点を築いてきた。また、旅行中の体験や観光での利用者との接点の拡大をスマホアプリや他社との提携によって実現している。一方、日常に近い週末や休日のお出かけを中心とするレジャー市場については取り組みが遅れていたそうだ。2013年の市場規模3,130億円に対し、89億円の販売額(シェア2.8%)となり、特にオンライン販売への移行が課題となっていた。この要因としては、紙チケットを中心としたオペレーションでは、オンライン販売への移行に限界があり、新たな仕組みの導入はサプライヤーにとって複雑でコスト負担が必要となる。JTBはこれらの課題をコト社およびエム・フィールド社(MF)が開発した電子スタンプシステムをスマートフォンに特化したレジャーチケットオンライン販売システムに活用することにより解決したという。
レジャー市場では初となる電子スタンプを活用した電子チケットサービスの全国展開により、2019年度までにサプライヤー数5,000件、商品数1万5,000件、取扱額80億円を目指すそうだ。
会員登録から決済までを一度のログインで可能
訪日観光に対してもJTBとPayPalで取り組む
この計画を実現するために強力なパートナーとして提携したのがPayPalであるという。ジェイティービー グループ本社執行役員 事業創造部長 鈴木雅己氏は、「スマートフォンに特化したオンラインサービスを利用者が、より簡単に、より安全にご利用いただくためには、より簡単でより安全なログインと決済を提供しているパートナーとの連携が必須となります。そのサービスを15年以上、世界2,300の国と地域で提供し、すでに1億6,900万人のお客様が利用されている、まさにグローバルスタンダードであるPayPal様とのパートナーシップの実現が、本計画の達成に不可欠と考え、提携をお願いしました」と説明する。
今回、PayPalを利用して、会員登録から決済までを一度のログインで済ませることのできる仕組みは、旅行業界においては国内初の事例となるそうだ。鈴木氏は、「これらの取り組みによって、レジャーを通した地域活性に貢献するとともに、訪日観光に対しても両社で取り組んでいきたいと考えております」と意気込みをみせる。
鈴木氏は、記者会見の前、「PassMe!」により、電車内でビアガーデンチケットを予約してPayPalで決済を済ましたそうだ。「カードを出さずに決済ができたので簡単で便利でした」(鈴木氏)
続けて、PayPal東京支店カントリー・マネージャー、エレナ・ワイズ氏が登壇。ワイズ氏は、「PayPalはIDとパスワードだけで会員登録や購入が可能なデジタルワレットを提供していますが、最大の特徴は、安心と安全です。皆さんのクレジットカード決済をより安全に、より便利にできます。たとえば、不正利用を防ぐこと、クレジットカード情報をお店と共有せずに決済ができるため、情報漏洩があっても守られます。万一不正使用にあっても、PayPalが被害額を保護します。JTBのような日本を代表する企業と提携を結べたことは光栄です。『PassMe!』をきっかけとして、訪日観光などのさまざまなサービスやビジネスにおいて今後もご一緒したいと考えています」と、日本語で語った。
参加加盟店は導入や運用コストが不要で参加可能
購入チケットを友達や家族にプレゼントできる
次に、JTB 事業創造部 企画開発担当部長 花園聡一郎氏から、「PassMe!」の特徴が説明された。「PassMe!」の利用者は、お出かけ先を簡単に探して利用できる、家族や友人にチケットをシェアすることが可能だ。参加加盟店にとっては、導入や運用のコスト0円で参加でき、施設やイベントの情報をお客様に発信でき、利用者を知ることができるメリットと機能を提供するという。
「PassMe!」の特徴の1つとして、トピックス、ニュースの配信機能が挙げられる。通常の検索機能に加え、利用者がお気に入りに登録した施設の最新情報やJTBが取材したトピックスをLINEを通じて発信し、休日のお出かけ先をレコメンドしていく。将来的には、居住地周辺のお出かけニュースを実現したいと考えているそうだ。
また、「PassMe!」により、事前に購入してもらうことで、お得なチケットを購入できる。商品の割引率は平均で10%、商品によっては最大70%割引もあるそうだ。シルバーウィークを目標にセット型回数券、複数の施設から選択が可能なチョイス型の提供を予定している。
また、あらかじめ購入したチケットをLINEやメールで事前に家族や友人に配布することができるため、ゲートの前で全員が揃うのを待つ必要がなくなるそうだ。記者会見後には、記者にドリンクチケットが配布されたが、お友達にシェアする機能を活用したそうだ。
そして、PayPalとのパートナーシップにより、チケットをお得に、簡単に、安全に買えるサービスへと進化した。PayPalには、高度な不正検知システム、年中無休のカスタマーサポート、買い手保護制度(セラープロテクション)といった点が揃っているのも魅力だったそうだ。
電子スタンプはメンテナンスや難しい教育なく簡単に利用可能
“認証”の仕組みにはMFのHiTAP技術を採用
電子チケット機能により、利用者は現地でチケット購入の列に並ぶ必要はない。手元のスマートフォンに電子チケットを表示させ、係員は画面に表示された施設名、チケット名、人数を確認し、電子スタンプを押印する。これにより、瞬時に認証とチケットの消込が可能となる。係員にはスタンプを配布。係員は電子スタンプをスマートフォンに押すだけでチケットのもぎり同様の作業が可能となる。
電子スタンプは、電池や電波などに関係なく利用でき、メンテナンスも不要だ。また、「スタンプを押すだけのため、教育のコストも発生しません」とJTB 事業創造部 企画開発担当マネージャー 岩楯隆志氏は説明する。
なお、電子スタンプによる“認証”の仕組みには、MFのHiTAP技術が採用されている。「HiTAP」は、静電マルチタッチ技術を応用したブロック状デバイス 「Ocelly(オセリー)」をスマートフォンの画面にタッチすることでスタンプの押印ができる、デジタルスタンプサービスとなる。併せて、電子チケットの発券・消し込み、およびバックエンド側の業務システムの構築にもMFが担っているそうだ。