インドネシアの大手鉄道会社KCJがFeliCaによるIC乗車券を採用した理由とは?

2015年12月1日8:00

将来的に地下鉄との相互利用、電子マネーとしての展開も見据える

インドネシア・ジャカルタ首都圏をカバーする鉄道システムを運営するPT.KAI COMMUTER JABODETABEK(KCJ)は、従来から提供するTypeAのIC乗車券に加え、2015年2月からソニーの「FeliCa」を利用したIC乗車券を併用している。将来的には、地下鉄の「MRT」との相互利用、電子マネーとしての活用も見据えているそうだ。

IC乗車券の開始により無賃乗車減少などで成果
2019年までに1日120万人の利用を目指す

KCJでは、2013年7月から、ISO/IEC 14443 TypeAを利用したMulti trip(マルチトリップ)カードを発行している。自社が発行したカードは鉄道のみの利用となるが、インドネシア大手銀行のMandiri発行のカードは電子マネー「eマネー」やトランスジャカルタ、パーキング、高速道路でも利用できる。また、BRIは電子マネー「BRIZZI」、BCAは電子マネー「Flazz」の機能も付帯されている(いずれも乗車券の機能とは別で相互利用はできない)。

また、「シングルトリップ(Single trip)」と呼ばれる1回限りの使いきりカードもあり、これもTypeAの規格となっている。

非接触ICカードを利用した鉄道システムの運用前、乗客は切符を窓口で購入して乗車していた。しかし、偽造チケットが発行されたり、日付を改ざんされる可能性もあった。また、チケットを回収する作業員の手間もかかっていたそうだ。加えて、社内での不正を防止する目的もある。

KCJ コーポレート・コミュニケーション アシスタント・マネージャーAdli Hakim Nasution氏
KCJ コーポレート・コミュニケーション アシスタント・マネージャーAdli Hakim Nasution氏

KCJでは、日時で80万人の利用があるが、2019年までに120万人の利用目標を掲げている。ただ、従来の仕組みでは難しいと考え、2011年から2013年までIC乗車券のトライアルを実施し、その成果を受けて非接触ICカードを利用したシステムの本格サービス開始に至った。それと同時に紙の切符は廃止し、IC乗車券のみの運用となっている。

サービス開始後のIC乗車券の利用は徐々に増加。従来はチケットを買わずに乗車する人もいたそうだが、現在はほとんどいないという。無賃乗車については、乗務員がモバイルリーダーを持って巡回し、IC乗車券のチェックを実施している。

TypeAのカードに比べて2倍の速度で改札を通過可能
カードに加え、リストバンドやシールタイプの乗車券も提供

ソニーとの展開は2015年2月からスタート。FeliCa ICカード技術は、日本の「Suica」や香港の「Octopus」等で採用されている。また、インドネシアでは、PT Mass Rapid Transit Jakarta 社運営のMRT(地下鉄)を建設中だが、「将来的には機器を共通して利用できればメリットがある」とKCJ コーポレート・コミュニケーション アシスタント・マネージャーAdli Hakim Nasution氏は説明する。

FeliCaチップが搭載されたICカード
FeliCaチップが搭載されたICカード

FeliCa導入後も従来のTypeAカードは継続して利用が可能だ。改札機には、FeliCaのSAM(セキュア・アクセス・モジュール)を挿して、従来のシステムの大幅な改修なく、FeliCaを利用できるようにした。

「FeliCa導入のメリットとして、改札通過スピードの向上が挙げられる。TypeAは、1秒弱かかっていたところ、FeliCaは0.5秒程度で通過が可能です」(Adli Hakim Nasution氏)

また、カード型だけではなく、リストバンドやシールタイプのスティッカーも展開。リストバンドは、サービス開始時に記者や招待者に対し、配布している。今後は一般ユーザーにも使ってもらえるように準備している。インドネシアは二輪の利用者が多いため、リストバンドのニーズは高いとみている。スティッカーは、スマートフォンに添付して利用可能だが、人によってはバッグや財布に張り付けて使用する人もいるそうだ。

リストバンドによる入場のイメージ
リストバンドによる入場のイメージ

また、KCJではさまざまなカードデザインを投入することで、繰り返しカードを利用してもらうように努めている。たとえば、5月の教育日に開始したカードでは、優勝者が英語コースの奨学金がもらえるようにした。また、断食と断食明けに公開したカードの購入者はメッカまで巡礼できる。そのほか、購入者に抽選でバリ島旅行をプレゼントするカードも発行された。

非接触ICカードへのチャージは、駅の窓口で実施。FeliCaとの提携以前は、コンビニでのチャージも検討されたが、現在はそこまで至っていないという。

なお、自社発行のカードについては50,000ルピアで販売し、利用者は30,000ルピア分の乗車が可能だ。また、銀行が発行するカードは、各行のプロモーションにより販売金額が異なる。チャージ金額の上限は、中央銀行の規制で1,000,000ルピアに制限されているそうだ。

改札の仕組みは、Telkom Indonesia(テレコムインドネシア)と連携し、IC乗車券に関連するすべての機器は共同で投資している。また、各駅の保守についてもテレコムインドネシアからスタッフを派遣して、運営しているそうだ。

シールタイプのスティッカー
シールタイプのスティッカー

 

複数回利用できるマルチトリップの利用を促す
駅構内の店舗での電子マネー提供も視野に

現在の利用を見ると、平日は7割の乗客が往復でカードを使用している。残りの3割がシングルトリップの利用となる。週末はシングルトリップの利用が8割となり、窓口で行列ができてしまうのが課題となっている。今後は、「シングルトリップの利用を減らし、複数回利用できる乗車券(マルチトリップ)を普及させたい」とAdli Hakim Nasution氏は意気込みを見せる。これにより、窓口に並ばず、なおかつ現金を用意することなく乗車することが可能だからだ。

また、日本のSuicaは鉄道乗車に加え、市中の加盟店での買い物が可能だが、KCJのカードはそこまでは至っていない。インドネシアには、さまざまな電子マネーが乱立しているが、財布の中からカードを探すのは面倒なため、リストバンドで買い物できれば便利であると期待している。Adli Hakim Nasution氏は、「駅などにある店舗での支払い環境を早く整えていきたい」と構想を口にする。ただ、本格的に導入する場合は中央銀行の規制が障壁となるが、早く促進して欲しいという意見をもらっているそうだ。

また、ソニーはインドサットやテレコムインドネシアとの提携を発表しているため、将来的にモバイルでの利用も期待される。なお、インドサットはNFCサービス「D-Tap」を開始する予定となっている。

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