2016年2月16日8:00
デビットカードやプリペイドカード発行でANAカードの強化も図る
ANA(全日本空輸)では、ANAのフライトや生活シーンでマイルが貯まる「ANAマイレージクラブ」を展開している。継続して会員数は伸びているが、近年は数多くのマイル・ポイントサービスが展開されているため、より付加価値の高いサービス展開を目指している。また、クレジットカード機能付きの「ANAカード」に加え、デビットカード、プリペイドカードの発行、海外向けクレジットカードの強化を図っている。
「ANAマイレージクラブ」は2,900万枚を発行
さらなる会員との接点強化を目指す
「ANAマイレージクラブ」は、2015年12月末現在、2,900万枚が発行されている。キャンペーンなども含め、積極的に会員サービスを告知しているが、ここ1年はサービスの大きな枠組みは変更していないそうだ。また、貯まったマイルを電子マネーの「楽天Edy」に交換するプログラムも引き続き好評だ。ただ、他のエアラインとの競争も激しくなっている点、市場には数多くのポイントプログラムが乱立しているため、さらなる会員との接点強化が必要であると認識している。
「ジャパンマーケットの中で多くのマイル・ポイントが乱立する中で、私どもの会員になっていただける方との関係を密にして、お客様のニーズに合ったプログラムにしていくことが重要であると考えています。航空会社のマイルは夢もあり、メリットも大きいので人気はありますが、これだけいろいろなプログラムが出てくる中で、他業種のポイントの中で埋もれない、メインのプログラムとしてご利用いただくためにはさらなる工夫が必要です」(全日本空輸 マーケティング室 ロイヤリティマーケティング部 リーダー 眞野知彦氏)
ANAマイレージクラブは、航空利用が基本となるが、「それ以外のお客様が飛行機に乗らない日々の生活の中で関係を如何に作っていくのかが商品競争力の強化につながります。お客様のニーズがどこにあるのかを研究しながら展開したいです」と眞野氏は意気込みを見せる。例えば、定期的にANA便をビジネスで利用する人が、仮に退職などで頻繁に乗らなくなった際、関係性を維持する取り組みは大切であると考えている。
時の証として「ANA Million Miler プログラム」を展開
ロイヤリティユーザーへの取り組みも強化
ANAでは、マイルをポイントとしてみたときの魅力付けを意識しており、2012年10月からは、航空利用に近いサービスにおいて、マイルが活用できる環境を整備した。また、貯まったマイルを「ANA SKYコイン」に交換できるサービスを展開。ANA SKYコインは、facebookやTwitterでテーマに投稿したり、提携ショップのサービスの利用でも貯まるサービスを行っている。さらに、他社のポイントサービスから交換が可能だ。1コイン=1円として、10コインからANAの航空券や旅行商品などに交換することができるため、利用の敷居を下げることができたが、「さらに使いやすいサービスにしていきたい」と眞野氏は話す。
ロイヤリティユーザーへの取り組みも強化しており、2015年10月1日から、ANA運航の国際線ファーストクラス利用者に、羽田空港における乗り継ぎサービスにてLEXUS車を用意。国内線と国際線ターミナル間をよりスムーズに移動してもらえる日本初の乗り継ぎサービスを開始している。
また、長きにわたりANA便を利用しているユーザーに対しては、これまでの“時の証”として伝統工芸を織り交ぜたオリジナルネームタグを順次発送する「ANA Million Miler プログラム」を展開。対象は、ANAグループ運航便の搭乗で50万、100万、200万ライフタイムマイル(LTマイル)に到達した会員、もしくはANAグループ運航便およびスターアライアンスを含めた提携他社便の搭乗で100万LTマイルに到達した会員となった。
なお、ANAでは、以前はANA便に搭乗していたが、最近利用されていない会員についてのワン・トゥ・ワンの取り組みも行っており、一定の効果はあるそうだ。眞野氏は、「会員の方々に再びご利用いただくのは我々の資産でもありますので、さらなる対策を行っていきたいです」と口にする。
カードが不要の「ANA QUICPay+nanaco」を発行
「ANA VISAプリペイドカード」の会員募集を開始
クレジット機能付きカードについては、三井住友カード、JCB、三井住友トラストクラブ、アメリカン・エキスプレス各社と提携し発行している「ANAカード」と、提携パートナー企業の会員カードにANAマイレージクラブ機能を搭載したカードを展開している。
JCB、セブン・カードサービスとは、非接触決済ツールとして、「ANA QUICPay+nanaco(エイエヌエイ クイックペイプラスナナコ)」を共同開発し、2015年4月1日から発行している。財布からカードを取り出さずに、予約・購入・座席指定を済ませた利用者が空港で搭乗手続きをせずに直接保安検査場に進むことができる「ANAのスキップサ-ビス(国内線)」、非接触決済を利用できるサービスとして支持されており、第二弾のサービスも検討している。
また、クレジットカード以外のカードとして、「ANAマイレ-ジクラブFinancial Pass Visaデビットカ-ド」を2015年1月20日から発行。Visaデビットカード機能、銀行キャッシュカード、ANAマイレージクラブ機能の3つの機能を付帯した初のカードとなった。
さらに、三井住友カードと提携し、プリペイド(事前入金型)決済機能付ANAマイレージクラブカード「ANA VISAプリペイドカード」の会員募集を2016年1月15日より開始した。入会金・年会費無料の同カードは、<チャージ限定型>と<オールチャージ型>の2種類を用意。<チャージ限定型>は、ANA VISA/マスターカード会員の13歳以上の子供が利用でき、チャージは申込み者(保護者)のANA VISA/マスターカードに限定される。利用の都度、利用情報がメール通知されるため、子供への小遣いとして、一人暮らしや海外留学など、離れて暮らす家族への仕送りにも使用可能だ。
「CTBC ANAカード/中國信託ANA聯名卡」の利用が好調
パートナーとの連携強化で付加価値の高いサービスを目指す
今後は、日本在住者に加え、海外の会員との関係をさらに強化していきたいとしている。ANAではすでに米国、中国、香港、台湾で提携クレジットカードを発行している。2014年12月2日から、台湾最大手の中国信託商業銀行と提携し、「CTBC ANAカード/中國信託ANA聯名卡」を発行。JCBブランドを付帯した同カードは、非接触型ICの『悠遊(ゆうゆう)カード』機能を搭載しており、台湾の日常生活でANAのマイルが貯まるカードとなっており、「非常に多くの方にご利用いただいています」と眞野氏は笑顔を見せる。今後も日本を訪問した際にどのようなベネフィットを求めているのか、また海外現地での魅力付けを含め、提携カードの発行を検討していきたいとしている。
ANAでは、航空利用はもちろん、日常生活の中で便利に利用してもらえる展開を強化していきたいとしている。眞野氏は最後に、「ここ数年、数多くのポイントプログラムが乱立して、かつ航空業界ではない主要プレイヤーが多い中、ANAマイレージクラブのニーズに合ったパートナーとの連携を図り、お客様にとって価値の高いプログラムにすることが生命線だと考えています」と語った。