2016年10月19日8:11
利便性の高い商品として沖縄でのキャッシュレス化を促進
琉球銀行は、2015年10月から、「りゅうぎんVisaデビットカード」を発行している。同カードは、利用金額に応じたキャッシュバック特典を受けられ、カード種類もキャッシュカードとの一体型カード、デビットカード単独の単体カードをそれぞれ用意している。発行開始から1年が経過したが、順調に会員数と取扱高は伸びており、デビットカードの商品性は消費者に受け入れられていると実感しているそうだ。
単体型、一体型の6種類のカードを発行
年間3万枚の発行目標は達成へ
「りゅうぎんVisaデビットカード」は、世界中のVisa加盟店で利用でき、即時でカードに紐付く琉球銀行口座から利用額が引き落としされる。カードの種類は、キャッシュカードとの一体型カードが3種類、デビットカード単独の単体カードが3種類と、6パターンから選択可能だ。
琉球銀行 営業統括部 営業企画課 主任 松原弘樹氏は、「一体型、単体型それぞれに一長一短あると考え、お客様にご選択いただくことを目的として両方を発行しています。一体型だとキャッシュカードやデビットカードがスマートに持ち歩けます。一方で、海外に行くと、カードを提示したときにレジ裏で決済されるケースもありますので、キャッシュカードとの一体型は不安という声もありました」と説明する。発行後、6種類のカードは満遍なく、どのカードも選択されている。
琉球銀行では、デビットカードは将来的に国内で普及する可能性があると考え、10年以上前から着目していた。実際に発行を決めてから1年半強の開発を経て商品化に至ったが、開発に向けては、商品性の決定、システム会社への接続、外部委託先との調整などが必要だった。国際ブランドは、海外を含めた加盟店数が最も多い点が決め手となり、Visaを選択した。
当初の発行枚数は年間3万枚を目標としていたが、「計画を上回るペースで発行が進んでおり、しっかりとその商品性が理解され、お選びいただいています」と松原氏は微笑む。既存の口座利用者はもちろん、新たに口座開設してデビットカードを申し込むケースも多い。
月間の平均利用単価は4,000円強、月1回以上の利用が約30%
海外での利用も想定以上に進む
利用者の傾向として、スーパーマーケットやコンビニなど、日常での支払いで多く利用されており、グループで発行するクレジットカードとの棲み分けはできているそうだ。また、月間の平均利用単価は4,000円強。琉球銀行では、日常の支払いで便利に利用できることを訴求しているが、月に100回以上利用する人もいるなど、着実に浸透している実感があるという。
松原氏は、「取扱高、決済件数も想定以上の数値となっており、月1回以上の利用が約30%、年間で約60%の稼働率となっています」と話す。「りゅうぎんVisaデビットカード」は、利用金額の0.2%を半年ごとに口座へ自動的にキャッシュバックする特典を付帯しているが、それに加え、入会促進と稼働率向上に向けた取り組みとして、2015年10月から12月に「作って使ってもらっちゃおうキャンペーン」を実施。新規でカードを申し込んだ人に500円、3カ月以内に5,000円以上利用した人に500円をキャッシュバックする取り組みを行ったことが、商品性を理解してもらうことにつながった。
具体的な利用者の分析はこれからだが、「若年層はもちろん、シニア層の方にもご支持をいただいています。沖縄はご高齢の方が多いので、財布を出して小銭を取り出すよりもスマートに支払いが可能です」と松原氏は口にする。
また、国内に加え、海外での利用者も想定以上に多く見受けられる。たとえば、沖縄は海外への留学者が多いが、短期留学やワーキングホリデーの際に親が子供にカードを持たせて、お金の管理をするといった使われ方がされている。
カードの魅力を高めるサービスを検討へ
法人デビットや非接触機能搭載なども検討
なお、国内特有のインフラ面の課題もあり、「りゅうぎんVisaデビットカード」では、携帯電話、公共料金、ガソリンスタンドなどで利用を制限している。年会費は通常500円(税別)だが、年間5万円の支払いで年会費が無料となるため、「お客様の声としては、生活費を支払う中で固定費的に年会費を無料にしたい想いはありますので、トータルリスクを考えて、検討していきたいです」と松原氏は述べる。
沖縄では「りゅうぎんVisaデビットカード」のテレビCM、ラジオCMも放映。VisaのテレビCMも沖縄で放映されていることから、生活者への認知は日増しに高まっている。
カードのプロダクトのさらなる広がりとしては、法人デビット、Visaの非接触決済サービス「Visa payWave」についても注目しているが、「銀行員としてではなく、お客様目線からどういうサービスが望まれているか、検証が必要」としている。さらに、決済データを活用したCRMにも積極的に取り組む方針だ。
また、ここ数年で金融を取り巻く環境は変わっており、スマートフォンとの連携をはじめ、新たなサービスも検討を進めている。
「当行では、新たな取り組みにチャレンジする銀行という自負があり、新サービスを積極的に導入しています。Visaデビット以外にもiPadを活用した業務支援システム、行員がスマホを活用するなど、もともと行っていたサービスがFintech(フィンテック)として注目されるようになったというイメージです。従来の銀行の枠から突破して、新たなステージを目指さなければいけないという共通認識を持っています」(松原氏)
琉球銀行では、給与振込等のご指定で「Tポイント」を付与する取り組みを実施。また、沖縄エリアで稼働率の高い楽天Edyの入金機を設置する取り組みを行っている。クレジットカードについては、グループのりゅうぎんDCカードとOCSカードを中心に展開しているが、「りゅうぎんVisaデビットカード」を自ら発行することにより、リテール戦略の強化を図る方針だ。
また、「りゅうぎんVisaデビットカード」の先行投資については、計画で5年、赤字の解消は8年で試算しているが、「投資部分は早期に吸収できる期待はあります」と松原氏は話す。
「カードの利便性で売れる商品である」実感は日増しに高まる
沖縄のリーディングバンクとして新たな決済環境を構築へ
発行から約1年が経過したが、「カードの利便性で売れる商品である」という実感は日増しに高まっている。今後もこれまで同様にそのメリットを訴求することで、さらなる利用活性化につなげていく方針だ。松原氏は、「たとえば、取扱高を増やす取り組みとして、地域の小売店、加盟店、ポイント連携などは図っていく必要もあるかもしれません」と構想を口にする。
沖縄でのカード決済は、2007年以降、観光振興などを受け、高い成長率が続いている。近年、大型施設ではカード決済環境が整ってきたが、個人商店などはまだ開拓の余地がある。そのため、今後もカード加盟店の広がりとともに、「りゅうぎんVisaデビットカード」の決済もさらに伸びるとみている。
松原氏は最後に、「今後も『りゅうぎんVisaデビットカード』は年間3万枚の発行をベースに取り組んでいきたいです。当行は沖縄のリーディングバンクとして、デビットカードによるキャッシュレス化に沖縄県内で初めて取り組んだ銀行でもありますので、誇りを持って、新たな決済環境を作っていきたいです」と語り、笑顔を見せた。