2016年12月26日12:43
日本クレジット協会(JCA)は、平成28年度「クレジット取引におけるセキュリティ対策推進事業」を実施する補助事業者の採択事業者を発表した。採択事業者は、シジシージャパンおよびエス・ビー・システムズ、一般社団法人日本ホテル協会および三菱UFJニコスとなる。
政府は今臨時国会に、クレジットカードを取り扱う販売業者に対して決済端末のIC対応化及びカード番号等の適切な管理等のセキュリティ対策を義務付ける「割賦販売法の一部を改正する法律案」を国会に提出した。同法案は、11月17日に衆議院を全会一致で通過し、12月2日に参議院においても全会一致で可決されて成立し、同月9日に公布された。
同事業は、改正割賦販売法の円滑な施行に向け、クレジットカードを取り扱う販売業者がIC対応化を効率的かつ円滑に進め、併せてカード番号の非保持化が実現できるよう、販売業者が業界単位で取り組む共同決済システムの導入・実証事業を支援するものとなる。
2016年11月1日から11月18日までの間、補助事業者の公募を行い、外部有識者による審査を行った結果、2者が採択事業者として決定した。今後、各採択事業者がIC対応化およびカード情報の非保持化のための共同決済システムの導入・実証を行う。
シジシージャパンとエス・ビー・システムズ(CGCグループ)では、共同決済システムを構築済みであり、PCI DSSに準拠したカード情報の運用を行っている。共同利用センターのシステム改修により、クレジット決済IC処理化、POSシステムのクレジット情報非保持化を行うことで、利用企業に高いセキュリティ決済環境を提供するという。また、安全な決済環境構築の実現に寄与し、訪日外国人に安全・安心なクレジットカード利用環境を提供することにより、インバウンド需要の獲得にも寄与することを目的としている。
成果目標として、共同決済システムの利用事業者が個別対応する際の期間と比して、12カ月程度の早期対応、また、個別対応する際の費用と比して80%程度のコスト低減化を実現するとしている。なお、参加事業者数は220社、端末数は1万5,000台となる。
今後のスケジュールとして、決済センターIC対応改修およびセンターIC端末開発、通信セキュリティ対応が2016年12月末まで、センターIC端末、POS連動開発が2017年1月中旬、ブランド認定テストが2017年1月末日まで、実証稼働が2017年2月末まで、普及・展開が2020年3月を予定している。
一方、一般社団法人日本ホテル協会および三菱UFJニコスでは、クラウド型共同決済システムを活用したセキュリティ対策推進を目指す。
日本ホテル協会加盟ホテルのセキュリティ対策は、過渡期にあり、IC利用も図られる一方、磁気読み取りによるクレジットカード処理を併用するホテルが過半数存在している。決済利用方法は、POS(決済センター)接続型が6.6%(サーバー内にカード情報を保持)、決済端末との連動型が38.2%、決済端末単独利用型が82.4%となっている。また、POS連携を行うホテルが半数近くに上る一方、顧客情報管理を含めたカスタマイズが多く、セキュリティ対策時期もPOSのリプレイスタイミングに依存しており、速やかなIC化・非保持化対応が困難となっていた。
日本ホテル協会共同決済システムである「J-Mupsセンター」は、PCI DSSの認定取得済みで、EMV国際ブランド認定済みとなり、セキュリティ基準を充足しており、加盟ホテルではこれらへの対策をアウトソースする。また、共同決済システム標準接続によるPOS改修負荷の軽減、センターが提供するPOS接続開発用モジュールを用いて主要POSのIC決済対応標準化により、ホテル協会のPOS IC連携利用、クレジットサーバー廃止による情報非保持化を推進するという。
そのほか、多種多様な決済サービスにいち早く対応するクラウドセンターの活用により、今後の決済手段導入拡大も容易に対応できるとしている。
日本ホテル協会と三菱UFJニコスでは、採択後の協会加盟ホテル向け説明会を通じて、事業参加ホテルの利用POSが複数会員利用の主要ベンダーのものであることを確認。次に、三菱UFJニコス・POSベンダーは、ベンダーに共通決済システム接続のためのPOS組み込みモジュールを提供し、POS標準化モジュール開発・検証を発注する。さらに、会員ホテル(POSベンダー)は、参加ホテルに対して、標準化モジュールを用いてPOS開発を行い、共通システム利用を開始する。なお、同事業完了は2017年2月末を予定している。共同決済システムを 利用する予定のPOS端末数は約350台(申請時点での協会登録会員利用POS台数全体では約 1,000台)。
業界単位で共同決済システムを導入・利用することで、加盟店単独では対応負荷の高いカード情報の非保持化を協会加盟の複数ホテルで実現することが可能となる。また、加盟店あたりのIC化に向けたPOS改修コストを削減させ、訪日外国人向けのDCC(多通貨決済)や銀聯カードへの対応が可能となる。
さらに、共同決済システムの導入・実証事業の実施目標として、セキュリティ対策のためのPOS改修コストを削減させ、日本ホテル加盟ホテルの約3割の施設のPOSのIC化利用とカード情報の非保持化を実現できるとしている。また、他の業界団体等より、当該インフラを用いた共同利用の要望があった場合に標準化モジュール等の基盤を公開し、参加を可能にするそうだ。