2017年4月19日8:00
利用者の携帯性が高まり、ワンタイムパスワードのON/OFFのスムーズな切り替えも実現
ジャパンネット銀行は、2016年11月に日本の銀行として初めて、キャッシュカードと同じ薄さ(0.8ミリ)のカード型トークンを導入した。同カードは、パスワードの表示部分に電子ペーパー(electronic paper)を使用している。採用の経緯についてジャパンネット銀行の担当者に話を聞いた。
表示部分に日本で初めて電子ペーパーを使用
薄型封筒でキャッシュカードとの同梱が可能に
ジャパンネット銀行では、2006年から口座保有者に対して、無料でトークンを配布している。固定のパスワードから一回使い捨てのパスワードに変えることでセキュリティをさらに強化した。その後、2009年にIDカードの完全廃止を国内の銀行で初めて決定し、2015年4月には完了。ジャパンネット銀行 個人事業部 決済商品グループ長 小谷卓氏は、「当時はトークンの価格も高価でしたが、お客様のセキュリティを守るためにワンタイムパスワードを導入しました」と説明する。そして、2016年からはカード型トークンを導入することとなった。
現状、ジャパンネット銀行の口座数は約341万。キーホルダー型は約250万、カード型は2016年12月末時点で約6万の発行がある。
「カード型トークンを採用した理由として、キーホルダー型は持ち運びに不便だと考える方が多く、それを便利にしたい思いがありました。また、昔からカード型トークンはありましたが、提携しているジェムアルト(Gemalto)の技術改良により、お客様に配布できる品質になったと判断しました」(小谷氏)
薄さ0.8ミリのカード型トークンの導入は日本で初となり、財布やパスケースへ収納して携帯できるようになった。
また、キーホルダー型の利用者からは、ワンタイムパスワードを必要な時だけ表示したいとの要望があり、カード型トークンでは、「ON」「OFF」の機能を搭載した。なお、ワンタイムパスワードの表示部分に日本で初めて電子ペーパーを使用し、数字の見やすさも向上した。
現状、コストについてはキーホルダー型よりもカード型の方が高く、「希望の価格には到達しませんでした」と小谷氏は苦笑いするが、カード型では「薄型の封筒でキャッシュカードと同梱が可能になった点やシステム化などで郵便代や事務コストが削減できた。単年的にみるとトータルコストは増えるが、お客さまの利便性向上や今後の商品設計を考えると期待できるサービスになる」と笑顔を見せる。
また、セキュリティに強いGemaltoと提携できたことはプラスとなり、今後は新たな展開も模索している。小谷氏は、「海外では、トークンとキャッシュカード、デビットカードが1枚になっている商品がありますので、将来の展開としては考えられます。CVV2(セキュリティコード)やカード番号を可変させるため、電池の寿命とセキュリティの両立をどう実現していくかが課題ですね」と構想を口にする。
本人認証がスマホアプリで完了できるサービスを提供
「JNB Visaデビットカード」会員も順調に増加
サービス開始後の、カード型トークンの発行ペースは順調だ。既存の口座保有者には、キーホルダー型トークンからの切り替え時に無料で配布する。また、早くカード型トークンに切り替えたい人からは手数料として1,080円を徴収しているが、想定よりも有料で交換する人が多い。
カード型でも1回限りの使い捨てを採用しているが、トランザクション署名の下準備をしているとみられ、さらなるセキュリティの強化を視野に入れている模様。そのほか、振込時の本人認証がスマートフォンのアプリで完了できる「認証パネルアプリ」を提供することで、トークンを携帯したくない人でも便利に利用できる環境を整えている。
なお、実店舗とオンライン双方で利用できる「JNB Visaデビットカード(Visaデビット付キャッシュカード)」は125万人が利用しており、現在もその数は順調に伸びているという。小谷氏は、「デビットカード自体の認知度が高まっていますので、現金からのシフトが増えていることも後押しとなっています」と語り、笑顔を見せる。
小谷氏は最後に、「FinTechや中間的業者との取り組みも増えていますが、サービスが便利になる一方で、セキュリティは保たなければいけません。その際に、全員のお客さまが利用することができるカード型トークン、スマートフォンをお持ちのお客様が利用できるスマートフォンアプリなど、お客様が選択しやすい商品を提供していきたいですね」と語った。