2017年7月20日8:00
台湾の利用者は現地にいながら日本のゲームやコンテンツを楽しむことが可能に
ネットワーク型電子マネー「ビットキャッシュ」を発行するビットキャッシュは、2017年4月26日、台湾の大手オンライン電子マネー事業者であるGASH POINTと提携し、電子マネー「GASH POINT」を「ビットキャッシュ」に交換できるサービスを開始した。同サービス開始の経緯と、ビットキャッシュの新たな取り組みについて、話を聞いた。
台湾などから日本のコンテンツを利用するケースが目立つ
GASH POINTからビットキャッシュへの交換がアプリ上で可能
ビットキャッシュは、ネットワーク電子マネーサービスを開始して、20年になる。2002年頃のオンラインゲームの普及を契機に、急速に取扱額を伸ばし、ウェブマネーと並んで同分野でのリーダー的な存在となった。ビットキャッシュ 経営管理部 部長 藤野周作氏は、「設立20年を機に、第二創業期と位置づけ、新しい取り組みを始めています。海外でも日本のコンテンツに興味を持たれる方は多く、弊社の決済履歴をみても、台湾や中国などから利用されているケースも目立ちました。そこをGASH POINT様との提携で取り込む狙いです」と説明する。
現状、ビットキャッシュは台湾で販売されておらず、基本的にはRMT(リアルマネートレード)サイトで不当に高い値段で売られている状況だ。そのため、直接ビットキャッシュを購入してもらえないかと考えたのがそもそものきっかけだった。当初は台湾現地のコンビニエンスストアでの販売も検討したが、より迅速、効率的にサービスを開始できるGASH POINTと提携することになった。
GASH POINTは、台湾を代表する電子マネーを発行している会社で、日本におけるビットキャッシュの立ち位置に近い。台湾では、オンラインゲーム、SNS、ビデオ、漫画など、さまざまなデジタルコンテンツに利用可能だ。GASH POINTにとっても、日本で500~600億円の流通額を有するビットキャッシュとの提携は魅力だったそうだ。
今回のサービスでは、台湾のGASH POINTユーザーは、GASH POINTからビットキャッシュへのエクスチェンジがアプリ上で行える。GASH POINTユーザーは、交換されたビットキャッシュを使ってビットキャッシュ加盟店でのコンテンツを楽しむことが可能だ。現在は、台湾においてGASH POINTユーザーへの告知が行われており、「お客様の認知が進めば、利用が広がる期待はあります」と藤野氏は話す。
GASH POINTとの提携では、導入費用を抑えることができたのもポイントだった。今回の仕組みはポイントエクスチェンジのみであり、低コストで実現した。また、エクスチェンジの際は、ビットキャッシュおよびGASH POINTに手数料が入る仕組みだ。なお、為替レートは発売前日の金額を適用している。
加盟店は台湾ユーザーの需要を見極めることが可能に
他のアジアの国々での横展開も視野に
今回の提携は、ビットキャッシュ加盟店にもプラスになると期待する。大手企業の場合、台湾などの海外各国にサーバを構築して展開するケースもあるが、中堅企業ではそこまでの投資はかけられないケースもある。日本企業にとっては、特別なコストをかけず、現地ユーザーの自社オンラインゲームに対する需要がどの程度あるのかを把握することが可能だ。
藤野氏は、「ユーザーサポート、ホームページも海外対応していくことにより、一定の人員は海外から日本の加盟店に呼び込めます。たとえば、ゲームでは言語対応が必要なものと、そうでないものもありますが、どういったコンテンツが海外の方に受け入れられるのかが見極められます。そういった意味で台湾は意義深いと思います」と口にする。
さらに、ビットキャッシュでも、台湾での成果をベースに、他のアジアの国々で横展開させることも想定している。すでに日本企業からの問い合わせもあり、将来的にはマーケティングを支援する可能性もある。
初動については、GASH POINTユーザーの利用をアプリに限定していることを考えるとまずまずであると捉えている。ビットキャッシュ 事業開発部 部長 管野辰彦氏は、「GASH POINTはガマニアグループですが、そこを通じた情報配信をしてもらえると期待しています。また、弊社としては訪日外国人の方が日本に来られた時に、いろいろな日本のコンテンツを提供していくきっかけになればと考えています」と次を見据える。すでに日本のGASH POINTのホームページでもビットキャッシュとの提携は紹介されている。
仮想通貨・ブロックチェーンの将来的な活用に期待
eスポーツ普及に向けた取り組みも実施
また、インターネット決済の取扱額は年々伸びてはいるものの、今後、日本は少子化を迎え、同社が主力と位置づけるオンラインゲームの決済が2倍、3倍に成長するのは難しい状況だ。そのため、海外ユーザーの利用に加え、国内では新規事業にも力を入れている。
その1つがブロックチェーンへの取り組みだ。すでに仮想通貨・ブロックチェーン企業のbitFlyerと連携し、2016年11月25日から、ビットコインからビットキャッシュへの交換を開始している。また、ブロックチェーン推進協会への加盟に加え、Fintech企業などとの連携も想定している。管野氏は、「ブロックチェーン技術を直ちに決済システムに組み込む事は難しいですが、決済サービスにおける運用なども含めた全体最適化の観点で期待をもっています」と話す。
さらに、オンラインゲーム市場のさらなる拡大を後押しすべく、eスポーツに関する取組みを強化している。世界に通用するeスポーツプレイヤーの育成も見据えた、さまざまな活動を通じ、オンライン決済市場に貢献していきたい考えだ。今期、自社メディア事業として、eスポーツ専用サイト「SHIBUYA GAME」およびeスポーツニュースのキュレーションアプリ「ゲームBAN BAN」を立ち上げた。管野氏は、「当面は1人でも多くの方にeスポーツの楽しさを知っていただき、マーケットの裾野を拡大していくことが目的です。将来的には、そこに消費が生まれるため、当社の決済サービスが必要とされる機会が創出されると考えています」と語り、笑顔を見せた。