2018年4月27日8:00
銀聯国際 日本支社は、2018年4月25日、POSベンダー、ASP事業者、アクワイアラ(加盟店開拓会社)を対象に「銀聯POS-IC対応に関するセミナー」を開催した。当日は、グローバルや国内での銀聯の取り組み、POSのIC対応における概要について紹介した。
中国ではICチップ搭載の磁気カード取引を停止
日本ではATMのIC化が完了、CCT端末の技術開発はほぼ終了
冒頭挨拶した銀聯国際 日本支社 首席代表 韋暁寅(イ ギョウイン)氏は、中国での銀聯のIC化の状況について説明した。中国では、2013年末までにATMが、2014年末に加盟店の端末がIC化を完了している。2015年1月からは、年間7~8億枚発行されている中国の銀聯カードのすべてにICチップが搭載されている。また、人民銀行は2017年5月1日以降、ICチップ搭載の磁気カード取引を停止するという通達を出したため、中国ではIC取引が進んでいる。さらに、2018年6月30日以降、バーコード決済などを提供する第三者決済事業者には、「網聯」への接続を義務づけている。
日本国内での状況として、2017年10月にATMのIC化が完了。加盟店では、国内の主要な決済センターであるNTTデータおよび日本カードネットワークと連携して、CCT(Credit Authorization Terminal)端末の技術開発はほぼ終了した。POS加盟店についても割賦販売法の改正により国内でもPOSのIC化が進むため、業界関係者と連携して進めていきたいとしている。
30億枚に非接触決済機能である「Quick Pass」搭載
日本での銀聯加盟店は67万店、ATMが7万台
続いて、栗桥新一氏が銀聯の中国国内、国内での展開について紹介した。銀聯は2002年に設立し、日本では2005年に業務を開始した。2017年12月末現在、グローバルでは70億枚以上のカードが発行されており、うち30億枚以上に非接触決済機能である「Quick Pass(クイックパス)」が搭載されている。また、カードの比率はデビットカードが約9割、クレジットカードが約1割となっている。海外でも48の国と地域で1億枚のカードを発行。中でも香港が4,000万枚、韓国が約3,000万枚と発行枚数が多く、日本でも三井住友カードや三菱UFJニコスといった企業がイシュイングを行っている。また、世界168の国と地域でカードを利用可能だ。
「海外での加盟店数は5,100万店、ATMが257万台、このうち日本が加盟店67万店、ATMが7万台となっています」(栗橋氏)
国内での銀聯加盟店は、主要な国際ブランドに比べ、半分程のカバー率となっているが、都市から地方に、モノからコトへショッピングから体験に広がっているため、まだまだ伸ばしていく必要があるとした。なお、Quick Pass対応端末は世界で約1,000万台以上となる。
銀聯カード会員の海外利用も増加しており、クロスボーダー取引額は2015年から23%伸びている。また、2012年から2016年の平均伸び率は34%となった。
「2017年の中国国内での取引額は、日本円で約1,630兆円(約93兆9,000億元)で前年比28.8%増です。日本のショッピング取扱高は50兆円強ですので30倍くらいの規模になります。その要因として、中国でキャッシュレス化が進んでいることに加え、不動産取引など高額な取引に銀聯カードが使われていることもあります」(栗橋氏)
直近の中国のキャッシュレス化比率は70%程となるそうだ。栗橋氏によると、中国でキャッシュレス化が進んだ要因として、偽札が出回るなど、現金に対する安全性が低い背景があるとした。また、加盟店サイドから見たときに、決済端末のコストが安く、加盟店手数料が低いことも大きい。
日本での2017年の加盟店取扱高は前年比16.7%増を記録
7割以上がクレジットカードの取引に
日本での2017年の加盟店取扱高は、前年比16.7%増を記録。2018年も年間で20%程の取り扱い増になると見込んでいる。そのうち7割以上がクレジットカードの利用だという。銀聯カードの約9割がデビットカードだが、デビットカードはATM、ショッピングはクレジットという使い分けをしているケースが多い。
また、中国発行のカードに加え、香港や韓国発行カードの利用が増加している。現在の国内のインバウンド消費上位4カ国のうち、3カ国で銀聯カードは発行されているため、有益な決済手段だとした。
2018年の春節では、中国のさまざまなエリアからの旅行者が訪れ、日本でも目的地も多様化する傾向にあった。また、日本を除く中国大陸で発行された銀聯カードの日本での取扱高は、前年同期費2倍で、取引件数は30%以上増加した(約8割がクレジットカードの利用)。
Quick Passは交通分野での利用が進む
日本でも東急プラザ銀座や松屋銀座で利用可能
続いて、桐山博文氏が中国でのモバイル決済の状況について紹介した。銀聯では、2017年12月11日、30以上の中国国内商業銀行、決済機構などと共同で開発した銀行業務とモバイル決済が可能な中国銀行業界統一の決済サービスアプリをリリースした。送金などの銀行業務に加えて、非接触決済のQuick PassとQR決済が使えるようになる。リリース後間もないが、2018年3月現在で6,500万ダウンロードを記録している。
Quick Passの状況として、コンビニやリテールでの利用に加えて、公共交通での採用が増えてきたという。約10都市の地下鉄、360以上の都市のバスがQuick Passに対応。例えば、2017年9月末から、広州地下鉄の約6,000台の改札機で取扱開始し、1日約30万件の利用がある。そのうち、Mobile Quick Passを利用する人は2017年9月末から2カ月弱で、当初の5%から24%にアップした。また、杭州のバスでは、1日60万件の利用実績がある。
現状、銀聯の中国国内の2割程の取引がモバイルとカードでのQuick Passの利用となるなど、成果を感じているそうだ。
日本では、東急プラザ銀座がいち早くサービスを導入。銀聯カード利用の15~20%がQuick Passの利用者となるなど、初動は好調だ。また、松屋銀座でも2018年4月10日に国内百貨店で初めて、Quick Passの取扱がスタートしている。
そして、新たにグローバルでQRコード決済の展開を開始。現在、中国国内の600万店でQRコード決済が利用可能となっている。また、シンガポール、香港、マカオ、タイ、韓国、パキスタン、UAE、ネパール、ケニアでも展開を開始しており、18プロジェクトが進んでいる。QRコードのイシュアは、中国の30以上の銀行に加え、シンガポールやタイでも発行がスタートしている。現在、日本でもアクワイアラと話をしており、近いうちにスタートできるのではないかと考えているそうだ。
オンラインPINを含むIC対応は完了、仕様書も用意
クレジットカードのサイン認証への対応を進める
続いて、川勝実幸氏が銀聯POS-IC化での留意点やブランドテストについて紹介した。銀聯の取引では、他のクレジットカードブランド違い、アクワイアラを通さずにクリアリングするイシュアダイレクトという形態となっている。そのため、ASP事業者はNTTデータのCAFISや日本カードネットワークのCARDNETオンラインセンターの仕様に対応する必要がある。すでにオンラインPINを含むIC対応は完了しており、仕様書も用意している。
また、日本クレジット協会のガイドラインでは、IC確認における本人確認方法として原則オフラインPINとされているが、銀聯ではオンラインPINとサインに対するサポートが義務づけられている。銀聯では、日本市場特有の環境に対応するために、オフラインPIN認証機能、サイン認証を装備した端末において、クレジットカードでのサイン認証での取引が可能だと整理した。現在、サイン認証に対応するためのネットワークシステムを、NTTデータおよび日本カードネットワークと開発の準備を行っている。