2018年9月4日8:22
TIプランニングが発行するレポート「フューチャーペイメント要覧」~未来に向けた決済手段・サービスを徹底網羅~では、デジタル通貨、IoTペイメント、国際ブランド等のコンタクトレスペイメント、電子マネー/IC乗車券、オンラインプリペイドカード、モバイル財布などを紹介している。また、オープンAPIなどによるオープンバンキングとFinTechのネオバンクとチャレンジャーバンクについて、そのオープンループのオンラインプリペイドカードやデビットカード、クレジットカードについて取り上げている。そこで、同要覧から注目のトピックを数回にわたり紹介する。今回は、「お金(貨幣)と決済の歴史」について取り上げる。
世界最古の金貨は“エレクトロン貨”
いわゆるお金(貨幣)には、「価値の尺度」、「価値の貯蔵」、「交換手段・媒介」(支払い)の3つの機能がある。いずれかの機能があれば、お金とみなされる。人類は物々交換(バーター)から貝殻や石(石貨)などによる支払いという、価値の尺度、貯蔵、交換の手段を発明した。お金の素材は、貝殻や石などから金、銀、銅、鉄などの金属が用いられるようになり、そして紙(紙幣)が用いられるようになってきた。また、塩や米などの食べ物が、貨幣として使われたことがある。
紀元前670年頃に、世界で最初の金属のお金である“エレクトロン貨”がトルコのアナトリア半島で用いられた。日本では、680年頃に富本銭という硬貨が初めて使われている。世界で最初の紙幣は、1023年に中国の北宋で、重くてかさばる鉄銭や銅銭との交換が可能な兌換紙幣の「交子」が発行された。国家による紙幣などの貨幣の価値を裏付ける制度として、金や銀などの希少金属との交換が可能な金本位制や銀本位制、金銀複本位制などがある。1270年頃には、中国の元で、不換紙幣の「交鈔」が発行されている。
Bank(銀行)の語源はイタリア語のBanco(バンコ)で、商業の盛んだった北イタリアの両替商が使っていたBANCO(長机)だと言われ、15世紀初頭ヨーロッパでBank(銀行)が誕生している。当時のヨーロッパの貨幣は、金や銀などの貴金属の貨幣が主に使われていた。豊臣秀吉の時代である1582年に鋳造された天正の大判は、世界最大の金貨といわれている。1600年に株式会社の起源といわれているイギリスの東インド会社が設立され、1602年にはオランダの東インド会社が設立された。1637年に、オランダで珍しいチューリップの球根1個で家が買えるというチューリップバブルが発生している。
ストックホルム銀行がヨーロッパ初の銀行券発行
1661年には、スウェーデンで民間銀行であるストックホルム銀行がヨーロッパ初の紙幣であり、世界初の銀行券(紙幣)を発行した。7年後の1668年に、世界初の中央銀行であるスウェーデン国立銀行が設立された。その26年後の1694年には、イギリスで中央銀行のイングランド銀行が創設され、近代的な紙幣である銀行券を発行している。ちなみに、日本で最初に銀行券が発券されたのは明治維新後の1877年で、国立銀行紙幣が発行されている。中央銀行である日本銀行が開業したのは1882年で、3年後の1885年に日本銀行券の発行が開始された。
アメリカン・エキスプレスが1882年にマネーオーダー事業開始
アメリカでは、1850年に設立され、貨幣など貴重品を運んでいたアメリカン・エキスプレスが1882年に為替業務であるマネーオーダー事業を開始したほか、1891年には、世界初のトラベラーズチェックを発行している。また、19世紀のアメリカでは、1865年にクレジットカードの原型であるチャージコインが登場している。