2018年10月4日19:43
富士通研究所は、富士通研究開発中心有限公司と共同で、手のひら静脈と顔情報のみで本人を特定し、非接触で認証できる生体認証融合技術を開発したと発表した。富士通研究所では、同技術の2020年度中の実用化を目指す。
今回、一般的なカメラで取得できる顔情報を活用して、利便性の高い手ぶらでの認証を実現したという。開発した技術の特長として、高速に演算できる顔特徴抽出技術および手のひら静脈と顔情報を融合した生体認証融合技術が挙げられる。
画像から精緻に本人を特定するためには、顔の向きや表情の変化などにも対応する高精度な特徴抽出を実現するための複雑な仕組みを構築する必要があるが、処理時間が増大するという課題がある。今回、精度を落とさずに複雑な仕組みを簡易的に模擬するアルゴリズムを開発し、処理サイズを約10分の1へ軽量化することに成功したそうだ。これにより、高度な顔認証を瞬時に処理することが可能になる。
また、決済端末利用中の自然な動作の中でカメラから取得できる顔情報を利用して、登録されている100万人規模のデータベースの中から類似するグループに絞り込みを行う。決済時など実際に認証が必要な時に、利用者が手のひらをかざすことで、絞り込んだグループから1人を迅速に特定する。また、手のひらをかざす操作で静脈のデータが一部取得できなかった場合でも、顔情報で認証に必要な情報が補てんできるため、2つの生体情報を利用することによる認証の安定性を向上できるとした。さらに、手のひら静脈と顔情報の処理を分離することで認証サーバへの負荷を軽減でき、顔情報の比較演算の高速性と相まって、計算リソースの増大を抑制できる。
今回開発した技術を用いることで、利用者にカードなどのほかの情報の入力を意識させることなく、かつ、認証サーバの計算リソースの増大を抑制しながら、100万人規模の手ぶらでの認証をリアルタイムに実現するそうだ。