2021年1月24日8:00
富士通研究所は、顔情報で照合対象者を絞りこみ、手のひら静脈で本人を特定する非接触な生体認証を融合させたマルチ生体認証において、マスクを着用していても、マスク着用なしと同等レベルの99%以上の高精度で本人特定が可能な認証技術を新たに開発した。
一般的な顔認証技術では、マスクを着用した顔から絞り込みに有用な顔部位の形や位置関係などの特徴量を抽出するために、露出している目の領域のみを利用する方式を採用していたという。同方式は、マスク着用の有無の影響を低減できる一方で、顔全体の特徴量が抽出できないため、情報量の低下により本人が認識されないという問題があった。

開発した技術では、マスクを着用しても輪郭の形状など顔全体の特徴量抽出を考慮しつつ、マスク着用の影響を低減するために、マスク非着用の顔画像にマスクを付加した画像を生成し学習させることで、マスク着用時でもマスク非着用時と同等レベルの精度で絞り込みが可能となり、同一人物として認識することができる。具体的には、目や鼻の位置など顔の特徴点から顔の姿勢を推定し、その推定結果に基づいて疑似マスクをリサイズ、変形させて顔画像に重ねることで自然なマスク着用顔画像を生成する。さらに、さまざまな色や柄、形のマスクが流通している状況に対応するため、さまざまなタイプのマスクを付加した。これによって、マスクを外すことなく認証でき、マルチ認証が衛生的かつさらに使いやすくなったそうだ。
同技術は、NISTにて実施された顔認証ベンダーテストで、マスク着用顔画像を模した評価データセットにおいて国内ベンダー首位の高精度を達成した。
ユーザーインターフェースとして、手のひら静脈認証時に、利用者がスムーズに認証を行えるよう手のひら静脈認証センサーのユーザーインターフェースを改善した。手のひら静脈センサーの周囲に手のひらの形をしたライトを設け、手のひらをかざす高さに応じてライトの色と発光パターンを変化させることで、手のひら静脈認証に適切な高さを知らせる。これにより、手のひら静脈認証に慣れていない人でも、手のひらを適切な高さに調整でき、非接触かつスムーズな認証を行うことができる。
今回開発した技術とユーザーインターフェースの活用により、利用者自身で容易に認証することが可能となり、生体認証を取り入れた実店舗での決済やレジャー施設での本人確認など、さまざまなシーンにおいて、感染症の感染拡大を防止しながら、より安全・安心なサービスを実現させていきたいとした。
同社は、さらなるユーザーインターフェース評価などを踏まえて、ローソンと共同で取り組んでいる新川崎テクノロジースクエア内のレジなし店舗で実証中のシステムに同技術を適用し、2021年1月21日より実証実験を進め、2021年度中の実用化を目指す。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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