2018年11月28日8:00
パナソニックとぴあは、2018年11月24日、パナソニックスタジアム吹田で開催された、サッカー・明治安田生命J1リーグ、ガンバ大阪 vs V・ファーレン長崎戦において、チケッティングの電子化により、ゲート認証、ルート案内、キャッシュレス決済といった各サービスを提供する実証実験を行った。実証実験には、大日本印刷と三井住友カードも協力している。
1万5,000人にカードとウェアラブルのプリペイドカード配布
入場から座席確認、場内での決済まで1つで対応
実証実験では、ガンバ大阪の協力を得て、2万7,806人の観客全員が電子チケットによる入場を実施。入場者には、スムーズなゲート入場、国際ブランドの非接触型ICプリペイド決済サービスによるグッズや飲食売店での決済、さまざまなアクティビティへの参加など、新たなスタジアム体験をしてもらった。
当日は、紙のチケットを持参した来場者の1万5,000人に、「Jリーグプリペイドカード」および「リストバンド」型のプリペイドカードを配布。同プリペイドカードは、三井住友カードが大日本印刷と協働して配布したもの。来場者は、国際ブランドのMastercardの「Mastercardコンタクトレス」決済が可能な非接触型ICカードをリストバンドに装着することで、ウェアラブル型の電子チケットとして利用可能だ。また、「Jリーグプリペイドカード」も「iD」の非接触決済が可能であり、Jリーグ全試合対象観戦記録システム「ワンタッチパス」機能が搭載されているため、電子チケットとして利用できる。そのほか、nanacoが搭載されたガンバ大阪の年間パスが6,500名、それ以外の来場者は紙のQRチケットを利用して入場した。
なお、「リストバンド」型のプリペイドカードは、大日本印刷がGemaltoとの連携により提供している。大日本印刷 執行役員 情報イノベーション事業部 副事業部長 沼野芳樹氏は、「今後は、モバイルでサービス化していくことも検討していきたい」とした。
ゲート認証端末は、パナソニックのモバイル型の頑丈ハンドヘルド「TOUGHBOOK(タフブック)」を使用している。同端末は、ICカード、バーコードリーダーを内蔵しているため、ゲートの常設設備が構築できない会場であっても、非接触ICカードやウェアラブル、年間パス会員、QRコードの読み取りに1台で対応可能だ。
実証実験では、スタジアムの入場ゲートはもちろん、再入場ゲート、チケットチェックゲート、会場内動線案内、各種抽選申し込みのアクティビティ端末として、同一の端末で複数の機能を提供した。
「Mastercardコンタクトレス」「Mastercardの磁気」「iD」と3つの決済に対応
場内ではグッズや飲食店舗のレジ効率、混雑緩和等にも期待
電子チケットには決済機能も搭載されていることから、「Jリーグプリペイドカード」および「リストバンド」型のプリペイドカードによるキャッシュレス決済がどの程度行われるのかも検証した。
現在、パナソニックスタジアム吹田場内のグッズ販売や飲食店舗でのキャッシュレス決済の利用率は、10~20%程度(取り扱い件数ベース)に留まっているが、電子チケット化により、その比率が高まると期待している。同スタジアムのアクワイアリングは三井住友カードが行っているが、新たにMastercardとVisaのEMVコンタクトレスの利用がスタート。今後は、グッズや飲食店舗のレジ効率、混雑緩和等にも期待している。
「Jリーグプリペイドカード」はMastercard加盟店およびiD加盟店、「リストバンド」はMastercardコンタクトレスの加盟店でタップするだけで利用できる。三井住友カードでは、すでのiD加盟店およびMastercard加盟店での支払いに利用できるプリペイドカード「dカード プリペイド」を発行しているが、今回はMastercardコンタクトレスも加え、同社で初めて3つのプリペイド決済に対応した。三井住友カード 執行役員 商品企画開発部長 神野雅夫氏は、「マルチデバイス対応がコンセプトです」と話す。
「Jリーグプリペイドカード」および「リストバンド」型のプリペイドカードの一回のチャージ・利用上限は2万円。Webではアカウント登録後にクレジットカード、インターネットバンキングでチャージ可能だ。「Jリーグプリペイドカード」は、実店舗のセブン銀行ATMでチャージもできるため、会場にリアルチャージ機(ATMカー)を用意した。なお、無記名式のため、Mastercardのレギュレーションにより、国内のリアル・ネット加盟店のみで利用が可能で、海外では利用できない。
キャッシュレス対応の次世代カプセルマシーンが好評
スタジアムを核としたスマートシティ実現を目指す
会場には、大日本印刷の協力を得て、次世代カプセルマシーンも用意した。現状でもカプセルマシーンは人気のコンテンツだが、新たにキャッシュレス決済に対応している。同カプセルは400個限定で販売したが、試合開始前に完売となるなど、好評だった。なお、今回の機器は外付けとなっているが、将来的にはカプセルマシーンに内蔵された機器を実現させていきたいとした。
今回の実証実験について、パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 執行役員・本部長 井戸正弘氏は、「チケットを買ってもらって、入ってしまえば終わりというスタジアムビジネスを、より質の高いスタジアム運営にすることが目標です」と説明する。今後は、スタジアムの中のサービスに加え、駐車場の予約管理、モノレールを含めた駅との連携、近隣の商業施設への送客を図ることにより、スタジアムを核としたスマートシティのとしての位置づけを目指す。
パナソニックでは、2020年までのサービス実用化を視野に入れる。Jリーグ57チームへの採用に加え、エンタメビジネスへの展開も視野に入れる。入場者を増やすことはもちろん、入場後や試合の後にもITツールやコンテンツを活用して、そこで得た利益をスポーツに再投資してもらうことが可能になるとした。