2019年5月29日8:00
イギリスは、世界的にもキャッシュレス化が進んでいる国として知られている。1990年代にデビットカードが普及し、2002年にはEMVのChip&PINの取り組みがスタートし、2007年からはEMVによるコンタクトレス決済(非接触決済)の動きが始まった。現在では、店舗はもちろん、交通乗車もEMVコンタクトレスカードやモバイルにより、かざすだけで利用が可能となっている。
欧州で浸透するコンタクトレス決済
Visa Europe Head of Chip & Contactless, Transit & ContactlessのNick Mackie氏によると、Visaのコンタクトレス決済(日本では「Visaのタッチ決済」)は欧州の多くの国で日常的に利用されているという。イギリスでは、2013年以来、コンタクトレス決済が急速に伸びており、現在65%の決済比率となっているが、北欧ではさらに高い水準で利用されている。また、スペインやイタリアも現在ではイギリス同様にコンタクトレス決済が浸透してきた。
現在、イギリス発行のカードでは、ほとんどがEMVによる接触および非接触による取引が行われている。オーストラリアなどの一部の国を除くと、欧州が最もコンタクトレス決済が進行している地域となり、次いでカナダなどの北米だという。EMV化は、SEPA(Single Euro Payment Area)の取り組みに加え、フィッシングやセキュリティの問題の対処もあり、自然と普及が進んだとしている。
今年末までには端末のコンタクトレスへの置き換えがほぼ完了
端末の置き換えも順調に進み、「イギリスは今年末までには、コンタクトレス決済に対応したデバイスに置き換わる予定です」とMackie氏は説明する。
世界各国でコンタクトレス決済の普及状況は異なるが、「おそらく2020年から2022年までには、発行側もデバイス側も対応するとみています」と同氏は見解を述べる。米国など一部エリアでの課題はあるが、Visaでは、コンタクトレス決済が進むメリットは大きいとみている。
電車やバス利用者のモバイル決済利用率が高い?
また、イギリスでは、2015年にApple Pay、2016年にGoogle Pay(旧Android Pay)、2017年にSamsung Payがそれぞれスタートしている。現状は、カードによるコンタクトレス決済のほうがより多く使われているが、「モバイルペイメントがどんどん伸びていますし、今後も伸びると思います。特に伸びが目立つのは交通機関で、電車やバスなどはカードよりは携帯を使うほうが16%程多くなっています」とMackie氏は話す。イギリスでは、eSEおよびクラウドベースのペイメントにより、セキュアなモバイル決済を実現させている。
なお、ロンドンの地下鉄やバスなどでは、VisaやMastercardといったコンタクトレスカードをかざして乗車が可能だが、公共交通事業を所管するロンドン交通局(Transport for London:TfL)の推進が大きかったという。これにより、生活者は、簡単、便利にカードやモバイルをかざすだけで、乗車が可能となった。