日本郵船が電子通貨プラットフォーム「MarCoPay」発表、船員給与の再現金化が可能に

2019年7月26日8:00

日本郵船は、スマートフォンのアプリでQRコードを使って電子決済、国際送金、再現金化ができる電子通貨プラットフォーム「MarCoPay(マルコペイ)」を2020年1月に導入予定であると発表した。同社では、事業会社をフィリピンのTransnational Diversified Group(TDG)と共同で設立。これまで現金で行っていた船上での船員給与の支払いに、再現金化が可能な独自の電子通貨プラットフォームをアクセンチュア、およびシティグループの協力を得て構築する。

左からアクセンチュア 執行役員 テクノロジーコンサルティング本部 統括本部長 土居高廣氏、日本郵船 デジタライゼーショングループ デジタル・ガレージチーム長の藤岡敏晃氏、日本郵船 専務経営委員・技術本部長(CIO)丸山英聡氏、シティバンク、エヌエイ東京支店 執行役員 マネジング・ディレクター トレジャリー・アンド・トレード・ソリューションズ部門長 児島勲氏

フィリピンに事業会社を設立
船員のライフサイクルをつなぐ仕組みを目指す

MarCoPay Inc.は、フィリピン・マニラに2019年7月12日に設立。株式は、NYK 50% 、TDG 50%の保有となる。また、President director, CEOには、日本郵船 デジタライゼーショングループ デジタル・ガレージチーム長の藤岡敏晃氏が就任する。

MarCoPayプロジェクト発足の背景として、日本の海運会社保有の商船に乗船している船員の73%がフィリピン人であり、次いでインド(8%)、中国(5%)とほとんどが外国人となっている。フィリピンなどの外国人船員は一般的に自国での平均水準を上回る給与所得を得ている。しかし、船員は約20名で大型船を運航し、長い場合、9カ月にわたりなかなか下船できないという特殊な勤務形態がある。

また、多くの船員の給与は、一部は銀行口座に振り込まれるが、船上で現金が支払われることも多い。船上には800億円の現金があるという試算もある。船上での船員給与の支払いや日用品の購買などは、米ドル建ての現金で実施。そのため1隻当たり4万~5万ドルの現金が積載されており、船長がこれを管理しているのが現状だ。藤岡氏は、「基本給は本国に振り込まれていますが、ボーナス、手当てなどはドルで支払われます。船を管理している管理会社は常に現金を届けなければいけません」と説明する。また、現金を管理する船長の負担も大きい。

MarCoPayでは、スマートフォンのアプリを活用して、船上での給与支給や生活用品の購入をキャッシュレス化し、航海中であっても自国への送金が可能だ。また、アプリ使用者が世界中のATMで現金として引き出すことができる。さらに、船員が銀行からの融資や保険への加入時によりよい評価を得られる環境を目指す。現在、フィリピンのElectronic Money Issuers (EMIs)にライセンスを申請中だという。日本郵船 専務経営委員・技術本部長(CIO)丸山英聡氏は、「ハードルが低かったわけではないですが、順調に来ています」と説明する。藤岡氏も「経済的な価値のある船員のライフサイクルをつなぐために、良い船員を獲得し、職に見合ったベネフィットを得られるようにしていきたいです」と意気込む。

アクセンチュアの協力を得て世界最高水準のプラットフォームを目指す
国際送金の仕組みは世界で展開するシティグループと連携

サービスの展開に向け、プラットフォームシステムの開発は、アクセンチュアに依頼。堅牢なセキュリティを担保した世界最高水準のプラットフォームを目指すという。アクセンチュア 執行役員 テクノロジーコンサルティング本部 統括本部長 土居高廣氏は、MarCoPayは同社にとって2つの点で重要であるとした。「1つは今回の取引は既存システムを新しい技術で置き換えるのではなく、業界の雄である日本郵船様が船員や自社に限らない海運業に広くサービスを提供していくことは、我々がやっていきたいことに直結し、将来性もあります。2つめは国境や業界をまたがって新しいサービスを展開していくことは、世の中を求める新しいタイプのビジネスです。エコシステムをつなぐビジネスを作っていきたいです」と意気込みを見せた。アクセンチュアは金融ビジネスでの実績は豊富だが今回のプロジェクトは新たなチャレンジとなる。システムは、日本およびフィリピンを中心にシステムを構築する。

また、世界中で船員が自国へ効率的かつ安全に国際送金できる仕組みは、シティグループと連携。シティバンク、エヌエイ東京支店 執行役員 マネジング・ディレクター トレジャリー・アンド・トレード・ソリューションズ部門長 児島勲氏は、世界160カ国以上、200の資金決済システムにつながっており、常時先進的な金融ソリューションを提供する独自のプラットフォームを構築している点が強みであるとした。また、安全かつ効率的な国際決済を行うMarCoPayのプロジェクトにおいて、世界の国々で長年培った知見を活かしていきたいとしている。

 

汎用性のあるサービスとして機能追加も視野に
世界中の海運会社への採用を目指す

なお、MarCoPayの展開に向けて、日本郵船では2018年8月から9月にかけて複数回、電子通貨の実証実験を行った。同実証実験では、給与データ、購買データという重要なデータをやり取りする上で、通信が不安定な環境でも電子通貨管理アプリケーションを運用できるかということに特に重点を置いて、検証を行った。当時は日本カードネットワークの協力を得たが、今回のMarCoPay展開に向けてもアドバイスをもらったという。なお、MarCoPayのプラットフォームに関しては、金融システムとしては課題も多いブロックチェーン技術は採用していない。

丸山氏は、「船員の給与を電子化、スムーズに送金する機能を備えるために全力を尽くしたいです。次の段階として汎用性のあるもの、地域社会への貢献に広げていきたい」と意気込みを見せた。藤岡氏は今後の構想として、BtoBサービスとして法人間決済、プライベートオーダー決済、船食屋との決済に加え、船員に対しては住宅ローン、学費保険、ディスカウントクーポン、マイカーローン、生命保険といった機能を追加していきたいとした。また、MarCoPayが世界中の海運会社に導入されることを目指す。

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