2019年11月22日8:15
Visaでは、現金決済が全体の約75%を占めると言われるイタリアにおいて、安心・安全なキャッシュレス決済の推進に力を入れている。Visa EUにおいて南ヨーロッパのビジネスを統括する、SE プロダクト リーダーのAndrea Fiorentino(アンドレア・フィオレンティーノ)氏にイタリアでのビジネスについて、話を伺った。
イタリアのデジタル決済の中心はデビットカード
プリペイドのニーズも欧州の中で高い
Visaにとって、イタリアは急成長しているマーケットだ。Fiorentino氏によると、その理由は2つあるとした。1つは、規模の大きい市場であり成長の余地があること、2つめは現金払いが主流だが、キャッシュレス決済が進んできたからだ。現在は、政府も非現金化に向けて協力的だという。
また、近年では、小規模な金融機関がベンチャー企業に投資し始めている。携帯のアプリケーションを使った取り組みを行う金融機関も出てきており、注目を集めている。Fiorentino氏は、「今まで従来の規模の大きな銀行で支払っていた方々が、“ニューバンク”と呼ばれる新たな銀行の試みに興味を示しています。Visaの目標は、世界のトレンドをイタリアに浸透させることです。銀行のデジタル化を目指すことと、セキュリティ面でも安全にご利用いただくのがVisaの目標です」とした。
イタリアのデジタル決済の主流は銀行口座から引き落とされるデビットカードだ。また、事前に金額をチャージして支払うプリペイドカードを利用する人も多い。プリペイドについては、他のヨーロッパに比べてとても使用率が高い。事前に金額をチャージするプリペイド式は、安全で、使いやすいというイタリア人の意識がある。一方、クレジットカードは、旅行者や比較的収入の高い人が使う傾向はあるが、一般的な使用率はそれほど高くはない。
カード利用時にリスクスコアが把握できる仕組みを導入
TOKYO2020を周知する存在としても活動
Visaとしては、金融機関等と協力し、安全性を訴求することで、利用者をより多く獲得していきたいとした。1つの取り組みとして、カードを利用すると即時に、その取引が安全か、安全ではないかが0~99%のパーセンテージで示される仕組みを導入している。この点数によって安全性を銀行が判断し、仮に不正な取引の場合は、取引をブロックして安全性を保っている。また、比較的高額な支払いをした場合、安価な手数料と分割払いで支払えるようにしている。なお、イタリア人の特性として、支払いを管理したい特性があるため、分割払いはあまり好まれていないそうだ。
「Visaは世界中で使われていますが、各国によって国民性があります。日本には日本の、イタリアならイタリアの使い方がありますので、それを研究してより良い使い方を提供することを目指しています」(Fiorentino氏)
ミラノで開催されたイベント「Il Salone dei Pagamenti~payvolution~」に、Visaは今年初めて参加したが、その理由は世界的にVisaを広めていく目的があるからだという。2019年の調査では、Visaは世界的にみて一番利用の満足度が高い評価を得ているという。また、Visaはオリンピック・パラリンピックのスポンサーとなっている。TOKYO2020は、イタリア人も注目するイベントであり、日本への関心も高いため、Visaは周知する存在としても重要であると考えている。イタリア人が日本を訪問したり、現地で買い物をする際にVisaを使ってもらいたいとしている。
コンタクトレス決済の成長は?
インターネット決済も安全な決済を訴求
コンタクトレス決済(Visaのタッチ決済)の利用も伸びているそうだ。現状、イタリアでのVisa取引のうち50%以上はコンタクトレス決済となっている。近年では、Apple Pay、Samsung Pay、Google Payの普及もあり、モバイル決済の利用を後押ししている。
コンタクトレスは鉄道乗車の際も重要となる。Fiorentino氏は、「ミラノは世界で2番目にコンタクトレスを地下鉄で使える都市となり、すべての地下鉄の駅で使えます。また、ローマでも使われていますが、我々の目標はイタリアの主要なすべての都市の駅でコンタクトレスを普及させることです。フィレンツェとナポリではバスを普及させたいですね」とした。そのためには、Visa単独ではなく、すべてのプレイヤーと一緒になり考えることが重要であるとしている。
また、イタリアは観光都市であるため、観光客にも便利に利用してもらいたいとした。すでに、ヴェネツィアでは、街を修復するための募金も行われている。
現在は、リアルな支払いに加え、インターネット上での支払いも強化している。イタリアでは、トークン化技術により登録したクレジットカードをよりセキュアに保護する技術が採用されている。これにより利用者は、AmazonやNETFLIXといった大手サイトでも安心・安全な決済が可能となっている。