2020年9月18日8:39
三井物産の社内ベンチャーとして立ち上がり、約2年かけて準備を進めてきた新しいタイプのポイントシステム「ウェルちょ(ウェルネス貯金)」が、いよいよ本格的に動き出した。健康や環境に配慮して開発した商品に、メーカー自らが「エール」と呼ばれるポイントを付与。コンセプトに賛同して商品を購入した消費者が「エール」を受け取ることによって、メーカーと消費者が直接つながるD2Cのプラットフォームを提供し、メーカーのファンづくりを支援する。スタート時点での参加メーカーは30社、対象商品は200アイテム。これを3年後には2,000アイテムまで拡大し、社会問題の解決に貢献する事業に育て上げたい考えだ。
ウェルネスに特化したD2Cプラットフォームにより
商品のコンセプトに賛同するファンづくりを支援
三井物産の100%出資子会社、グルーヴァースは、9月16日より「ウェルちょ(ウェルネス貯金)」を本格的にスタートしたと発表した。同事業は約2年前に、三井物産社員であった現・グルーヴァース 代表取締役の福島大地氏が発案。以来準備を進め、昨年には広島で実証実験を行い、今年7月21日にオンラインショップを開設し、本格始動に至ったものだ。
同社は“ウェルネス”に、「こころの健康」「カラダの健康」、そしてSDGsの推進や子育て支援、エコ活動など「社会の健康」の3つの意味を込めている。「ウェルちょ」は、これら3つの「健康」に良い商品・サービスに、メーカー自らが「エール」と呼ばれるポイントを付与し、その商品・サービスのコンセプトに賛同して購入・利用する消費者に届ける仕組みだ。「メーカーが社会課題解決の想いを商品に込め、消費者がその思いを受け取って商品を購入することで、気が付くと健康サイクルが回っているという好循環をつくり出していきたい」と福島氏は抱負を語る。
福島氏は「ポイント発行のメリットは、リピーターの獲得とリピーターのデータの取得の2つ」とした上で、「『ウェルちょ』はこれまでのポイントプログラムとはまったく視点を異にする事業」と説明する。小売業が発行主体になっている既存のポイントプログラムで導かれるのは、商品のリピート購入ではなく店舗への再来店であり、リピーターのデータはすべて小売業に流れる。一方、「ウェルちょ」は、メーカーと消費者を直接つなぐD2Cのプラットフォーム。メーカーがポイントの発行主体となることで、メーカーにメリットをもたらす仕組みだ。消費者との直接のコミュニケーションによって、商品のコンセプトを伝え、再購入を促し、消費者の意見を取り入れて商品やサービスの改善につなげる。それらの取り組みを通じて、商品およびメーカーのファンづくりを後押しする。
商品・サービスに「エール」を付与するメーカーは「ウェルネス応援隊」と呼ばれる。現時点では東洋水産、ミズノ、ハナマルキ、ミツカン、オタフクソースなど30社が参加しており、対象商品は200アイテム。一方「エール」が使える場所は「ウェルネスステーション」と呼ばれ、現在、星野リゾート、クォール薬局、カーブスなど157社、全国3,000拠点。
「ウェルネス応援隊」は同社に「ウェルちょ」加盟手数料を支払うほか、「エール」の原資を負担する。「ウェルネス応援隊」が「ウェルちょ」に登録する商品・サービスは、年齢制限など購入制限のあるものは不可。また、登録の際、なぜその商品・サービスが「ウェルちょ」にふさわしいと考えたか、その理由を消費者に対して明示することを条件としている。「ウェルネスステーション」からは一切料金は徴収していない。
3年後に対象アイテム2,000、1,500万ユーザーが目標
各方面とのパートナーシップを強化し事業拡大に邁進
商品・サービスに付いている「エール」を消費者が取得するには、あらかじめスマホにダウンロードした「ウェルちょ」アプリを用いる。対象商品に付いている「ウェルちょ」シールの裏面に印字されたQRコードを、「ウェルちょ」アプリでスキャンして「エール」を取得。シールにQRコードとシリアル番号がセットで印字されている場合は、アプリでQRコードを読み込んだ後、シリアル番号を入力して「エール」を取得する。また、QRコードをスキャンするとアンケートが表示されるパターンもあり、この場合アンケートの回答が終了した時点で「エール」が取得できる。もちろん「ウェルちょ オンラインショップ」での買い物でも「エール」が取得できる。
モノだけでなくコト消費でも「エール」を付与する例がある。例えば女子サッカーのノジマステラ神奈川相模原では、観戦客に「エール」をプレゼント。会場に設置したタブレットにQRコードを表示し、観戦客がこれをアプリで読み込むことにより「エール」を取得できる。
がんばった社員に対して、上司が「THANK YOUカード」「GOOD OBカード」などにQRコードを印字して「エール」を贈るケースもある。また、メールやSNSで「エール」を贈ることも可能だという。
ウェルネスステーションで「エール」を支払いに利用する方法は、QR決済と同様、大きく2つ。1つは、利用者がスマホにQRコードを表示して店舗側が読み取る方法。もう1つは、レジに設置したQRコードを利用者がアプリで読み取る方法だ。また、貯まった「エール」は、星野リゾートの宿泊券などの景品と交換したり、寄付に充てたり、家族や友だちにプレゼントすることもできる。ちなみに「エール」に有効期限はない。
3年後のKPIとして同社では、「エール」を取得できる商品アイテム数2,000、ユーザー数1,500万人、ウェルネスステーション数12万拠点を掲げている。SDGsに参加している企業や、環境省が取り組んでいるエコ・アクション・ポイント、子育て支援のAzMamaなど価値観を共有できる既存のコミュニティ、また、行政機関との連携も強化しながら目標の達成を目指す。