2020年12月22日8:00
ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は、2020年12月17日にオンラインでVisaのタッチ決済に関する記者説明会を実施した。当日は、Visaのタッチ決済の発行や加盟店開拓、交通分野での取り組みについて紹介した。
多くの国でタッチ決済が主流に
まずは、日本のキャッシュレス社会の現状分析及びVisaのタッチ決済普及総括や最新状況について、コンシューマーソリューションズ 部長 寺尾林人氏が説明した。COVID-19(コロナウィルス)の感染拡大により、Visaのビジネスに関しても、旅行や飲食で大きなダメージがある一方で、オンラインショッピングのトランザクションが増加している。消費者の意識の変化とともに、タッチ決済の利用も世界中で伸びており、加盟店でのタッチ決済導入も加速しているとした。
Visaのタッチ決済の普及に向けては、カードの発行、不正対策、アプセスタンスの拡大、消費者の認知の向上などが合わさって大きな拡大が見込めるという。日本において、これらの要素が今まさに揃ってきているそうだ。国内でのキャッシュレスの推進において、タッチ決済は大きな貢献ができるとしている。Visaで支払うときはタッチが普通になる世界を実現すべく、努力している。
タッチ決済の特徴として、「スピードと利便性に合わせて、安全性が担保されています。世界標準のセキュリティ技術を使って、通常の差し込み式と同じ安全性を担保しながら、日本の皆様が慣れているタッチで払うことが実現でき、世界中どこでも使えます」と寺尾氏は話す。
すでに多くの国でタッチ決済が主流になっているそうだ。例えば、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニア、スペイン、スロベニア、ギリシャ、ロシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドでは、Visaの取引のうち10回に9回以上がタッチ決済となっている。また、英国、オランダ、台湾、カナダでは、Visa取引のうち60%以上、90%未満の取引がVisaのタッチ決済だ。さらに、2020年4~6月、7月~9月の比較として、対面取引に占めるタッチ決済の比率が5%、10%、25%大幅に増えた国が多い。
国単位でみると、オーストラリアのReserve Bank of Australiaのデータでは、タッチ決済の普及率が96%となっている。2006年から導入していたが、2012年に大手スーパーマーケットでタッチ決済を導入したことで普及に火が付き、2008年と比較すると、ATM引き出し回数が35%減少したという。直近5年間で年平均で5%減少している。
国内の発行枚数3,230万枚、昨年同月比2.3倍に
国内では、2020年9月末で、発行枚数が3,230万枚となり、昨年同月比2.3倍となった。1年前が1,400万枚だったため、1,800万枚のタッチ決済機能付きカードが手元に届いたことになる。国内タッチ決済取引数の伸び率をみると、前年同月比で約15倍以上となっている。
日常利用としては、スーパーマーケットは約30倍、コンビニエンスストアは約8倍、デビットカードは約5倍の伸びとなった。また、実際の利用者の8割以上が「また利用したい」と回答。寺尾氏は「実際にタッチ決済を使った方の4割以上の方々が現金を使う機会が減ったとお答えになられています」と述べる。Visaでは、タッチ決済の認知度向上の取り組みを継続して行っており、例えば、20代男性の認知度は57%まで上昇しているとした。
2020年9月末で前年同期比3.2倍に
続いて、アクワイアリング(加盟店開拓)と決済端末導入について、マーチャント・セールス&アクワイアリング ディレクター 山田昌之氏が紹介した。同氏は「2020年度は大きく広がりました」と成果を述べる。
国内の対応端末数は、2020年9月末で前年同期比3.2倍となり、特にコンビニエンスストアは全体の70%で利用可能となった。この1年でイオンやイトーヨーカドーなど、最大手のスーパーグループに加え、地方の有力な店舗で利用できるようになったという。さらに、ドラッグストア、飲食関連企業、ショッピングモールなどで多くの加盟店が増えた。スマートフォンと連携してい使用する「mPOS」でもSquareやAir ペイ等で利用できるため、個人商店などでも利用が伸びている。アクワイアリング面では、安全性やスピードに加え、コロナ禍により店員との物理的な接触を減らして決済できる安心感が大きいという。
すき家では50%オフキャンペーンで決済件数が30倍に
Visaでは、よりスムーズなオペレーションに向けて、1つのボタンで、どのインターフェス、ブランドもカバー可能な3面待ちを推奨している。従来の国内の決済端末の多くがNFC Payとクレジットのボタンが分かれていたため、どちらを押していいのか、利用者への確認が必要だったが、その作業を省くことができる(分割、リボ払いなどの際は別途、事前の確認が必要)。
さらに認知を広げるため、加盟店と協業している。たとえば、「すき家」ではタッチ決済利用で50%オフの取り組みを実施。「タッチ決済の件数が30倍あがるなど、大反響のキャンペーンとなりました」(山田氏)。今後も加盟店からの発信も含めて、タッチ決済の認知度向上にも取り組んでいきたいとした。
4~5年前から公共交通機関に話を進める
日本および海外の交通分野の取り組みに関しては、デジタル・ソリューション ディレクター 今田和成氏が説明した。Visaでは、東京五輪を見据えて、4~5年前から公共交通機関に話を進めていたという。鉄道事業者では、磁気券を運用しており、「キャッシュレス化を進めたい」、「少子高齢化で高速バスの対応人員が限られているため、省人化したい」という要望があるという。
日本では、みちのりホールディングスの茨城交通、岩手県北バス、福島交通・会津バスでVisaのタッチ決済を導入した。高速バスの運用では、タブレット(Android)を用いたシステムを採用し、固定料金決済で運用している。また、11月25日に京都丹後鉄道で均一運賃・距離制運賃に対応した。さらに、福岡市では、地下鉄特定エリア1日乗り放題企画きっぷのモバイル乗車券や非接触決済を活用した取り組みを行う予定だ。
交通領域で乗り越えるべき課題とは?
交通領域でのVisaのタッチ決済で乗り越えなければいけない課題として、全国際ブランド共通のリクワイアメントとして0.5秒以内に処理を収める必要がある点だ。問題は通常の加盟店であれば、確認処理としてオーソリを送るが、それをどうやって縮めていくかが公共交通機関に導入するうえでの課題となっている。みちのりホールディングスでは、予め金額が決まっており、決済金額が高額なため、その場で確認処理を行っている。距離制運賃の場合、その場で即時にオーソリを取得するのが難しく、間にバックエンドシステムを立てて、入退場の情報から金額の計算をしたり、退場後にオーソリを取得する処理を行う。後から数秒でオーソリを取得することで公共交通機関の利用に耐えうる仕組みを構築した。
Visaでは、150を超えるベンダーパートナーと「Visa Ready Program」を締結して、公共交通機関への導入を推進している。すでに英国、カナダ、オーストラリア、イタリア、シンガポール、米国などで導入。Visaでは、現在約500の公共交通プロジェクトに参画している。また、280以上の公共交通機関で導入され、2019年度だけでも62の都市で受け入れがスタートした。各都市の乗降者数として、ミンスク(ベラルーシ)3億500万人、エディンバラ(イギリス)1億2,100万人、マンチェスター(イギリス)4,550万人、マイアミ(米国)1億600万人、フィレンツェ(イタリア)7,800万人などとなる。
たとえば、ロンドンでは、導入後の調査として、120以上の国と地域の非接触カードの利用実績がある。2018年4月には半分以上の取引がタッチ決済になり、路線によっては6割以上使われている。2017年の12月には1週間で1,790万のタッチ決済の利用を記録。平均で毎日250万の利用があるそうだ。現金決済の停止および、ロンドンの交通カード「Oyster Card」の販売縮小につながり、2016年2月には利益の6%分のコスト削減に成功している。さらに、紙のチケットを発行するチケットマシーンのコストは£2.60 に対して、タッチ決済に関わるコストは£1.50と低い。
また、シンガポールでは、2001年にFeliCaベースの交通ICカード「EZ-Link」を導入したが、政府の推進により、2019年6月からISO 14443 Type A/Bのタッチ決済の受け入れを開始。3万以上のタッチポイント(5万4,000バス、182駅)に導入した。すでに、100以上の国と地域の非接触カードがシンガポールの公共交通機関で利用された。さらに、公共交通機関でのタッチ決済利用者は非接触決済の頻度も高く、駅周辺の店舗への波及効果も期待できることが分かった。
Visaのタッチ決済は、クレジット、デビット、プリペイドの各プロダクトで利用でき、また、カード形状以外でも利用可能だ。今田氏は「実際に海外の公共交通機関の利用を見ますと、プラスチックカードよりもモバイル、ウェアラブルの比率が高いところがございます」と話す。「事業者にとっては、割引や周遊券にご利用いただけることもメリットである」とした。
Visaでは、Visaのタッチ決済を国内に加え、海外も含めて、世界中どこでもいつでも、誰からも選ばれ受け入れられる決済手段となることを目指していきたいとした。
※画像・図版はビザ・ワールドワイド・ジャパン提供