2021年3月16日8:00
キャッシュレスで売上向上・コストダウンにも寄与
伊藤忠エネクスは、2020年3月から順次3店舗で概念実証を行ってきた「スマホ給油」を、同年12月4日より正式にサービス提供を開始した。「スマホ給油」は、スマホアプリであらかじめ油種、給油量をオーダーしておき、SS到着後は給油機のQRコードを読み取って給油するだけのサービスだ。支払いはアプリに登録したクレジットカードで行う。これによりSS店頭滞在時間が激減。キャッシュレス決済のみの「スマホ給油」では所持金を気にせず決済を行えるため満タン率が高く、平均給油量が増加。同時に現金取り扱い業務が軽減され、SSの売上アップとコストダウンの両方に効果を上げている。
店頭滞在時間を大幅に短縮
コロナウィルス感染対策にも有効
「スマホ給油」では、利用者はスマホアプリ「Putmenu」を用い、油種や給油量をオーダー。オーダーから2時間以内にガソリンスタンド(以下、SS)に行き、給油機のQRコードをスマホで読み取って、給油。あらかじめ登録したクレジットカードで決済を完了する仕組みだ。店頭滞在時間を大幅に短縮でき、フルサービス店では店員と直接会話をしたり、オーダー機に触れることもない。また、セルフサービス店でもタッチパネルに触れることはなく、給油ノズルの消毒をすれば済むため、コロナ感染予防対策としても有効だ。他社ではキータグ状の専用ツールを使って給油や決済ができるサービスを提供しているところもあるが、「スマホ決済」は利用者のスマホ1台、アプリ1つでサービスを利用できるのが大きな特徴だ。
「Putmenu」はプットメニューが提供する“注文0分”“会計0分”をうたうオーダーシステムだが、SSが取り扱うガソリンは価格が変動するという点で一般の商品とは性格が異なるため、システムのカスタマイズが必要だった。POSとの連動の部分については、検証段階からのパートナーであるNECプラットフォームズが担当。リアルタイムの単価をアプリから確認できる体制を整えた。
支払い手段は2021年2月時点で、Visa、Mastercard、American ExpressのクレジットカードとPayPayとなり、同年3月よりJCBも対応可能となる。
一度使えば利便性を実感
半数以上がリピート利用
同社では2020年3月から、セルフスタンドおよびフルサービス店、計3店舗に順次「スマホ給油」を導入し、概念実証を行った。その結果、神奈川県相模原市にある郊外型店舗、REXエネルギー/星が丘CSでは、2020年11月の実績で約300名の利用客が719回「スマホ給油」を利用。平均給油量は28リッターで、「スマホ給油」導入前に比べて6リッター増加。また、兵庫県赤穂郡上郡町にあり60代の利用客が中心の地方型店舗、エネクス石油販売西日本/ピュア上郡CSでは、もともと20リッターだった平均給油量が5リッター増加した。SSでは現状、現金決済比率が約7割と高いが、「キャッシュレス決済のみが利用できる『スマホ給油』では所持金の額を気にせず決済ができるため、満タン率が増え、平均給油量が増加したと考えています」と伊藤忠エネクス カーライフ部門 統括部マーケティング課 リーダー 井上翔平氏は説明する。
加えて、月に2回以上来店する顧客をリピーターと定義し、そのリピート率は両店とも優に50%を超えている。アプリは、初回はオーダー確定までに5回以上タッチする必要があるものの、2回目以降はリピート機能を使い、2回のタッチで決済方法の選択まで行き着く設計になっている。同部 中谷晴夏氏は「使えば使うほど便利さを実感していただけると思います」と話す。
フルサービス、セルフサービス店ともにオプション機能として、オーダー確定の前に「スタッフに相談する」という画面を設けることができる。窓ふき不要、ゴミ捨て不要、また、オイル交換、車検見積もりといった店舗が用意した項目の中から、利用者が要望するものにチェックを入れ、その情報をオーダー情報とともに店舗に送信。店舗ではそれに応じた準備をして利用者の来店を待つ。このような対応により、店頭の接客の質も向上できる。
キャッシュレス化が進めば、現金取り扱いに関わる業務が軽減でき、コストダウンにもつながる。レシートを電子化することでペーパーレス化も図れる。現状、「スマホ給油」の利用率は3店舗平均で15%程だが、「これが50%を超えてくるようになれば、外にあるオーダー機を外したスマホ給油専用レーンを設けるなどして、より大規模にコスト削減を図ることも可能になります」と井上氏は意気込む。
同社では「スマホ給油」を2021年3月中にも全国100店舗に導入をしたい考えだ。
※カード決済&リテールサービスの強化書2021より