ラック ネットバンク、クレジットカード、ATM等に対応したAI活用の不正検知サービス提供へ

2021年6月10日9:21

ラックは、2021年6月1日に記者説明会を開催し、「金融犯罪対策センター(以下、FC3:Financial Crime Control Center)」を設立すると発表した。昨今、インターネットバンキング不正送金や〇〇Payへの不正チャージなどの金融犯罪が急増する中、ラックのサイバーセキュリティ技術と、多くの金融機関や捜査機関とともに犯罪対策を行ってきたノウハウを融合し、巧妙化が進む犯罪手口への最適な対策を金融機関へ提供する。

右からラック 代表取締役社長 西本 逸郎氏とFC3:金融犯罪対策センターセンター長 小森美武氏

クレジットカードは偽造被害から番号盗用へ
次から次へと犯罪者の手口がシフト

日本クレジット協会のクレジットカード不正利用の統計をみると、1997年~2013年の中心は偽造中心の被害だった。2000年に309億の被害が発生。2002年、2003年頃まで被害が続いた。その後、偽造カードの被害は減少したが、番号盗用の被害が拡大。2020年のクレジットカード不正利用の被害は223.6億円で、2014年の6倍規模、全体の90%が番号盗用となっている。ラック 代表取締役社長 西本 逸郎氏は「次から次へと不正利用は手口がシフトしています」としたうえで、近年は換金可能なネットショッピングでの被害が拡大しているとした。

日本における特殊詐欺に関しては、対策によって犯罪の収入減が拡大。そのため、犯罪者は手口開発をスピーディーに行っているそうだ。

サイバー由来の金融犯罪は海外を標的に日本のATMで金額が引き出される事件が起こっている。2013年は世界27カ国のATMで45億円を一斉に引き出される事件が起こった。2015年12月には1億円、2016年には20億円が引き出される事件が発生している。仮想通貨では、2014年2月にマウントゴックス事件で470億円、2018年1月にコインチェック事件で580億円相当の仮想通貨が消失する事件が発生した。昨今の〇〇Pay事件では、2019年のセブンPay、2020年8月のドコモ口座事件が有名だ。

西本氏は、これらの事件のポイントとして、複数の企業が連携しているため、連携先とのセキュリティのギャップを挙げた。また、新規サービス、新規接続を狙った犯罪、暗号通貨(仮想通貨)周辺での犯罪が目立つ。さらに、明確に判断はできないとしながらも、事件前後に株価が動くなど、インサイダー事件がでてきている可能性があるとした。事件における“犯罪者の機動力”についても特徴すべき点として西本氏は挙げている。

DX時代の金融犯罪対策が必須に、総被害額は年間1,000億規模に
FC3で安全な金融サービス環境を実現する対策を研究・開発

これまで1件で数千万~数百億円の被害が発生する中、「あらゆるものがデジタルでつながるDX(デジタルトランスフォーメーション)時代の対策が必要」であると西本氏は説明する。DXで基幹となるのは情報通信の産業だが、重要インフラ産業となる電力、ガス、水道、石油、化学、航空、空港、鉄道、物流などがDXの動脈を支えている。また、DXを形成する上で重要なのは静脈で、政府、行政機関、医療、金融、クレジット、セキュリティなどが連携して機能する。中でも金融は静脈の柱の1つとなる。

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